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別れを告げる感想ラブレター

作者: たなか

 良い点


 今回の短編もすごく面白かったです。まさかのオチに驚いて、最初からもう一度読み返してしまいました。


 一言


 心から愛しています。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時10分




(あっ! 大樹さんだ! 毎回投稿したらすぐさま読んで感想までくれるのが有難いなあ。実際、ほとんど彼のために小説を書いているようなものだし)


(……それはさておき……今回もやっぱり締めの一言は『心から愛しています』かぁ)


(最初に感想貰った時は結構慌てたなあ。勿論『作品を』ってことは理解してる。でも何度読んでも慣れないんだよね。全く……私もいい年した既婚者なのに、どうしてこれしきのことで狼狽えてるんだか……)




 大樹様


 いつも感想ありがとうございます!

 楽しんでいただけて嬉しいです( *´艸`)

 これからもよろしくお願いします!

 ──────────────────────

 たなか

 2021年 03月21日 0時12分




(んっ? また感想通知が来てる。わざわざ送ってくれるのなんて大樹さんぐらいなんだけどなあ……)




 一言


 ところで、僕の事、覚えていませんか?

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時16分




(ええっ!? 何それ!?…………ああ、そうか。もう、びっくりしたあ……)




 大樹様


 私が以前投稿した短編の文章を真似してくださったのですね!

 気付かずに一瞬ヒヤッとして心臓が止まるかと思いましたよ(・´з`・)

 ──────────────────────

 たなか

 2021年 03月21日 0時18分




(……それにしても、この説明不足な感じ。何だか覚えがある気がするんだけど……)




 一言


 そうか……

 まだ思い出せないんだね。


 君は甘くてふんわりした玉子のオムライスが大好きだったよね。

 鶏肉の代わりにベーコンが入ってると邪道だって怒ってたなあ。

 グリーンピースは苦手だから、全部選り分けて皿の隅に残してたっけ。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時25分




(なんで……当てずっぽう……だよね?……それともエッセイとか感想の返信に書いてた?…………正直かなり怖い……)




 一言


 返信はしなくていいよ。

 読んでくれてるのは分かってるから。


 怖がらせていたらごめん。

 でも君に僕のことを思い出して欲しいだけなんだ。


 普段はインドア派なのに、春になると毎年花見に出掛けたね。

 満開の桜が自分の誕生日を祝ってくれてるみたいだからって。

 お酒でもお弁当でもなく、ノートパソコンを持参して小説を執筆しながら花見するのは、きっと君ぐらいだよ。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時34分




(嘘……どうやってそんなことまで……)




 一言


 大好きな君の存在は、僕にとっての全てだった。

 だから君が突然倒れて、余命一年と宣告された時は、

 頭を力任せに殴られたような衝撃を受けたよ。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時47分




(……私が倒れた(・・・)……余命一年(・・・・)って……)




 一言


 君が普段通り明るく振る舞ってくれたことが唯一の救いだった。本当は内心辛くて悲しくて怯えていただろうから、落ち込んでいる僕のために無理してくれてたところもあったのだと思う。


 そんな君がたった一度だけ漏らした弱音が「口の中が沁みるから、大好きなオムライスを食べられないのが辛い」だったのは、今でも時々思い出して笑ってるよ。結局その後、泣いてしまうけど。


 病院のベッドの上から動けなくなっても、小説を次々に認めては投稿して、感想を貰うたびに大はしゃぎしていた姿もずっと忘れられない。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 0時58分




(ああ……私……どうして忘れてたんだろ……どんな時でも傍にいてくれた、優しくて泣き虫なあなたのことを……)




 一言


 君が亡くなった後、僕の世界は朝から晩まで無味乾燥なモノクロになってしまった。一人で見に行った満開の桜も、祝うべき相手が不在で困惑してるみたいだった。


 半年が経った頃、君のノートパソコンを開いたんだ。それまでは辛すぎて触ることすらできなかった。それでも大切な君からのお願いだったから。




「どうしても退会はできないのよね。作品ごと全部消えちゃうから。かといって事実をそのまま報告して悲しませるのも申し訳ないし、活動休止ってのも再開できないから嘘になっちゃうしなあ。安否確認とかされるのかな。……すぐには無理だろうけど、いつかあなたが様子を見てくれると嬉しいな」




 僕への最後の頼みまで小説のことっていうのが、やっぱり君らしかった。



 実際に投稿サイトを閲覧して自分の目を疑ったよ。だって君の名義で新規小説が投稿されていたんだから。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 1時15分





