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上書き保存ができなくて。

作者: 香椎孝直

ああ、やっとこの小説を完成させることができる!


私はこれまでの執筆作業を思い出すと共に、作品を完成することの喜びを感じながら、スマートフォンの文字盤を叩いていた。

応募しようとしたキャンペーンには間に合わず、いわゆる遅刻組になってしまったが、作品を投稿することに意義があると考えている私は、書き始めたこの作品を投稿しないで終わらせることがどうしてもできなかったのだ。


さて、そろそろキリの良いところで上書き保存をするか…。

こまめな保存は執筆者の基本だ。

どんなに良い作品でも、執筆した後で保存して、投稿しなければ意味がない。

私は、新作を投稿するべく、画面に浮かぶ「上書き保存」のボタンをゆっくりとタップした…。


「あれ?」


おかしい。

おかしいおかしいおかしい。

ボタンをタップしているのに、画面が切り替わらない。

プレビューの画面には移行する。

しかし、肝心の上書き保存のボタンは反応せず、画面が「執筆中小説編集」のそれから変わらないのだ。

困ったことになった。

そう思った瞬間だった。


トゥルルルル、トゥルルルル~。


スマホの画面が電話画面に切り替わり、思わず私は通話ボタンを押してしまった。

電話の相手は職場の上司。

珍しく「おっ、早いな、感心感心」と誉められてしまった。全くもって嬉しくないが。

内容はシフトの変更依頼で良くあることだったので、直ぐに終わったのだが、私は電話のあと、真面目にもカレンダーで日付と曜日を確認してしまったのだ。


スマートフォンの「全て消去」ボタンを押した後で…。


悪いことに、私はその日筆が乗り、普段よりも凄まじいペースで執筆していたのだ。

それこそ、こまめな上書き保存をせずに。


ああ、消えてしまった。

私の全力を込めた作品が、消えてしまった。

もう一度、あの内容を書けと言われても、消去の衝撃で磨り減った集中力では不可能に近い。


「ああああぁ…。」


狭い部屋の中、私の魂の叫びが小さく呑み込まれていった。


こうして、私は読み専へと戻っていったのでありました。




皆様も、こまめな保存とパソコンからの投稿を…。

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― 新着の感想 ―
[一言] 本当に文章が綺麗です。 ユーザーネームから入れなかったので、 検索でこちらにも来てみました。 読み専!? 読み専なのですか!? もったいない。 凄く綺麗な文章なのです。 やはり読み込むと文…
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