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25.巻き込まれても問題ないよね?

『久しぶりだな。入れてくれ』


「え、ええぇと。ちょっと待って」


早速の入れろの言葉に、葵南ちゃんは困った顔を。僕にすがるような目を向けてきたね。

この表情は入れたくないって言うより、どうすれば良いのか分からないって顔だろうね。仕方ないから僕は頷いておく。あんまり男の人を家に入れたくはないけど、主人公が暴走して家が壊れても困るから。


「お邪魔します」


「ど、どうぞ」


主人公君が入ってきて、葵南ちゃんがソファーに案内する。

ちなみに、事前に首輪はとらせてあるよ。主人公との話し合いがどういう展開になるか分からないのに首輪させてたら、僕に被害が及びかねないからね!……あっ。何かされたときのために防犯カメラと隠しカメラだけじゃなくて、僕のスマホでも撮影しておこう。証拠がないと話にならないからね。


「……葵南ちゃん。僕は上に上がってて良いかな?」

「あっ。私も~」


僕と明里ちゃんは面倒そうな雰囲気が嫌で部屋に戻ろうとする。けど、


「やめて!戻らないで!2人とも一緒にいて!」


葵南ちゃんに止められてしまった。

明らかに機嫌の悪い主人公君の相手するの嫌なんだけどなぁ。機嫌が悪い人が近くにいると、こっちまで嫌な気分になるんだから。

折角葵南ちゃん達のことは放っておいて、明里ちゃんと引っ越す家の話し合いでもしようかと思ってたのに。


「……明里も一緒なのか」


主人公君は明里ちゃんにも目を向けた。


「う、うん。そうだよ。神道家に生け贄にされそうになったのを、ここで拾ってもらってねぇ~。アハハハッ」


明里ちゃんが盛大に頬を引きつらせて笑ってる。相手するのが面倒だって言う気持ちが伝わってくるね。頑張れ明里ちゃん。

と思ったんだけど、


「で?お前は誰?」


「あっ。僕?」


僕の方に質問が来た。できれば一言も喋ることなく笑顔で明里ちゃんといちゃつきながら見守ってたかったんだけどなぁ。ダメかぁ。


「僕はこの家の住人だよぉ~。一応明里ちゃんを拾ったのが僕だね」


「ふぅ~ん。……まあ何でも良いけど、この家の保護者はいつ帰ってくるんだ?」


何でも良い!?自分から聞いておいて、何でも良いっていうのはひどくない!?ちょっと殴りたい、いや、明里ちゃん葵南ちゃんに殴って欲しいんだけど!僕が殴ってもたぶん威力は出ないから!!

僕が微妙に怒りを感じている間、葵南ちゃんは苦笑をしながら、


「ここの家を管理してるのは目覚君だよ。目覚君の保護者とかは見たことないね」


そんな説明を。


「まあ、別居してるからね」


僕はそうして補足しておく。高校は行ってから一人暮らしを始めたんだよ。この家を買ったのはそれより前だけどね。

なんていう葵南ちゃんと僕の話を聞いた主人公君は、


「じゃあ、伝えておくな。葵南は俺が連れて帰るから、これ以上泊める必要は無いから」


「「は?」」


主人公君の突然の宣言。それを聞いた葵南ちゃんと明里ちゃんの口から、困惑の声が漏れる。

そして僕は、


「……はぁ」


と、ため息をつく。

こうなることは薄々分かってたからね。驚いたり困惑したりはしないよ。

ただ、主人公のあまりにも考えなしなところに頭が痛くなっただけ。こういう考えなしでまっすぐなところはゲームの主人公としては良いのかも知れないけど、実際に相手すると疲れるよ。


「何だ?何か問題でもあるのか?」


僕のため息を聞いた主人公は、不思議そうな顔をする。

問題があるのか?じゃないんだよね。問題しかないよ。仕方ないので説明してあげることにしよう。


「あのねぇ。今までの食費を含めた生活費、それから転校するための様々な作業と根回し。葵南ちゃんがこっちで生活できるようにするために、僕がどれだけ色々と使ったと思ってるの?それを、連れて帰るから後はよろしく、で終わらせられるわけないでしょ?」


