3.転校生でも問題ないよね?
《side小川目覚》
服を着た明里ちゃんと一緒にご飯を食べた。明里ちゃんは僕と目が合うとすぐにそらして顔を赤くする。昨日のことを思い出してるんだろうね。
僕はと言うと、特に反応はしないかな。昨日あれだけ見たし、今日の朝も見せつけられたからね。あれだけ自然な感じで見せられると、そういう感情も湧かないかな。
それはそうとして今日は、
「家具を買いに行くよ」
「家具?」
「そう。明里ちゃんの部屋に置く家具を買わないと。色々必要でしょ?全部最高品質でも問題なく買ってあげるよ。……ベッドは買わないけど」
「ああ。うん。クローゼットとか欲しいかも。でも、ベッドは買ってくれないの?」
買うわけないよね。間違っても自分の部屋で寝られたら困るし。
「買わないよ。昼寝とかしたいときも寝室使って」
「えぇ~。でも、私があそこで寝てたら目覚君の邪魔にならない?」
「ならないよ。僕の部屋は寝室とは別にあるから。そっちにもう1つベッドもあるし」
この家は広いから、部屋も沢山ある。僕の趣味部屋とか仕事部屋とか色々部屋があるんだよ。
寝室なんて寝るとき以外使わないから全然OK
「ベッド2つもあるの?」
「うん。親が来たときのためにね」
「親を1つのベッドで寝かせるの!?」
驚く明里ちゃん。確かに普通なら2つ用意しておくものなのかもしれない。
でも、
「だって、妹とか弟とか欲しいし」
「……おぅ」
可愛い弟か妹が欲しいんだよね。普通の子達じゃなくて、可愛くないと駄目だよ。そのためには、やっぱり2人には一緒に寝てもらわないと。
なんて思ってると、
「まあ中1ってそういうのが気になっちゃう年代だよね。私にも手を出してくるくらいだし…………でも、そう考えると私って中学生にもてあそばれちゃったのかぁ。恥ずかしぃ~」
明里ちゃんはそんなことを言って顔を赤くした。
でも、僕はそこじゃないところに反応する。
…………今、明里ちゃん中1って言ったよね。
「……もっと恥ずかしい思いをさせてあげるよ」
「えっ!?ちょっ!?朝からやるの!?」
問答無用。僕の年齢が分かるまでその体に教え込んであげないと気が済まないよ。
……買い物は午後からになるかなぁ。
午後には自分を抑えて買い物に行った。そして帰ってきた後、夜はまた激しく過ぎていく。
「……転校生を紹介する。自己紹介してくれ」
「はい。私は四ノ原明里です。まだこっちに来たばかりで慣れないことも多いので、仲良くして貰えると嬉しいです。宜しくお願いします」
家具とか諸々を買った次の日。この日は普通に学校がある日だったんだけど、転校生がやってきた。分かってるかもしれないけど明里ちゃんだね。四ノ原は戸籍を偽装するときに作った名字だよ。1日で新しい戸籍が作れるなんて、僕のコネは有能だよね。
クラスの皆は不思議な時期の転校生に驚いていたけど、すぐに、
「か、可愛い!!」「彼氏いますか!?」「好みのタイプは何ですか!?」
と、男子は大盛り上がり。明里ちゃんは可愛いからねぇ。
女子はそんな男子を冷めた目で見つつも、興味深そうに明里ちゃんを見ている。明里ちゃん、仲良くなれると良いなぁ。
これまでは同年代の友達なんていなかったみたいだし、上手くやれると良いんだけど。
ちなみに、明里ちゃんにはできるだけ僕と関わらないように言ってある。同棲してるとかバレても面倒だし。
「ふぇっ!?好きな人!?い、いいいい、いないよ!可愛い男の子とか全然好きじゃないから!」
おっと。顔を赤くしながら明里ちゃんは何か言ってるね。その慌てようは嘘だって丸わかりなんだけど。でも、明里ちゃん好きな人いるんだね。意外かも。しかも、可愛い男の子って話だし。僕が奪う形になっちゃって悪かったかな。
……ん?いや。それってもしかして僕?明里ちゃん、そんな簡単に墜ちるの?ゲームのヒロインだから、やっぱりチョロインなの?
