27.新たな道も問題ないよね?
《side小川目覚》
僕がまったりとしながらリビングで作業をしていると、部屋に駆け込んでくる人が。急いでどうしたのかと顔を上げると、そこにいたのは葵南ちゃんで。
「目覚君!私、目覚君のことが好きです!!」
「……へ?」
葵南ちゃんの突然の告白。
……葵南ちゃんから好かれてるのは分かってた。でも、ここまでハッキリと告白されるのは予想外。されるとしても、もっと主人公君のことの気持ちの整理が付いてからだと思ってた。
「……そっか。ありがとう」
僕は最初に感謝しておく。僕のことを好きになってくれるのは、それだけで嬉しい。葵南ちゃんにはひどいこともしてきたから、なおさらね。
でも、
「でも、葵南ちゃん1人を愛することはできないし、葵南ちゃんが1番にはなれない。それは分かってるでしょ?」
「分かってます!何番目でも良いんです!私に少し、少しで良いのでその思いを向けて頂ければ!」
僕の言葉に縋り付いてくる葵南ちゃん。そこまで、言ってくれるのは嬉しいんだけどさ……主人公君への対応と違いすぎない?勿論文句はないけれども。
「なら、良いよ。僕も葵南ちゃんに好感は持ってるし、一緒にいようか。……もちろん、借金は返してもらうけどね」
「……はいっ!」
はじけるような笑顔を浮かべる葵南ちゃん。僕はその唇をそっと塞いだ。
部屋の影から、こちらを見つめる明里ちゃんに気付きながら。
《side神道葵南》
告白は成功した。私と目覚君は将来つながることが約束できた。
でも、不安がある。告白が成功した後も、目覚君はいつもと何も変わらない。ご飯の前のしつけも、お風呂も、いつもと何も変わらない。
いつ繋がるのか、目覚君は私をどうしてくれるのか。全く分からない。私は漠然とした不安を抱えながら、今日も目覚君達の夜を聞こうと、寝室の扉に背中を着けた。
今日も私は1人で……
「葵南!」
しようとする前に、声がかけられる。私の前に立ってるのは、
「っ!?あ、明里!?」
明里。
最低限の服だけ着ていて、たぶん下着類は着けてない。
もう目覚君との夜は始まってるのかと思ってたけど、今から行くところだったみたい。私は慌ててどこうとするけど、
「待って葵南。一緒に行くよ」
そう言って腕を捕まれた。
「ほぇ?」
私が困惑する中、明里はそれを無視して寝室の扉を開ける。そして、私を引きずって寝室へ入っていった。
中で待っているのは当然、
「やっほぉ。明里ちゃん。……そして、葵南ちゃんも」
「やほぉ。目覚君。ちゃんと連れてきたよ」
目覚君。明里も目覚君も、私がいることなんて気にした様子もなく喋る。
「え?あ、あの?」
私は困惑を更に募らせる。明里に引きずられた状態で目覚君を見上げると、目覚君は怪しい笑顔を返してきた。
でも、言葉をかけてきたのは目覚君ではなく、
「葵南。今日は目覚君に告白したんでしょ?」
「え?ああ、うん。そうだけど?」
私は明里の言葉に首をかしげながらも頷く。そしたら目豆君が今度は、
「葵南ちゃんが完全に覚悟を決めたら一緒に寝させて欲しい。って明里ちゃんに頼まれてたんだよ。僕としては、すぐにでも襲いかかりたかったんだけどね?」
「……え?」
私は目覚君の言葉に驚く。
つまり、だって、それって、
「おいで、葵南ちゃん。今日は、いや、今日から、葵南ちゃんにも手を出していくから、覚悟してね?」
「……はぃっ!」
私はその日、目覚君とつながった。
今まで辛いことも多かったけど、きっとこれから幸せになれるって確信できる。今、私幸せだよ。
《side小川目覚》
「……ふぁ~」
朝。僕はあくびしながら朝ご飯を作る。
昨日は葵南ちゃんの相手をしてその後に明里ちゃんの相手もしたからね。寝るのが遅くなったんだよ。今度からは2人同時って言うのはやめとこうと思ったね。
