初戦闘 【屍】
ひたすらに茂みをかき分けて進む。
まずは一番近い村にナビを設定したのだ。
いくら精強な軍を持とうとも兵站を怠れば一般人にも勝てぬ弱兵の集に成り下がる。
とどのつまり腹が減っては戦はできぬ、ということだな。
何か集落みたいなところで食べ物をもらえれば・・・・・誰の声だ?
男の悲鳴 ぬかるみを走る音 そして聞きなれない不快な声・・のような音。
とりあえず何が起こっているかたしかめるか。大体予想はつくけどな。
高速で駆け付けると農民と思われる男が崖を背にしてくわで戦っていた。
問題はその相手だ。
体中が腐っていて死んでいそうなのに勢いよく農民に襲い掛かっている。あっ目玉がおちた。
昔孫とやったドラ○エに出てきたく○った死体を現実に持ってきたらあんな感じだろうか。
おっとそんなに悠長にはしていられないみたいだ。
あのゾンビみたいなのはなんだ。
〈5級妖怪【屍】です。妖気が満ちた場所で人が息絶えると屍となります〉
うーむ元人間か。まあ仕方なし。生きている人の方が大事だ。やるか。
くわを奪われなすすべを失った農民に屍が襲い掛かるその時ーー
鉄山は横からとびかかり思い切り屍の側頭部を殴りつける。
平衡感覚を失った屍の首と手首をつかむと勢いに任せて大外刈りを繰り出し、地面に頭をたたきつけた。
そこで屍は絶命したらしい。ゆっくりと体が透けていったと思ったら完全にその場から消え去ってしまった。
【鉄山は2のスキルポイントを獲得した】
【スキル強貪欲によりスキル毒耐性を獲得した】
やはり体が思うとおりに動いてくれるのは最高に気持ちがいいな。
年老いて初めて若さの価値に気が付く老人も多いだろうに・・・うん?
先ほど助けた農民がよくわからない言葉を発しながら頭を下げている。どうやら感謝しているらしい。
聞けば聞くほどわからない言葉に困惑していると付喪神が言語翻訳のスキル獲得を提案してきた。
屍を倒した時の2ポイントを消費し言語翻訳を習得した。
「何度も言うが、あんたは命の恩人だ!ぜひ礼をさせてくれ!」
話を聞く限り、この農民は目的地の村の住民らしい。目的地なのでついていくことにした。農民の名は太助。農作業を終えて帰宅途中に屍に襲われたらしい。屍はあまり素早くはないので逃げようとしたが偶然沼にはまり追いつかれてしまったという。
「しかしあんたの強さには驚いたよ。下級とはいえ妖怪を素手でやっちまうんだからなぁ」
太助の目が輝いている。しかしあれくらいならばさして脅威でもないような気がするのだが・・・
「ふつう屍がでたら五人くらいの武装した兵士でどっこいどっこいってところなのによ。あいつらああみえてすげぇ力が強いんだぜ?木とかへし折って振り回したりするしな」
なに!?そんなに強かったのかあいつ。だが組み付いたときフニャフニャしてたけどな。
きっと初撃が効いたんだろう。
「おっもう村につくぞ。そしたら飯食わせてやるから待ってな」
それにしても楽しかったな、一瞬だったとはいえ。
直接的な命のやり取りなんて九十九年生きてきて初めて経験した。
前世もよかったっちゃあよかったんだけどな。
俺には狭すぎる平和な世界だった・・・・
九重鉄山
【スキル】
剣術の達人
柔術の達人
商売の達人
謀略の達人
王のカリスマ[固有]
強貪欲[固有]
付喪神
毒耐性
言語翻訳