困惑する僕。でも、すぐに心を落ち着ける。気付かないフリをしておけば良いからね。クラスメイトも知り合いだって分かってないだろうから、何も問題ない…………はず。
「ねぇ。四ノ原さん!髪綺麗だね!シャンプー何使ってるの?」
「お肌のケアどうしてるの?凄いツルツルなんだけど!」
「可愛い男の子って良いよね!その辺の話を詳しく……」
授業の合間の休憩時間。明里ちゃんは女子に囲まれていた。転校の理由なんて全く聞かれず、化粧品とか性癖とかの話になってるね。明里ちゃんは可愛いし、その秘訣を知りたいって言う気持ちも分かるよ。
……ただ、明里ちゃんって昨日一緒に過ごしてみた限りオシャレに無頓着なんだよねぇ。なんでここまで可愛いさを維持できるのかは不明。持って生まれたものなのか、それともゲームでの出来事に関係することで手に入れたものなのか。どちらにせよ、一般人には手に入れられないものだろうね。
「目覚ぇ~。何見てんだ?」
明里ちゃんの方を見てたら、クラスメイトの友達に話しかけられた。
「ん~?転校生が凄い人気だなって思って」
「確かに人気はあるな。だが、入学当初のお前も似たようなものだっただろ」
「……やめて。思い出したくない」
僕は頭を抱えて首を振る。僕も入学当初は凄い可愛がられたからねぇ。数人凄い顔で息を荒くしてるのは怖かったよ。襲われるかと思った。
今はかなり落ち着いてるけど、偶に鋭い視線を感じる時がある。特に、体育の着替えの時とか。……絶対に覗かれてると思うんだよね。
僕は襲うのはやりたいけど、襲われるのは趣味じゃないんだよねぇ。無理矢理押し倒されるの趣味じゃないかも。……とはいっても、僕から襲うのも明里ちゃんが初めてだったんだけどね。
そんな風に僕は明里ちゃん達を見ながら休憩時間を過ごすこと数回。昼休みがやってきて、
「「「わぁ~!!」」」
女子達から歓声が上がる。僕も含めてクラスメイト達の視線が集まるんだけど、そこにはお弁当箱を開けた明里ちゃんがいて、
「可愛い!」「おいしそぉ~!!」「これ、1人で作ったの?」
「あっ。うん。ありがとう。これは私は作ってないよ。作れなくはないけど、レベルが結構違うかも」
そんな声が聞こえてくる。どうやら、お弁当が女子達のお気に召したみたいだね。勿論作ったのは僕だよ。
僕のお弁当とは盛り付けを変えてあるけど入ってるものは同じ。ただ、盛り付けだけでも印象は大きく変わるからバレないはずだよ。
「あっ!目覚君のお弁当も見せてぇ」
「今日のも美味しそうだねぇ」
「今日も1人で作ったの?偉いねぇ~。よしよし」
明里ちゃんの方を見てたら、一瞬にして女子に囲まれた。それから、僕のお弁当が撮影されていく。僕の身柄は数人に確保されて、頭を撫でられてる。
これは日常風景だよ。因みに1人で作れて偉いねとか言われるけど、僕の嘘だって思われてるみたい。まあ、こんな見た目だと朝のお弁当を自分で作る印象はないよね。品数も多いし、僕が作れるとは思えないでしょ。
「あっ。今日の私のお弁当の所に間違えて写真使っちゃったぁ。ごめんね目覚君」
「あっ。ごめぇ~ん。私もやっちゃったぁ~」
「はいはい。同じお弁当って気付かれて誰かの裏アカと間違われないように気をつけてね」
「「「「はぁ~い」」」」
返事だけは素晴らしい。でも、絶対そういうの気にしないと思うんだよね。
僕のお弁当を写真で撮って、あたかも自分で作りましたみたいに投稿する人たちだから。
「四ノ原さんも目覚君のを……って必要ないか」
「四ノ原さんは自分のが綺麗だもんね」
「羨ましいなぁ~。私もお母さんがもっと上手だったら良かったんだけど」
呼びかけられた明里ちゃんは、一瞬こちらに視線を向ける。そして、僕と目線が合うと綺麗な笑みを送ってきた。
「おい。今、俺に四ノ原さんが笑顔を」
「いや。俺だって」
「いやいや。俺だよ」
……男子って、頭お花畑だなぁ~。
なんていう事がありながら、その日の学校は終わっていった。




