2.食べちゃっても問題ないよね?
ラブノベが、サービス終了!?
《side明里》
「……ふぅ~」
温かいお湯につかって、私は息を漏らす。
今日は入れないと思ってたお風呂。それに入れるなんて、なんだか夢みたいに思える。温かくて優しい湯気に包まれて、
「……ひぐっ!」
嗚咽が漏れる。私の目からこぼれる涙を止めることが出来ない。辛くて悲しくて、私は過去を忘れ去って洗い流すように、泣いた。
「……はぁ」
数分泣いたら涙も止まった。泣き疲れた私は体の力を抜いて、なんでこんなことになったのか思い出す。
始まりは5歳の時。親に捨てられて施設にいた私を、神道家に拾ってもらった。それから始まるのは、普通の人生では関わることのなかったと思う巫女としての人生。それも、現実に現れる化け物を祓うための巫女としての。
私には才能があった。そのお陰で家の人からも褒められて、私はより沢山の魔物を祓った。神童とまで言われてちやほやされて、幸せな毎日だった。
変化が訪れたのは、世間だと中学生になる年齢へとなったとき。神道家が1人の男の子を引き取った。その男の子は私以上の才能を秘めていて、圧倒的な力で化け物を祓うことが出来た。そこで私を含め、数人の女の子が集められる。その男の子と強い力を持つ子を作る相手として。
ただ、皆がそうなるわけではない。力の継承とか色々問題があって、選ばれるのはたった1人だけ。そのため、それぞれの目的のために私たちは男の子へアプローチをした。好きでもないというのに。
私は男の子が、自分の役割を分かっていると信じていた。だから、必死に化け物と戦った。私が1番優秀で、私との子供が1番皆の役に立つと伝わるように。
……でも、ダメだった。選ばれたのは、好きでもないだろうにベタベタと密着して、そっちの方面でアピールしてた子。
その子が選ばれてから、私たちは解散させられた。皆は帰る家に帰っていって、でも、私は、
「選ばれないお前に価値はない。生け贄にでもするから、大人しくしていることだな」
神道家からはこう言われた。
このままでは生け贄にされて死んでしまう。そう考えた私は逃げ出した。走って走って走って。どこまでも遠くに。見つからないために姿を隠すための術とか、移動速度が上がる術とかも偶に使った。
そして気付いたら知らない住宅街に。暗くなってきてもう疲れて、私は道路に腰を下ろした。全てが私とは隔絶された世界にあるように思えたけど、
「……ねぇ。君。大丈夫?」
1人だけ、私に話しかけている子がいた。年下に見えるけど、たぶん中1か小学校高学年くらい。ちょっと嘘を言って追い出されたってことにしたけど、その子は私の言葉を考えて泊めてくれる。体を求められた上に、こんな豪華な家に1人暮らしだって言うのは驚きだったけどね。
「あの子に体、捧げるのかぁ」
久しぶりに触れた優しさ。いや、私が触れようとしてこなかった優しさ。それをあの子は与えてくれた。だから、借金の利子を返すっていう言い訳もあるし、私は全てを捧げようと思う。あの子が、私を捨てないために。
もう必要ないなんて言われたくはないから。
《side小川目覚》
明里ちゃんがお風呂に入ってる間、僕は宣言通り夕食を作る。……え?お風呂を覗きはしないのかって?
しないよぉ。だって、そんなことしなくても後でゆっくり可愛いところを見せてもらうつもりだからね。ぐふふふっ!
なんて思いながら作ってると、1時間後、
「ありがと。さっぱりしたぁ~」
買ってきた服に着替えた明里ちゃんがお風呂から出てきた。かなり長風呂だったね。もう僕の作ってるのも完成しそうだよ。
「はい。これ水。ジュースとか牛乳とか飲みたかったら冷蔵庫に入ってるから勝手にとって」
「分かった。ありがとう」
お風呂上がりの水分補給は大事って聞いたからね。
さて、そろそろ夕食が出来るよ。
できた夕食を2人で食べる。ゲームの設定通り、明里ちゃんはかなりの大食いだった。可愛い子が沢山食べてるのを見ると、幸せな気持ちになるね。
「……ふぅ~」
夕食後、僕はお風呂に入って天井を見上げる。そうしながら考えるのは、明里ちゃんのこと。
明里ちゃんは追い出されたって言ってたけど、たぶんあれは嘘だよね。僕が知ってるゲームの設定だと、あの子は生け贄になる予定だったはず。元々その目的で施設から拾われたはずなんだよねぇ。でも、神道家のこととか話しても一般人には受け入れられないだろうし、それを濁して追い出されたってことにしたのかな。
「……何にせよ。明里ちゃんのことで手を回さないとなぁ」
まず、戸籍が問題。明里ちゃんは拾われた子な訳で、戸籍は拾った神道家が持ってる……訳ではない。
実は、神道家も明里ちゃんの存在は隠してるはずなんだよねぇ。学校にも通わせて無くて、家の中で全て教育してきたって言う設定だったはず。一応勉強も教えられてるはずだから学校にもついて行けるとは思うけど、1回勉強も見てあげないとなぁ。戸籍を作って学校に通わせて。後何かあったかな?……まあ、後で考えよう。
それよりも今は、今からのことを楽しむのに集中しないと。
「ふふふっ」
お風呂から上がって寝室に向かう僕。思わず笑みがこぼれる。
だって、ゲームのヒロインが相手をしてくれるんだよ?気分的には主人公からのNTRだよね。僕、悪役になるのかな?……いや、でも負けヒロインとくっ付く分には特に問題ないのかな?
まあ、どっちでも良いけど、
「……覚悟は、出来てるかな?」
「できるわけないじゃん。……でも、優しくしてくれると、嬉しいかな」
「ふふっ。……たぶん無理!」
僕はそう言って、明里ちゃんをベッドに押し倒す。それから口づけをして色々するわけだけど……予想外なことに明里ちゃんはほとんど抵抗しなかった。もう少し何かあるかと思ったけど、全体的に受け入れられたね。精神的に弱ってて反抗する気力も湧かないのかな?何でも良いけどラッキーだね。
《side明里》
「……ん?ここは?」
朝日が入ってきて、目が覚める。私の目に映るのは見慣れない天井。起き上がって周りを見てみて気付いた。
昨日、目覚君とつながってしまったことを。
……でも、思い返してみても悪い気はしなかった。純粋に目覚君が上手かったのもあるし、私が目覚君を思う気持ちも……いや。やめとこう。あくまで私と目覚君は養ってもらってるだけの関係。
まだ、今はそうしておきたい。一時の感情に身を任せたくはないから。
「……おはよう」
「あっ。おはよう」
リビングに行くと目覚君はもう何かしていた。パソコンで何かしてるけど、その横には朝ご飯が。
「ちょっと待ってて。明里ちゃんのも作るから。……あと、明里ちゃんって普段から家だとそうなの?」
私のご飯を作るという言葉の後に、少し困った顔でされる質問。私は首をかしげながら目覚君の視線の先に有るものを見て、
「っ//」
忘れてた。私!パジャマ着てないんだったぁぁ!!!
「ち、違うの!私は普段は着てるからぁぁ!!」
「うんうん。そうだね。……べつに隠さなくても良いんだよ」
「本当に誤解だってばぁぁぁぁ!!!
と、必死に弁解したけど、それに気を取られてまた服を着るのを忘れてた。絶対目覚君にはそういう人だって思われてるよぉ……うぅ(涙目