もしもし、起きて。
「うぅ…ん…」
目が覚めて入ってきた景色である時計は2時を指していた。ベットから出て、窓の方を見ると空にある唯一の存在が輝いている。今夜は満月だったんだ。満月は久々に見た気がするなぁ。
「最後に見たのっていつだっけ」
月は凡そ27日で一回転するらしい。起きる時間が人よりおかしい俺は満月を見るのにも一苦労する。まぁ、それ程見たいなんて思って無いが。それでも珍しいものを近くで見たい気持ちは俺にも一通りある訳で。窓に手を掛け、鍵を開けようとすると。
「起きたっ!?起きたのっ!?」
ガタガタっと言う音と共に、ユキが姿を現した。息が上がっているのを見ると、走ってきたのが分かる。ユキが電気を付けると、一気に景色が明るくなった。眩しい。
「ん、起きたよ。おはよう」
「今は夜だけどね」
「そっか。じゃあ、おそようだ」
「うん。おそよう」
そう言い合い、笑い合う。起きて挨拶を交わす、何気ないこの瞬間が幸せで、何より好きだ。
「えっと、朝までには時間あるけど、何か食べたい?作るよ」
「あぁ…ううん、後でで良い。それより月が見たい」
「月?そう言えば、今夜は十五夜って言ってたっけ…」
それでいつもより明るく見えたのかもね、と笑って答えた。正直、最近は満月どころか月すら見てないから、比べる対象が無いのだけど、ユキが言うならそんな気がしてきた。ユキの傍に行った俺は電気をそっと消し、ユキの手を引いて窓に近づいた。
「満月だ…」
「うん。いつも見てるよりずっと大きくて、ずっと綺麗だよ」
月を見ながらユキは俺に語りかけてくる。その視線はゆっくりと俺の方に動いた。
「きっと、一緒に見れたからだね」
「…っ」
満面の笑みを浮かべるユキ。かあっと頬が熱くなる。きっと顔は真っ赤に染まってんだろうな。
だけど、否定する理由なんて無い。
「…そうだな」
暫く、この時間に浸っていたい気分だ。