千ヶ丘学園 異能力開発で有名な高校です
俺の親は居ない
炎を使う黒髪の男に殺されたからだ
俺は母の姉の家に居候させてもらっている
母の姉 東条 真尋はとある会社の社長らしい
何故か知らないがめちゃくちゃ若く見える(母とは違って)
化粧のせいなのか俺の目がおかしいのか
女社長補正というものなのか?
らしいというのは深く聞いていないからだ
もっとも居候させてもらってる身なのに
"どんな仕事してるんですか?"などと聞くのは野暮というものだ
真尋は皿洗いをしながらリビングのソファーで
スマホを弄ってる焔に言った
「ほむくんは高校どこにするの?」
あぁ もうそんな時期か
ちなみに真尋は焔のことを"ほむくん"と呼ぶ
まぁ別に深い意味は無いだろう
焔は深くため息をつきながら言った
「1番近いとこ」
近い高校といえば家から徒歩10分位のところにある公立校だ
偏差値的にも入れないということは無い
そこまで深く高校について考えてなかった焔にとってはどうでもいい事なのだ
この時期の中学三年生に受験の話は避けては通れない道だ
受験のことを考えると頭が痛くなる
単純に勉強が嫌いなだけなのだが…
焔自身は別に勉強しなくても入れるとは思っているものの、もし勉強せずに受験して落ちたりしたら、それはそれで申し訳なく感じるので一応受験勉強はするつもりだ
「ほむくんは頭良いんだから〜もっと良いところ行っても良いのに〜」
真尋は皿洗いの手を止めてこちらへ来る
「例えば〜千ヶ丘学園とか♪」
千ヶ丘学園 異能力開発を行い数々の粛清者を輩出している名門校だ
電車で二駅程で着くのであまり遠くない
「ほむくんの能力じゃあ十分に通用するし、
勉強の面でも困ることは無いと思うけどな〜」
真尋はノリノリで話す
千ヶ丘学園 全く興味が無い訳では無い
ここでは異能力開発で能力が格段に上昇する
独自のプログラムを売りにしている
偏差値もそこそこある
焔の偏差値もそこそこある
学年でいうと3、4番目に成績が良く
優等生の部類に入るぐらいではあった
復讐のために生きている焔にとっては
別に高校なんかどうでも良く
強くなろうと思ったら最終的には自らの努力だと思っている
「近いところでいいよ 電車面倒臭いし」
そうそう言うと焔はリビングから玄関へ
玄関から外へ出た
「ちょっと〜どこ行くの〜?」
真尋はいつの間にか皿洗いに戻っており
顔を覗かせながら聞く
「コンビニ」
行く場所を告げると玄関のドアをバタッと閉めた
焔が居候する家は近所の中では一際目立つ
大きく高いマンションだ
近くの主婦の噂によると芸能人が住んでるとか住んでないとか…
焔は芸能人には一切興味がなかった
唯一興味がある事が夜 家を抜け出し
繁華街をぶらぶらする事だった
夜の繁華街には色々な人間がいる
酔っ払って道端で寝てる人、必死にナンパしている人、歩きスマホをしている人
焔は人を観察するのが好きだ
人の流れを見るのは面白い
目の前を横切っていく人を目で追うと
密かにつまずいていたり、さっきも通った人が道を間違えたのか地図を見ながらあっちこっちに歩いている
コンビニで買ったホットココアを飲みながら
近くのベンチに座りぼーっと人を眺めていた
ベンチに座ってしばらくした頃
キョロキョロと誰かを探しているかのような少女が視界に入ってきた
(人探しか…ご苦労さんだ) 焔は人探しの少女に目をやった
見ず知らずの他人の人探しをするほど焔はお人好しでは無い
むしろ人見知りの方だ
キョロキョロ キョロキョロ……ビシッ
目が合った 合ってしまった
焔は白々しく目を逸らした
だが遅かった
少女はこちらへ歩いてきた
水色のカーディガンを羽織った少女は尋ねてきた
「すみません!人探しをしているのですが…」
手伝え という事か
多少めんどくさいとは思いつつも見ていたのは事実だしこのまま手伝わない訳にもいかない
「良いですよ その人の名前とか特徴とかって分かります?」
そう言って焔はベンチから立ち上がった
「東条 焔という人なのですが…」
ん?聞き間違いか?
今確かに俺の名前を言ったような…
念の為もう一度聞いた
「今なんて?」
少女は怪しむ様子もなく答えた
「東条 焔という人です!この辺りに住んでいると聞いたのですが…」
間違いない 俺だ
焔は考えた
この少女は誰だろう と
少なくとも俺の知り合いでは無い
こんな少女出会った事がない 記憶にない
「何故その人を探しているんです?」
面倒な事に巻き込まれるのは御免なので
少し探りを入れてみた
少女は答える
「実はとある高校の推薦状を預かっておりまして…」
ほら見ろ面倒な事だ
今更推薦状なんか貰ったところで…
というか推薦貰うようなことはしてないはずだが…
と思いつつもさらに探りを入れた
まるで他人のことを探るかのように
「推薦状…どこの高校なんです?」
少女は答える
「千ヶ丘学園 異能力開発で有名な高校です」
……!!!
真尋が言っていた高校だ
何故 千ヶ丘学園がわざわざ俺に推薦状を?
頭の中ははてなでいっぱいだったが
そんな事よりも今はこの少女に正体を明かすかを考えるのが先だ
ここまで半ば強引に聞いておいてそれは自分です
などと言って信用される訳が無い
ただ、推薦という楽な方法で高校に入れるという機会を逃す訳にもいかない
焔がここで取るべき行動は1つ
「すみません…東条 焔さん…ですか 存じ上げないですね…」
と断った
そうですか としょんぼりする少女を見ると
心が痛む
どうせこの先も俺を探しにやってくるだろう
その時に正体を明かせばいい話だ
あの時は上手く名前が聞こえなかったなどと言い訳を言えば良い と思っていたその時
背後から嫌な気配がした
キキーッという車のブレーキ音
そして数秒後ボンッと激突した音
振り返って見ると車の前方が凍った車が反対車線の車に激突していた
焔は状況が飲み込めなかった
「え!?は!?なに!?」
手にしていたホットココアはいつの間にか地面にこぼれていた
「もう来ましたか…早いですね…」
人探しの少女はそう言って
手の中から大量の水を出現させた
「こっちもなに!?」
心の声が思わず出た
「下がって下さい!」
少女はそう言うと
出現させた大量の水を前方に噴出させた
すると何もなかった空間から声がした
「チッ!バレちまったか!この装置も役に立たねえなぁ!」
パキパキパキ…と何もなかった空間から氷が現れ
それはやがて人の形に…
そして人になった
「よお!俺は反逆者のメンバー 氷使いの氷河ちゅうんじゃ!よろしくな!」
全身が氷に覆われた男は自己紹介をすると同時に
こちらへ大量の氷の槍を投げてきた
(どうする?氷なら炎でいけるか?)
考えるより先に焔の手には炎が握られていた