あなたが…
握られた炎は ''氷河"と名乗る男が投げた氷の槍を溶かした
「あなた…その''炎"…あなたが…東条 焔さん!?」
水色のカーディガンの少女は驚いた
無理もない
先程まで探していた人物が目の前にいたのだから
「チッ!よりによって''炎''かよ!相性悪りぃなぁ!」
会話をしているうちに氷河は大きく上空へ飛んだ
「えっ!?どんだけ飛べるんだよ!!」
焔は思わず驚いた
氷を操る男は街の道路の上を飛んでいた
高さにして5メートルぐらいだろうか
すると水を操る水色のカーディガンの少女も飛んだ
「お前もかよ!?」
また 思わず声が出た
「異能力を使う場合、身体能力も大きく上昇するんですよ!知らないんですか!?」
少女は飛びながら答えた
身体能力上昇…そんな事も起こるのか
焔は今初めて知った
何故なら今までこの異能力を使ってこなかったからだ
憎いあの男と同じ''炎"
焔は一生使うまいと思い生きてきた
(なんで俺は炎を使っているんだろう…)
焔は自らの行動に疑問を持った
手に握られる炎を見た
頭の中には炎の映像とそして悪夢
燃え盛る家 そこから出てくる男
全てが思い出される
「うわぁぁぁぁ!!!」
彼の身体は炎に包まれ、燃える
「まさか…"覚醒"!?いや違う…これは…!?」
飛んでいた少女は焔に注目してしまう
その隙をみた氷河は手に氷の剣を生成し
少女を突き刺そうとする
「よそ見とは余裕だなぁ!!!」
少女の眼前に剣の刃の先が現れる
少女は反応できなかった
少女ができたのは目をつむることだけだった
先程まで騒がしかった商店街の音は消え
静かな時が流れた
少女は思わず目を開けた
「………!?」
氷河は止まっていた
空中に剣を構えて
辺りを見回すと全てが止まっていた
事故現場の車も野次馬も全て
……がただ一つ止まっていない者がいた
「うわぁぁぁぁ!!!」
炎に包まれた男 焔がこちらへ向かってくる
飛んでいた
焔は拳を握り炎を纏わせた
「飛べるじゃん……」
少女はそう呟いた
炎の拳は氷河の剣を打ち砕いた
その瞬間全てが動き出した
止まっていた車 野次馬が再び騒ぎ出す
「なに!?俺の剣が….!?」
確実に少女を仕留めたと思っていた氷河は
驚き姿勢を崩した
「ガ ラ ア キ ダ ゾ」
炎の拳は氷河の腹へ鋭く入る
「グッ………」
氷河は苦痛に顔を歪めた
「この野郎!!」
氷河は再び剣を生成し、焔へ突き刺そうとするも
勢いのある水に壊された
少女が放った水だ
「クソっ!ここまでか……!」
氷を操る男はパキパキパキ…と自らの身体を氷に
包ませたかと思うと
瞬く間に消えていった
「ふぅ……」
少女は安堵のため息をついた
「焔さんは!?」
少女は慌てて炎の少年を探す
その少年は道路の端で眠っていた
「良かった……」
再びため息をついた
「ありがとう あなたに救われましたね
そして入学おめでとう」
そう言うと少女は少女の元へ歩みだした