 一言


 最初は誰かにアカウントを乗っ取られてしまったのかと思ったけど、中身を数行読んだだけで、正真正銘、確かに君が書いたものだと判った。

 試しに他のパソコンやスマホでサイトにアクセスしてみたけど、そんな小説はどこにも存在していなかった。



 だから、これは君からの贈り物なんだと思った。

 初めて感想を送る時は手の震えが止まらなくなるほど緊張したよ。



 君は僕のこと、そして自分の病気や死についてさえも、一切覚えていなかった。



 でも僕は、それに気づいてショックを受けるどころか、ほっとしたんだ。きっと、この時間が永遠に続いて欲しいと望んでいたからかな。


 君の紡いだ物語を読んで、感想を綴り、愛していると伝える、この毎日が。


 心のどこかで間違っていると気づいていたけど、それでもこうして決心がつくまで三年もかかってしまった。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 1時29分





 一言


 あの日、君の隣で悲しみに暮れている僕に、笑顔でこう言ったね。



「あなたとお別れするのはとても寂しいし辛いけれど、でも私物凄く楽しみなことが一つあるの!」


「亡くなったら既に死んだ人達とも再会できるって言うじゃない? あっちで待ってくれてる父さんや母さんともたくさん思い出話をしたいけれど……あの太宰治や芥川龍之介みたいな、今は亡き超大物作家先生方とも生で会えるかもしれないのよ!!! それってとっても素敵じゃない!?」



 楽しそうに語る君が、余命幾ばくもない病人だなんてとても信じられなかった。



「ひょっとしたら向こうで既に何百冊も新刊出しているかもしれないし、何だったらラノベとか同人誌にも挑戦しているんじゃないかと思うの……そう考えたらワクワクして堪らなくなっちゃうでしょ?」



 僕は、君を取られてしまうような気がして、会ったこともない文豪に対して嫉妬していたけど、それでも無邪気に目をキラキラと輝かせて嬉しそうに話す姿は、どこまでも君らしくて愛おしくて眩しくて、こんなに魅力的な女性と出会えた自分が最高に幸せ者だと感じた。



 だからこそ、君をこんな小さな世界にいつまでも閉じ込めて、僕だけにしか届かない物語を書かせてしまっていることが、どれほど正しくない事か分かっていたんだ。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 1時37分




 一言


 だから今日こそ、君に別れを告げるよ。

 長い間ここに縛り付けてしまってごめんね。

 頼りない僕のために傍にいてくれて、

 たくさんの物語を届けてくれてありがとう。


 これからもずっと君のことを心から愛してるよ。

 また逢える日まで待っていてね。

 さよなら。

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2021年 03月21日 1時49分





 あなたへ


 勝手に良い雰囲気で締めようとしないで!

 精一杯格好つけた台詞を並べてたけど、どうせ画面の前で子供みたいにぎゃんぎゃん大泣きしてるくせに!

 こっちにだって気持ちの整理をさせなさい!



 そもそも、あなたはいつも言葉が足りないのよ!

 あの文章じゃ、誰がどう読んでも悪質なネットストーカ―だと勘違いするに決まってるわ!

 もし私が死んでなかったら二、三通目で即通報してたからね!!!


 あとグリーンピースは、あなたの健康のためにお裾分けしてあげてただけよ!



 ……はぁ……でも、この三年間のことは全く怒ったり恨んだりはしてないから安心して。むしろ嬉しかったの。あなたに何も残してあげられなかったことは私も後悔してたから。


 きっとこの奇跡は私の未練とあなたの願いが重なった結果よ。だから、大好きなあなた宛てにたくさんの贈り物を届けることができたことを心底感謝しているわ。ありがとう。



 それと、私に早く会いたいからって、自分の命を粗末にするなんてことは絶対に許しませんからね!!!

 しっかり三食栄養あるものを食べて、無理せず働いて、たっぷり寝て、没頭できる趣味を探して、しわくちゃのおじいちゃんになるまで思う存分人生を楽しんだらこっちに来なさい!!!


 浮気なんて絶対しないから心配しないで。私は記憶を失くしても1000日以上ひたすらあなたに贈る物語を書き続けた超重い女なんだから。


 じゃあ、またね!


 あなたの妻、田中若葉よりありったけの愛を込めて

 ──────────────────────

 たなか

 2021年 03月21日 1時58分




 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 一言


 最近、小説を書き始めたんだ。君のように素晴らしい作品を創り出すことは、まだまだ出来ないだろうけど。今度会う時には、そっちの作家達にジェラシーを感じなくてすむよう、君が夢中になってくれるような物語をプレゼントとしてたくさん準備していくつもりだよ。


 じゃあ、またね!

 ──────────────────────

 投稿者:大樹

 ― ― ― ― ― ― ― ―

 2022年 3月21日 2時00分

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― 新着の感想 ―
[一言] 未来の大樹さん がんばれ!
[一言] ホラーかと思ったら…… とても良いお話でした!
2021/04/12 17:25 退会済み
管理
[一言] 特定のパソコンだけから閲覧できる、もしかしたらそのパソコンを使用しても大樹さん以外の人には見えないかもしれない投稿作品だったんですね。 不気味なパソコンの話にも、大樹さんが病んでる話にもで…
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