1人とやってやっと疲れてきたと思ったら、もう1人が復活してくるんだから。本当に大変だったよ。僕の方が気絶させられるかと思った。
「おはよ~」
「お、おはようございます」
暫くすると2人が起きてくる。明里ちゃんはいつも通りだけど、葵南ちゃんは恥ずかしそうにしてるね。いつもは恥ずかしげも無く服を脱いで猫耳つけたりしてるのに。
昨日のでそんなに気持ちが変わったかな?恥ずかしそうな葵南ちゃんも新鮮だし、今のうちに、
「あっ、ん!」
僕は葵南ちゃんの唇を塞いで、舌を絡ませていく。
「……はぁ!はぁはぁはぁ」
唇を離すと、荒い息をしながら葵南ちゃんは顔を赤くしていた。息が苦しいだけじゃなくて、恥ずかしさもあるよね。そんな様子を意外に感じつつも、不公平にならないように明里ちゃんにも、
「んっ」
……でも、明里ちゃんに何かしないといけないね。葵南ちゃんを受け入れた分、明里ちゃんとの時間が減っちゃうからね。何かやりたいことがあるなら叶えてあげたいんだけど。
そんなことを考えていた。そして、その数日後のこと。
「あの目覚君。お願いがあるんだけど、ちょっと良いかな?」
「へ?何?」
明里ちゃんから、というより葵南ちゃんも会わせて2人でお願いをしてきた。それが、
「え?アルバイトがしたい?」
「うん!そうなの」
「お願いできないでしょうか」
2人はアルバイトがしたいと言ってきたの。そんな話は少しも聞いてなかったから、かなり驚きだね。それと共に考えるのは、
「買いたいものがあるの?借金を早く返したいとか言う理由ならそんなに急がなくても良いんだけど……」
葵南ちゃんに借金は返してっていったから、そこを気にしてるのかと思った。でも、それは違うと2人は首を振る。
それから、
「あのね、目覚君。分かってると思うけど、私も目覚君のことが好きなの!」
「う、うん。ありがとう。明里ちゃん」
明里ちゃんから告白された。明里ちゃんからの初めての告白だよ。ここまで一緒に過ごしてきたけど、明里ちゃんから告白はされてなかったし、してもいなかったからね。
最初に求めたのが体だったこともあって、ちょっとそういう気持ちを伝えるのは躊躇したって言うのもあるんだけどさ。
まあそれは良いとして、僕を好きなこととアルバイトに何の関係があるのか。
「あ、あのね。それで、お金を貯めて目覚君の誕生日とかにプレゼントしたいって言うのもあるし……将来、目覚君の子供が欲しいな、って思って。それで早く借金を返して生活を安定させたいというか」
照れた表情でそう行ってくる明里ちゃん。……天使かな?そんなことを言われると僕もちょっと動揺しちゃうよ。
勿論嬉しいんだけどさ。
「わ、分かった。……でも、お金を返されると……その、利子が減っていっちゃうというか……」
明里ちゃんの気持ちは嬉しいけど、借金を返されてしまうと今までみたいに気軽にはできなくなるかもしれない。そこが少し寂しいような、物足りないような……。
って、思ったんだけど、
「私だって目覚君のことが好きなんだから、今まで通りにしていいよ。……葵南はどうか知らないけどね?」
「えっ!?明里!?そこで裏切るのはひどくない!?……勿論私もやりますよ。今まで通り、その……いじめて頂ければ」
2人は少し照れながらもそう言ってくれる。葵南ちゃんも一線を越えてからは照れてくるようになったね。やっぱり今までが精神的におかしくなっちゃってたのかな?それで今元の状態に戻った、とか。
まあ、今はそんなことを考えなくても良いね。それより素直な気持ちで、
「……うん!ありがとう2人とも!アルバイト、頑張って!!」
送り出すことにする。
きっと働くのは楽しいことばかりじゃ無いと思うけど、頑張って成長してきて欲しい。僕も応援することにしよう。
でも、その前に、
「じゃあ、2人と一緒にいられなくなる前に……僕を満足させて?」
「「もちろん!」」
《一章終わり》
1章完結!
明日からは2章です!!




