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第5話 運命の二人



「呪殺令嬢だという君の噂を聞いて、最初は恐ろしいと思った。けれど、幼いころの君が怪我をした友達を心配している姿を思い出して、考え直したんだ。怪我をしている人達を懸命に助けようとしている君は、恐ろしい人間には見えなかった」


 その事実は、私の記憶の中にもしっかりと焼き付いている出来事だ。


 自分の体質のせいで、何度も何度も誰かが傷つくのを見てきた。


 それでも、家の為、両親の為と思いながら、人と距離をとりつつも社交界に出続けた。


 でも、邪神なんてものが眠っているのなら、もうどうしようもないのだと、最近はそう思うようになってしまっていた。


 こうなる事は運命だったのだと。


「君をとりまく運命については正直あまりよく分かっていない所が多いけれど、でもこんな心優しい人が、運命に振り回されるのは間違っているって思ったよ。だから呪殺令嬢の噂が大きくなった頃、心配になって君を探していたんだ」


 それであの時、普段はこない社交界の会場に彼がいたらしい。


 だから、と彼は続ける。


「実際にあってみてこの感情が恋というものだと分かったよ。君を一目見た時に、僕の心はひかれしまったんだ。それに、僕達が出会うのはどうやら運命だったらしいしね」


 彼の口が語るのは、この世界に伝わる昔話だ。


 遙か昔の古代では、邪神を封じるために戦った存在がいた。

 それは女神だ。


 邪神と戦い、相打ちになった女神は、どこかで眠りについているらしいが、それは……。


「この体には女神が眠っているらしいんだ。だから女神の力が働いて、君と引き合わせたのかもしれない」


 彼は私の頬に手をそえて、微笑みかけてきた。


「この力があれば、身の回りの人間を手厚く庇護してくれる。君の力を相殺できる、だからもう君は人にならなくていいんだよ」


 私は、今まで自分をとりまく運命に辟易していた。憎み、呪った事も少なくなかった。


 だから、運命なんて言葉を耳にするだけでも嫌だったのに。


「運命という言葉を聞いて、嬉しくなるなんて思いもしませんでしたわ」


 都合の良い考えだと思うけれど、今だけは彼と私を導き合わせてくれた運命に感謝しようと思った。


 私達はどちらからともなく、顔を近づけてそっとキスをした。


 近しい人達と触れ合う事をためらっていた私にとってその触れ合いは、熱い恋情によるものというより、とても心安らぐものだった。



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