私を探して‼︎ 公開捜査緊急生放送スペシャル『セミプロフットサル選手・甲斐唯香』
フットサルの女子セミプロリーグ『ダンデリーグ』。このリーグに所属するクラブのひとつ『大江戸女子球会』の公式ホームページには選手が一覧で紹介されているが、その中に一人だけ背番号が『未登録』となっている選手がいる。その選手は甲斐唯香さん。
唯香さんは二〇二〇年二月七日、大学の講義を受けたのを最後に消息を絶った。現在、遭難あるいは何らかの事件に巻き込まれた可能性があるとして、警視庁が行方を捜査している。彼女の身に何が起きたのか、警視庁の調べにより現在までに判明している事実を時系列順に追う。
二〇二〇年二月七日金曜日、唯香さんは大学の講義が終わってすぐに羽田空港へ行き、熊本空港行きの便に飛び乗った。周囲の友人や山梨県の家族には「人吉からえびのまで徒歩で横断する」ということを話していた。
翌八日、唯香さんは熊本市内のホテルを朝六時ごろにチェックアウトし、始発のJRとバス、タクシーを乗り継いで山道へ向かったと思われる。上熊本駅ホームと人吉市にあるコンビニエンスストア内の防犯カメラに唯香さんが映っていた。いずれの映像でも彼女は一人で映っており、同伴者はいなかったとみられている。服装はピンクのウィンドブレーカーに黒の長ズボンと白いスニーカー、青いリュックサック。ちなみに、偶然なのか大江戸女子球会のクラブカラーもピンク色である。
唯香さんが周囲に話していた通りの行程を歩いたなら、宮崎県えびの市に向かったはずだが、彼女がえびの市に到着した形跡はなかった。そのかわり、唯香さん名義で八日に宿泊の予約があり、当日のチェックイン予定時刻になっても連絡がつかなかったためキャンセルにしたビジネスホテルがあることがわかった。また、関係は不明だが、えびの市内で八日に路上駐車していたり、急発進したりしていた不審な白い軽乗用車の目撃情報が多数寄せられている。
二月十日月曜日。この日の講義を無断欠席したことから体調不良を疑った大学の友人がスマートフォンで連絡を取ろうとするも、唯香さんからの返信は来なかった。翌十一日朝十時三十分ごろ、唯香さんの住所を知らなかった友人は念のためと思って大江戸女子球会のクラブハウスに「そちらにいないか」と連絡し、連絡を受けた球団スタッフがダンデリーグ東京寮へ向かった。寮にもいないことを確認した球団スタッフが代々木上原駅前交番へ通報し、失踪事件として捜査が始まった。
唯香さんは失踪前の二〇一九年シーズン、進学と同時に大江戸女子球会と契約し、フットサル選手になった。ポジションはサッカーのミッドフィールダーに相当するアラ。背番号は百二十一。チームメイトからは親しまれており、大学でもトラブルは起こしていなかった。ダンデリーグでは試合に出場する選手は二十歳までと決められているため、唯香さんにとっては二〇二〇年シーズンが現役最終年となる。
唯香さんの家族は以前の取材で「早く戻ってきて、無事に引退してほしい」と話していた。しかし新型コロナウイルスの流行に伴い二〇二〇年シーズンは中止。巨額の赤字を抱えたダンデリーグを含む女子セミプロフットサル業界は、全国規模でのリーグ再編を余儀なくされた。二〇二一年以降は新リーグが発足する予定であり、その中に大江戸女子球会は所属していない。
唯香さんの足取りが消えた人吉市とえびの市一帯には、ある都市伝説じみた噂が存在する。『ラム』という名前の地図に載っていない集落が山奥にあり、迷い込んだ人を襲い、殺害している、と。衛星写真では両市にまたがる森林部に該当しそうなものは確認できない。しかし、警視庁では何らかの手がかりになるかもしれないと考えて『ラム』集落の捜索を熊本・宮崎両県警と協力して行っている。
唯香さんは二〇二〇年度の労働契約更改を済ませていなかったが、ダンデリーグおよび大江戸女子球会は母親による代理契約締結を特例で認め、大江戸女子球会所属の選手として登録した。ただし、背番号については事務作業の煩雑化防止のため保留。結果として『選手登録されているが背番号のみ未登録』という状態になった。
現在も唯香さんの行方や安否はわかっていない。二〇二〇年二月七日から八日にかけて、唯香さんについての情報や熊本県・宮崎県での不審人物・不審車両を目撃したという方は、ぜひ当番組に情報を提供してほしい。電話番号は画面に表示されている通り。放送終了後は管轄の警視庁代々木警察署へ連絡いただきたい。どのような情報でも構わない。あなたの情報が、解決の糸口になるかもしれない。
