転生ノ篇
ズキリ、と頭が痛む。
意識がはっきりしないようだ。
・・・い・・・・おい!
ぼんやりとした感覚に言葉が響いた。
『お前は死の間際に人生のやり直しを願ったな。どうしてそんなことを考えたのだ?』
どうやら得体のしれない何かが俺に問いかけてきているらしい。敬語を使われずに他人と話すのはいつぶりだろうか。
『お前の歴史は世界のだれよりも栄光に輝き、十分に満足が行くものだったろうに』
(そうだな・・・確かに満足していた。俺は世界一幸せな男だった)
『では再度聞こう。なぜおまえは人生をやり直したいのだ?』
(我が欲に際限などありはしない。確かに俺は満たされた。だがそれは当時の時代にあった価値観という杯だけに満たしたものだ)
『ほう。では異なる杯にも手を付け、新たに満たすことを希望するのだな?』
(そうだ。俺の能力が最も発揮される場所で活躍し、世界に通用するかを試したい)
『・・・仮にそれが多くの苦難を伴うものであったとしてもか?』
(無論だ。初めから容易な環境では真の意味での満足は得られないだろう)
『お前は才に恵まれているがちとズレた考えを持っているようだな。そのようなところに行かずともこちらは極楽。望むものすべてが手に入る楽園だというのに』
(ふぉっふぉっふぉ。そんなものは生前飽きるほど味わった。元来俺は安定を好まない質でね)
『そこまで言うのならば仕方がない。生前お前が培った経験と技術はスキルとして付与し、戦国の世によみがえらせてやろう』
すきる?なんだかわからないが戦国にタイムスリップできるみたいだな。これはありがたい。
【スキル】
剣術の達人
柔術の達人
商売の達人
謀略の達人
王のカリスマ[固有]
強貪欲[固有]
付喪神
(最後のはなんだ?)
『転生後の世界の勝手がわからぬだろうからな。ナビゲーターのようなものだと思ってくれていい』
(ずいぶんと親切なんだな)
『なに、お前が生まれた時から知っているからな。情も沸くものだ』
おそらく俺はこの方を知っている。九十年以上昔だからはっきりとは思い出せないが。
(感謝する)
『礼は天下を取ったらいいにくるがいい』
(あなたにも届くように天の上まで我が名を上げて魅せよう)
『ははははは。あの時のはなたれ小僧がぬかしよるな』
やはり・・か
(では失礼する)
『あぁ頑張れよ』
齢九十九を超えて萎縮するとはな。相手が神ならば仕方がないか。
こうして俺は新たな世界で目を覚ますこととなる。
『・・・・・・・・・・・・・・・・』
『戦国は戦国。但し正史のものでは無い世界でお前はどこまで通用するかな』