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80.【変わらぬ愛】 改

 大通りに到着すると私はレオさんのエスコートで馬車から降り、目的のお店にニコルズさんと一緒に入った。ここは女性専門のお店なので、レオさんとマードックさんは入口で待っていてくれる事に。


「ニコルズさん、ありがとうございます。ニコルズさんがいなかったら、このお店に入れなかった。私一人で入店するのはダメだって、言われたと思うんですよ」


「女性の護衛の為に、私達女性騎士がいるんですよ。お気になさらずに」

 ニコルズさんの作り物ではない笑顔に、私は笑顔で頷いた。


「竜太子様、ユイ様、ご来店ありがとうございます」

 私達に気が付くと直ぐに駆け付け、営業スマイルで挨拶をしてくる女性店員さん。


「本日はどのような物をお探しですか?」


「はっきり決まっていないので、店内を見て回っていいですか?」

 私は店員さんに断りを入れて、店内をゆっくりと回り始めた。


 実はこのお店、女性専門のお風呂用品や寝室用品を売っているお店なのだ。

 正直今使っている寝間着はシンプル過ぎて可愛くない。まぁ女性騎士さんに配給されるのと同じものなので、可愛さを求めるのも酷なのだが。


 今までは別に気にもならなかったし、それでいいと思っていた。だって誰かに見せる訳でもないし......と。うん。今まではね。

 だけどキャロルさんに指摘されて、可愛い寝間着を買うことに決めたのだ。


 で、今手にしているのは可愛いチェック柄のパジャマと薄いピンクの前開きのネグリジェ、それと白の被るタイプのネグリジェ。どれも冬用なので生地は厚く、しっかりしている。白のネグリジェはフワフワしたタオル地みたい。


 どれがいいか悩んでいるとニコルズさんが「男性とお揃いの寝間着もあるのよ」と教えてくれた。

 男性用は普通のパジャマ。女性用は被るタイプのネグリジェ。柄は数種類あって選べるのだが、流石にお揃いで買うのは躊躇われた。


「こういうのは好みではないですか?」


「そうじゃなくて、まだ恥ずかしいというか......」

 私の言葉に少し驚いた様子のニコルズさん。何かを察してくれたみたい。


「それなら、こちらのネグリジェですね。どちらも可愛いですよ」


「ノアはどれがいいと思う?」


『ユイは可愛いから、全部似合う』

 ノアにアドバイスを求めたのが間違っていた。


 勝負下着ならぬ、勝負寝間着。いや、別にそういう訳じゃなくて、少しでも可愛いと思われたいだけで......。 誰に対して言い訳しているのか分からないが、私はそんな事を考えながら他の物も合わせて3枚のネグリジェを購入した。


 次に手にしたのは、キャロルさんがお薦めしてくれたバスソルトとボディミルク。とってもいい香りで、それだけで大人の女性になれたような気にさせてくれる。


 この国の石鹸は洗浄の為だけに作られたもので、元の世界のように香り付きのものがない。だから、こういう香り付きのものは特別なのだとか。


 元の世界でもシャンプーとかボディソープも使い心地重視で、香りで選んだことはなかった。こういうところが、女子力足りないところなんだろうなぁ。


「そういう小物で、自分に魔法を掛けるのも大事だよ」


 キャロルさんが教えてくれた方法で、私は素敵な女性になる暗示を掛けてみることにした。数種類のバスソルトとボディミルクも一緒に購入してお店を出た時は、一刻(一時間)は優に過ぎていたと思う。


「遅くなってごめんなさい」


「気に入った物はあったか?」

 きっと待ちくたびれていたであろうレオさんは、優しい笑顔で私に問いかける。


「マードックさん、待ちくたびれましたよね。ごめんなさい」


「大丈夫だ。アデルの買い物はいつももっと長い」


 マードックさんはニコルズさんに聞こえないように、小さな声で私にそう言って口元を少し和らげた。マードックさんでもそんな事言うんだ。私はちょっとだけ、彼と近づけた気がして嬉しくなった。