「……つまり、金が欲しいって事か?」


主人公はそう尋ねてくる。

僕の言いたいことを要約して、凄い曲解したら確かにそうなるかもしれないね。それならそれで良いけどさ、


「使ったのはお金だけじゃないけど、お金で払いたいならそれでも良いよ。…………ざっと計算すると、これくらいだね」


僕はスマホに残ってる作業とかの履歴を確認しながら金額を計算していく。もちろん、最初の契約通りに葵南ちゃんの借金は10分の1にしてるよ。借金以外のコネとかはそのままの金額で出してるけどね。

そしてその金額を見た主人公君は、


「なっ!?そ、そんな額払えるわけないだろ!ふざけんな!」


怒鳴ってくる。耳がキーンとしたよ。

そんな様子に僕は呆れながら、


「払えないのが当たり前だよ。何も問題なく数日で高校を転校させるなんて、普通はできないんだからね。これくらい払わないとやれないの。契約の関係で生活費は10分の1にしてるけど、本来だったらこれくらいの金額になるんだからね?頑張って借金の額を小さくした葵南ちゃんに感謝しなよ?」


僕は生活費が実際の金額だった場合の合計金額を見せながら言う。家具とか服とかの金額もあるから、小金持ちの高校生でも払うのは難しい金額になってくるよ。


「……くぅ!お前、こんなふざけた額を提示して神道家が黙ってると思ってるのか!」


おっと。主人公君が自分の力ではどうにもならないと悟って、神道家を使ってきたよ。

これに関しては僕よりも葵南ちゃんに説明させた方が早いから、葵南ちゃんに視線を送る。葵南ちゃんば僕の意思をくみ取って頷き、返答を交代した。


「あのね。私はもう神道家とは縁を切るってことにしてあるの。だから、私がどれだけ借金したとしても神道家は何も言わないよ」


「なっ!?」


葵南ちゃんの説明に驚愕する主人公。

自分の力ではどうにもできない。そして、頼みの綱の神道家も使えない。こうなったらどうすれば良いか、主人公君も分からないんだろうね。

そうして驚きで固まってしまっている主人公君に、葵南ちゃんは追い打ちをかけるようにして、


「あと、勝手に色々言ってるけど、私は帰らないからね」


堂々と宣言した。

主人公君相手に、随分とはっきり言ったねぇ。ここまでしたら、よりを戻せなくなるんじゃないかな?それだけ決意は固いって事なのかもしれないけど。


「はぁ?」


主人公君も葵南ちゃんの宣言で更に驚いてる。今日は驚きのオンパレードな1日だろうね。


「不思議そうな顔してるけど、当たり前でしょ?私がいながら桜田さんに告白してたじゃん!」


「っ!……そ、それは、葵南も桜田さんも幸せにできる自信があったんだよ!1人くらい増えても問題ないだろ!」


わぉ。主人公君、凄いこと言うね。桜田さんっていうのが主人公君の好きな子なのかな?

2人とも幸せにする自信があるとか言うのは格好良いけど、1人くらい増えても問題ないだろ?は流石にないわぁ、だね。

葵南ちゃんも当然それに反応して、


「問題あるよ!大ありだよ!増えるのは勿論問題だし,それに、私に少しも説明してなかったじゃん!」


うん。それも問題だね。

いきなり、「今日新しい彼女できたから、仲良くして」って言われたら普通に嫌じゃない?本当は二股なんてしないのが1番だけど、せめて事前の説明くらい必要でしょ。

主人公君はその言葉に狼狽えながらも、


「そ、それは、サプライズになるかと思って……」


「ほら!そういうところだよ!今も、家で怒られたときも、私に謝りもしなかったじゃん!悪いとすら思ってないんでしょ!!」


「うっ!」


葵南ちゃんの言葉で、言葉を詰まらせる主人公君。かなりタジタジになっていたけど、ここでダイレクトアタックを決められた形かな。この様子を見る限り葵南ちゃんが優勢なような気がするけど、


「べつに良いだろ!葵南は俺のこと好きなんだろ!だったらそれくらい受け入れろよ!!」

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