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戦国異世界で國盗りの翁  作者: 大上
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深い傷痕

「それで、戦国大名とはどんなやつがいるんだ?」

元の世界との整合性を確かめるために一応聞いておく。

とまあでるわでるわ。

織田信長、武田信玄、上杉謙信、北条氏康、毛利元就などの歴戦の将が領地を巡って合戦を繰り返しているらしい。

歴史の教科書、大河ドラマ、漫画に至るまで聞きなれた名のオンパレードだった。


「どうして笑顔なんだい?鉄山さま」

おっとこれは迂闊だったな。

感情を素直に表情に出して良かったためしがないことは前世で知っている。

しかし・・・それにしてもどうしてこれが喜ばずにいられようか!

死亡したら敗北、勝てば相手の領地がそのまま舞い込む。

馬鹿馬鹿しくも至極単純で難しく、俺が真に望んだ環境・・・

まぁもののけ共が居なければの話だが。


「いやなに、知った名前が多かったものでな」


「そりゃぁ日ノ本にあの方々の名を知らないものは少ないでしょうよ」

ここでは常識らしい。それだけ民が注目している争いだということだ。


「そう言えば鉄山様はどこからいらしたんですかい?」


これは困ったな。

約五百年後の別世界だよ☆

なんて言ったら精神異常者の烙印を押されてここで信用を獲得するのは難しくなるだろう。


「それは・・・秘密にしておく」


「はぁ、そうですかい」

太助も俺の出身については興味がないようで助かった。

時代がら言いたくない者も多いのだろうか。


すると昨日の弥吉・・だったか、が叫びながら家の中に入ってきた。

「やべぇぞ太助!!三郎がしんじまいそうだ!!」


「なんだって!?鉄山様、ちょっと待っててくだせえ」


太助と弥吉が急いで出て行った。誰かが危篤なのだろうか。


「三郎というのは何者だ?」

太助の妻に聞いてみる。


「太助、弥吉の友人です。仕事、遊び関わらずいつでも一緒にいる仲良し三人組なんですが・・・」


ははあなるほど。昨日屍から逃げるときに背中を切られたやつだな。

あんな腐った手で怪我を負わされたら何かしら病気にはなるだろう。


「三郎のもとに案内してくれぬか?」


「えっ・・はい、わかりました。ついてきてください。」

何が出来るかは解らないが行かないよりはましだと俺の勘が言っている。



三郎はひどい状態だった。手足がパンパンに腫れ、背中は膿んでいる。呼吸も浅く早い。とても苦しそうだ。


「鉄山様!どうしてこんなところに・・・」


「少し三郎の容態を診察していいか?」

もちろん俺は医師免許などは持っていない。

だが今の俺はには心強い物知りなやつがいる。


「へえ・・・構いませんが・・」

心なしか太助の顔が暗い。弥吉や他の見舞いにきた村人もそうだ。

恐らくもう三郎が長くないことを皆わかっているのだろう。


さてうまくいくかな。




九十九神よ、三郎を治す薬の作り方がわかるか?



〈ハキリ草、ヒケシ草、ハライ草、ラクゴウ草をすり潰し1対2対1対1の割合で混合。傷口に塗り込むと共に、煎じて汁を摂取させて下さい。〉


「いまから指定した薬草を持って来てくれ。至急だ」


村人は戸惑いながらもすぐに材料を集めてくれた。聞いたこともない草だが比較的入手も容易らしい。

指示の通り薬を作り、傷口に練り込む。かなり痛がっているが無視して練り込む。太助達があわあわしているが気にせず飲ませる。

治療がおわるとものの五分足らずで効果が現れ初めた。手足の腫れがみるみる引いて行くと共に滝のような汗がピタリととまった

それから程無くして三郎が意識を取り戻した。

飛びつこうとする太助と弥吉を腕で制しながら絶対安静を告げ、唖然とする村人を尻目に太助の家に帰った。




「鉄山の旦那ぁ!本当に・・・本当にありがとう・・・親友を二人も助けて貰って・・・うぅ・・・」

しばらくしてから弥吉が泣きながら入ってきた。

「だからいっただろうが、鉄山様はすげえ人だって。それにしてもお医者様だったのは驚きでしたぜ」

別に医者ではないのだが九十九神のことを話すとややこしくなるだろうからな、そういうことにしておこう。


「礼は無用と言ったはずだ。俺は俺のしたいようにしただけだ。その結果三郎が助かっただけ、気にすることではない」



「謙遜なんてやめてくれよ、ダンナは俺の恩人だぜ!凄かったよあの時ーー」

弥吉は興奮して喋る喋る。こいつはおしゃべりなやつだな。

まぁポジティブな印象を持って貰って困ることはないだろう。


「よくお前たちは治療が終わるまで黙って見ていたな。見知らぬよそ者が病人を診るなんて常識的に信頼できないだろう」


「そりゃあ最初は心配でしたぜ」

太助が答える。

「最初はただ腕っぷしが強い方だけだと思ってましたがね。指示を出し初めたとたんに・・・なんというか・・・信頼できる雰囲気みたいなのを感じたんです」

「その通りだ、ダンナ」

弥吉が続ける。

「理屈云々よりもなにかこう・・・直感で信頼しちまったんだよな」


ほう。これは件のスキルではないのか?

〈仰る通りでございます。固有スキル王のカリスマによるものです〉


これはありがたい。人心掌握は面倒だったからな。これからも大いに活用していこう。


「鉄山様、三郎は驚くほどの速度で治ってますぜ。そのうちお礼に来たいって言ってます」


「不要だと伝えてくれ。今日は疲れた。早めに寝ることにしよう」


「そうですかい・・・重ねて礼をいわせてもらいやす。三郎を、友をありがとうございやした」




思ったよりずっとスキルは有用だ。

他にも使い道は山ほど有るだろう。

情報は最強の兵器よりも強力だということは経験済み。

これから検証を重ねていかねばな・・・










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