第2章 1.孤児との面会も問題ないよね?
ま、まだギリ19日ですよね?
「桜田……桜田ねぇ」
僕、小川目覚はマウスを押しながら、ぼぉっとパソコンの画面を眺める。パソコンの画面では、立ち絵やその背景が変化していた。
「目覚君、何してるの?」
そんな僕に何をしてくるのかと尋ねるのが、四ノ原明里ちゃん。四ノ原っていう名字は適当につけたものなんだけど、明里ちゃんはかなり気に入っている。僕からのプレゼントは何でも嬉しいんだってさ。
「気になることでもあるんですか?」
明里ちゃんに続いて質問してくるのは、神道葵南ちゃん。家の中ではペットのように首輪を着けている変た、じゃなくて、ちょっと変わった女の子だよ。まあ、首輪は僕が着けさせたんだけどね、
2人に質問された僕は、特にやましいことがあるわけでもないので、
「ん~。今やってるのは、所謂エ○ゲだよ」
「「……は?」」
僕の答えに、明里ちゃん達の表情が固まる。
え?女子の前でよくそんなことを恥ずかしげも無く言えるな。って?普通の女の子相手だったら言わないけど、僕たちは、
「何!?目覚君、私たちじゃ物足りないの!?」
「やっぱりバイトの時に1人だけ相手するのでは足りないんですか!?」
そんなのを気にしない、それを超えた関係だからね。毎日2人にはそういう相手をしてもらってるよ。
葵南ちゃんが言ってることには少し補足をした方が良いかな?2人は少し前からバイトを始めたんだけど、それは隔日交代みたいにしてるの。月水金が明里ちゃんで、火曜と木曜が葵南ちゃんのバイトって感じだね。明里ちゃんの方が僕への借金が多いから、明里ちゃんのシフトを多くしたみたい。
バイトの関係で1人はいなくなるけど、その間の僕の相手は休みの方がしてくれる。バイトを始めるって言われたときはかなりお預けされるのかと思ったけど、ちゃんとその辺は配慮してくれた。2人とも優しいよね。
で、そんな優しい2人の前でエ○ゲをしている理由だけど、
「いやぁ~。今やってるのは『エ○エ○化け物退治2 ~狂乱と絡み合う僕たち~』で、テーマが化け物退治なんだよ。だから、2人がよくやってることを学べるかと思って」
「「いや、学べない(ません)から!!」」
2人からツッコミが来る。2人とも希に表れる強い力を持った化け物を倒す活動をしてるんだけど(アルバイトとは別で)、それがエ○ゲと一緒にされるのが嫌だったんだろうね。
……ただ、言ってしまうと2人の少し前の人生を表したゲームが存在する。それが、今やってるゲームの前作。エロエロ化け物退治の1だね。
因みに2ができているからと言って、人気があったとは勘違いしちゃいけない。あくまでも個人作成のゲームで、2を作るかどうかは個人の自由だから。
「そう?良い教材だと思ったんだけどなぁ」
「エ○ゲを参考にしないでよ!」
「それで表されるほどきわどい仕事はしてませんから!!」
2人にそう言われるけど、実はこのゲームをやるのには他の理由がある。もちろんエ○ゲをやりたいとか言うのでもなく、
「桜田……ねぇ」
僕は2人に聞こえないくらい小さな声で呟く。
桜田って誰?と思うかもしれない人に説明しておこう。桜田というのは、前作の主人公が好きな女の子だ。因みにその子に告白したことが原因で、当時許嫁だった葵南ちゃんと主人公は別れることになった。二兎を追うものは一兎を得ず、だね。……まあ、2人を囲ってる僕が言えたことじゃないかもしれないけど。
で、なんで僕がその名前を呟いたのか。当然主人公が恋するくらい可愛い子に興味があったから。……ではなく、桜田って言う名字に覚えがあったんだよね。それも、この僕がやっているゲームの中に。
「……そういうことなのかな?」
「え?どういうこと?」
僕の呟きを聞いて葵南ちゃんが問いかけてくる。僕はそれを無視して、
「今ってまだ6月だよね?」
「え?あ、うん。まだ29日だから6月だよ」
「それなら……間に合うかな」
考えがまとまった僕は立ち上がって、知り合いに電話をかけていく。そこまで難しいお願いでもない、と言うより向こうにとってはありがたいお願いだろうから、
『分かりました。優先的に回しますね』
と、了承してくれる。これでまた問題事は増えるかもしれないけど……利益も出るかもしれないかな。頑張って調整しよう。
そんな僕の様子を見ながら、
「え?何?」
「全く分からなかったんだけど……」
2人は不思議そうにしていた。でも、すぐに分かると思う。あと数日もすれば7月になって、
プルルルルッ!