「ニコルズさんには内緒にしておきますね」


 私の小声にマードックさんは、眉だけを動かして返事を返して来た。マードックさんって、もしかして楽しい人なのかもしれない。




 購入した荷物を馬車に乗せると、次のお店には歩いて向かうことにした。私の隣をレオさんが歩き、直ぐ後ろにはマードックさんとニコルズさん。それ以外にも、前後に二人ずつ近衛隊の人がいる。


 完全に騎士に囲まれ、守られた状態。前回よりかなり厳重な警備になると言われていたが、自分が想像している以上だった。


 ノアが一緒にいるのに、ここまでの厳戒態勢が必要なのだろうかと疑問に思ったが、それを口にはしない。私の為に最善を尽くそうとしてくれている事だけは、伝わってくるから。




 そして次に向かったお店は、前回レオさんに願いの紐を買ったお店。レオさんが私の為に願いの紐を選びたいと言ってくれたので、絶対に来ようと二人で決めていた。


 お店に入ると前回と同じ店員さんがいたので、店員さんがアドバイスしてくれた願いの紐を彼がとても喜んでくれたと話すと「お力になれてよかったです」と微笑まれた。

 ん? お力になれて? 店員さんの言葉の意味が分かったのは、それから直ぐの事だった。


 レオさんがどの石にしようか悩んでいる間に、私は前回読むことの出来なかった説明文を見てみることにしたのだ。まだ全てを理解出来るとは思えないが、少しなら分かるかな......と。

 そして私が読んだ説明文には、思いもよらないことが書いてあった。






 恋愛〇〇を願うアメジストと自分の色の石の組み合わせで、あなたも想いを伝えてみませんか?








 〇〇は理解出来なかったが、前後の文から考えて成就だろうと予想出来た。そしてその組み合わせの表す意味が「私は、あなたが好きです」だったなんて。


 私が選んだ命のお守りと言われる石の色は、黒。ということは、私がレオさんに渡した願いの紐の意味は、完全な告白ではないか。知らなかったのはいえ、なんてことだ。


 そして願いの紐を渡した時、レオさんが言った言葉を思い出した。

「この石の意味分かってて選んだのか?」


 もちろん石の組み合わせが持つ意味など知らなかった私は、二つの石を選んだ理由をそのまま告げた。あの時、彼はどんな気持ちで願いの紐を受け取ったのだろう......。


 アメジストの石の前で固まっている私に、レオさんが近寄ってくる。

「ユイ、どうした?」


「この説明文、読めるようになったんだけど......」


「あぁ......それな」

 レオさんはちょっと苦笑いをした。


「どうして誰も教えてくれなかったのよ」


「ユイが意味を知らないままくれたと分かっても、それでも俺は嬉しかったよ」

 レオさんは深い紫の瞳を細め、愛おしそうに私を見つめる。


 この石の組み合わせの意味を知っていたら、私はあの時渡せていただろうか。あの時の私に、そんな勇気があっただろうか。いや、彼への想いに気が付いたばかりの私には、そんな勇気はなかっただろう。


「どうせなら、想いを込めて渡したかったな」

 私の言葉に微笑みながら、私の頭を優しく撫でるレオさん。


「今はちゃんと届いてるから大丈夫だ」

 彼はそう言って「これにしようと思う」と、私の前に二つの石を差し出した。


 一つはレオさんの色であるアメジスト。もう一つは濃い赤色をした石、ガーネット。


「変わらぬ愛って意味らしい」

 レオさんはちょっと、照れくさそうに口元を手で隠した。彼はいつも真っ直ぐに、私に想いを伝えてくれる。


 そしてそれを使って造ってもらった願いの紐は、手首に嵌めるサイズに糸を調節してもらい、その場で私の左手に付けられた。竜王の腕輪とレオさんがくれた願いの紐。左腕には、ノアとレオさん、私の守るべき者が並んでいる。


「レオさん、ありがとう。私とっても幸せだよ」




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