通りすがりの自分と猫のものがたり 前日譚
序文
これはネコさんの企画に出す話の、ボツにしたパートだ。
ネコさんに出会うまえの自分のことを語る。
自分がなぜネコさんと話をしようと思ったのか?
その前提に自分のことを書いたほうが良いと、ちょっと思ったのだ。
けれども、なろうに来る前の出来事は思った以上に長くなり、辛気くさい話になったので、書くことをやめた。
ただ、そのまま消してしまうのもどうかと思ったし、自身の整理の意味でヒューマンドラマ、私小説として投稿してみる。(違う気もするが、まあいいだろう)
この話にネコさんは出てこない。
以下、本文だ。
まずは、ネコさんに出会うまえの自分のことを少し語る。
自分には姪っ子が数人いる。
兄の娘たち二人と、妹の娘たち二人だ。
兄の姪っ子は、幼い頃は普通に仲良くしていたが、
自分が、別れたパートナーについて実家と諍いをおこし、実家や親族、兄妹弟たちと、10年以上にわたり交流を絶って、
駆け落ちのような生活をしている間に、兄の姪っ子は成人してしまった。
兄の姪っ子にしてみたら、幼少期の記憶の相手など、遥か彼方の出来事だ。
兄の姪っ子とは、他人といっていい関係になっていた。
自分の兄妹弟との関係は、10年以上の年月を感じさせなかった。
不義理をしていた自分に、彼らが与えてくれた好意には、本当に返すべき言葉もない。
妹とは交流を再開したあと、すぐに昔のような親しい関係に戻った。
趣味が近いこともあり、妹とは相変わらず親しく付き合っていただいている。
妹の姪っ子は、交流を絶った頃には乳飲み子か保育園、幼稚園入園前くらいの年だったのだが、
交流を再開した時には別人であるように成長し、中学生、高校生になっていた。
思春期の娘たちだったが、自分とは親しく付き合ってくれた。
妹の下の姪っ子とは、かなり親密な関係を築くことができた。
あの子とは趣味がほぼ一致しており、小説の貸し借りや映画、イラスト、絵画等の鑑賞など、今でもよく連れ立って出かける相手だ。
下の姪っ子は、自分がなろうへと来ることになる、きっかけを与えてくれた人物でもある。
現在は一時的に休止しているが、小規模ながら、なろうで活動しているし、
ある画像投稿サイトには、イラストを出していたこともあった。
上の姪っ子とは、親密な関係になることには失敗した。
あの子とは親しくなってはいるが、彼女の生い立ちは、自分と同様に、祖母に溺愛されて育ったことによる影響を受けており、
中国の小皇帝のように振る舞っていたという名残が、自分の嫌な記憶を刺激するのだ。
姪っ子に罪はないのだが、相手を不愉快にさせる無遠慮な言動と我が儘な様子が、
自分が嫌悪する、過去の自分と時折重なって、どうにも感情を抑えがたい衝動になったりする。
それに趣味が下の姪っ子ほど重なっていないこと(上の姪っ子はマンガは読むが、小説は読まないのだ)。自分にとってこの要素は、どうも大きいらしい(苦笑)
多分、上の姪っ子と親密な位置まで行けなかった理由は、その辺りの二つが大きかったのだと思っている。
上の姪っ子とは、妹と交流を再開したばかりの頃は、お互いに好意を持って接していたと思っていたのだが、しだいに距離が開いた。
自分から離れてしまったのだろう。そのことで、自分が悪かったという苦い後悔が、今もある。
自分は元来、一人っ子として育ったせいで、あまり人との交流を行わない質だ(兄妹弟と一人っ子というのは矛盾した言葉だが、これについては以前に何かで書いたのでここではとばす)。
自分だけの孤独をあまり苦にせず、
親密な相手がいくらか居たら、それで満足してしまうところがあることは自覚している。
だから友人は多くなかった。
少なくとも、他人と共有する幸福についてパートナーから教わるまでは、自分には孤独はかたわらにあるものだった気がする。
他人を所有し、所有される幸福を知って、孤独を恐れる気持ちを知るまでは。
パートナーと袂を分かった頃、
自分は、あのごたごたで数少ない友人たちとの連絡先、
そして、自らの書いた作品の原稿をすべて失った。
現在、投稿したイラストなどの一部が残ったのは、たまたま、ある事情で再発見されたからだし、
友人と連絡がついたのは、過去に自分が記憶していたいくつかの電話番号、記憶の名残として頭に残っていたものから、人づてに辿り、関係を修復したからだ。
全てではない。一部の友人たちは、永遠に失われたままだ。
かつて自分が書いた物語や絵と同じように、それは、どこかへと消えてしまった。
そう、最愛だと思っていたパートナーと共に、彼方へと去ったのだ。
もともと、実の家族との縁が薄く、他者との交流の線も細く少ない自分。
パートナーと別れた時には、あいつとの親密な繋がりを無理矢理に引きちぎり、
胸から片腕までが無くなってしまったのような損失感を感じながら、流れゆく血と悲しみをずっと垂れ流していたようにも感じる。
あいつと別れて、かろうじて残っていた過去の繋がりを失っていたとき、
あの孤独な暗闇でどんな風に過ごしていたのか、よく覚えていない。
本当の絶望に至ったとき、感情を失うと聞いた気がするが、そんなところかもしれない。
血を流しながら、誰とも繋がりを持たずにあの暗闇の中にずっといたとしたら、
今どうなっていたのか、まったく想像がつかない。
まあともかく、自分はそこからは脱し、いくらかの友人、親族との交流を再開し、
仕事を見つけて、創作を再開するくらいの元気を取り戻した。
自分は、そんなか細い交流状態から改善されて行きつつある頃に、なろうへと現れた。
お話は、「通りすがりの自分と猫のものがたり」へと続く