「はい。もしも~し」
電話が掛かってきた。電話の主は、数日前に電話をしておいた人。
電話の内容は、僕が予約しておいたことが実際に起きたから、その連絡と言うことで。……そしたら僕は次に電話を別のところへ。
『へ?孤児を引き取って欲しい?』
電話する先は、神道家。葵南ちゃんの実家だね。縁は切れてるけど。
内容は、向こうが言うように孤児を引き取ってもらうこと。勿論普通の孤児じゃなくて、
「僕の予想が正しければかなり良い人材だからね。僕の予想がハズレならこっちで引き取るから、見るだけ見てくれない?」
『わ、分かりました』
そんな話しを。
数日後、神道家へ引き合わせる前に僕は個人的に面談に行ってみることにする。今回は明里ちゃんと葵南ちゃんを連れてきてるけど、近くで遊んでもらってるよ。流石に合わせるのはどうかと思ったからね。
僕が部屋へ案内されると、そこには2人の女の子がいて、
「こんにちは。僕は小川目覚。一応君たちを引き取るか、引取先を紹介するかするつもりだよ。よろしく」
「わ、私は桜田風花です。高校1年生でよ、宜しくお願いします?」
「私は桜田美春でぇす。中学3年生ですよぉ。よろしく、ね?」
僕に挨拶を返してくれる女の子達。名字が同じだから分かるかもしれないけど、姉妹だよ。
最後のよろしくが疑問形なのは、僕の見かけが関係してると思う。引き取るって言うからもう少し大人な人が出てくると思うんだろうね。それが、見た目は年下な子が出てきたんだからビックリでしょ。ただ、これでも僕は風花ちゃんと同じ年齢なんだけどね!
「え、ええと。小川、君は……」
「一応言っておくと僕も高1だから間違えないでね」
「あっ……わ、分かった」
風花ちゃんが何かを言ってきそうだったから先に釘を刺しておく。この反応を見るに、僕が中学生かと思ったのかもしれない。
「まずは少し今後の話をするから、静かに聞いてね。僕が引き取る場合は君たちには転校してもらうことになるけど、紹介したところが引き取る場合はそのまま通えることになるよ。引っ越しはしてもらうけどね」
「「…………」」
相づちは返ってこない。僕が静かに聞いてと言ったから、相づちすらせずに静かに聞いてるんだろうね。そこまで静かにする必要は無いんだけど。
「紹介するのは数日後になるんだけど、そこで向こうと少し話をしてもらうことになるね。因みに向こうには引き取るなら2人一緒にするように言ってあるから、離ればなれになる事は無いよ」
「「っ!」」
2人はそこで目を輝かせ、顔を見合わせる。やっぱりそこは心配だよね。ゲームだと2人は引き離されて、敵同士で戦うことになってたし。バッドエンドだと風花ちゃんが勝って、ハッピーエンドだと美春ちゃんが生き残って。……姉殺したらハッピーじゃなくない?って思ったけど、ゲームではハッピーエンドって書かれてた。
「あと、向こうに引き取られた場合も僕は偶に会いに行って向こうの暮らしとかを聞くことになるから覚えておいて。向こうで何か虐待とかあるかどうかも調べないといけないから」




