野球
いきなりだが僕のクラスにはいろいろな美少女がいる。
僕の彼女もうちのクラスの委員長もそうだがかなりの美少女だ。
この学校に入る前まで彼女を持ったことのない僕にとっては毎日が刺激的すぎるのだ。
と言ってもここは性転換した元男の子たちが通う女子校。
とかいう僕もつい先日性転換をしたばかりだ。
つまりさっき言った美少女たちも僕のクラスメートたちもはてまたこの学校に通う全ての女生徒たちは元男の子だ。
普段はそういうことを考えないのだがふと考えてしまうことがある。
僕たちの通う学校は女の子になったばかりの生徒を女子として社会生活できるように全面的にバックアップしている学校だ。
そのために僕たちは女子としての一般常識を日々授業で勉強している。
さて、今回はそんな日々のつながりから僕が気になっている女生徒を1人紹介したいと思う。
その女生徒は九之坪 鞠投さん。
とてもかっこいい人だ。
どのぐらいかっこいいかというと彼女は女生徒たちにモテまくる。
それもファンクラブが出来そうなぐらい。
(実際は出来ていないのだが)
いつもクールに振る舞うその行動は女子も釘付けだ。
僕もそんなかっこいい彼女に少し憧れを持っていた。
何しろ性転換しようとも自分を貫くその考えに共感したからだ。
ある日、そんな彼女に僕が声をかけられた。
「女子校の生活はどう?
慣れた?」
僕を気にかけてくれたのだ。
僕は憧れの彼女に声をかけられたのが嬉しく
「はい、女子校での生活、女の子の体はもう慣れました。
ありがとうございます」
と答えた。
彼女は
「え、何でお礼を言われたのか分からないけど、まぁいいや。
俺も(性転換してから)最初の一年間は苦労したから。
髪の毛を切ってはいけないとか、スカート以外着用禁止とか。
スカートも最初は動きにくくてしょうがない。
本当に面倒くさい。
だから今は寮に帰ったら専らズボンだね。
それに特に髪の毛はうっとうしくてね。
重いし、かさばるし。
だから、一年が過ぎてからバッサリと切っちゃった。
本当は前みたいに坊主にしたかったんだけど周囲に反対されてね。
今の髪型に落ち着いたって訳」
彼女はショートのカワイイ髪型だ。
それにしても坊主って前は何をやっていたのか気になる。
彼女は
「俺は小中と野球一筋にやって来た。
その間、ずっと坊主さ。
髪の毛が邪魔だからね。
これでも俺は凄いんだぜ。
小学校の時、俺は日本代表になった。
それも絶対的なエースとして。
言っておくけどジュニアでの話な。
大人と混じっていた訳じゃないからな。
中学の時もかなり期待されていたんだぜ。
それが中2の夏、急に体が変化したんだ。
俺自身、最初正直戸惑った。
何せいきなり性別が変わったんだぜ。
正直パニクったさ。
それから病院に連れて行かれ今日から女の子として生きていかなければならないと告げられた。
これには俺も目の前が真っ暗になったさ。
そして将来プロ野球選手になるという夢も儚く絶たれた。
でも今は結構割り切っているんだぜ。
女子もなかなか捨てたもんじゃない。
今はプロの女子野球の方から誘われているぐらいだし」
そう笑顔で答えてくれた。
それから彼女と幾度となく話す機会が出来た。
「この学校って凄いんだぜ。
俺のために最新のトレーニング機器を揃えてくれたしこの学校を卒業すればすぐプロになれるって約束してくれたしな」
彼女は嬉しそうに話してくれた。
彼女は特に体育関連の話になると饒舌だ。
体育が本当に好きらしい。
そしてトレーニング馬鹿でもある。
「毎日腕立て100回、腹筋100回、ジョギング10キロ走ってから登校してるよ」
と彼女は平然と答える。
「最初の1年間は運動も禁止だったから本当しんどかったぜ。
だから鈍った体をほぐすためにもトレーニングは欠かせない。
でもやっぱり体力が落ちたのは歴然で昔は今の倍やってから学校に行ってたから」
僕はそれを聞いてあまりの凄さに言葉を失った。
そんな彼女に性転換して一番ショックだったことを聞いてみた。
そうしたら彼女はしばらく黙りこくって恥ずかしそうに話し始めた。
「やっぱり男子と疎遠になったことかな。
メチャクチャ気の合う仲間は一杯いたんだけどこの体になってからは会っていないからな。
それにこの学校は男子との接触は禁止だし、それが一番のショックかな」
僕はふと疑問に思った。
それだけのことをなぜ顔を赤らめて話すのか分からない。
大体、僕も同じ事を思っている。
当たり前のことを恥ずかしそうに語る彼女に違和感を持ったのだ。
僕がそこをツッコむと彼女は開き直ったように
「恥ずかしいという感情は人それぞれだよ。
別にこんなことで恥ずかしがったっていいじゃないか。
まぁ、いいや、本当のことをぶっちゃけるよ。
男子更衣室なんだ」
僕がよく分からないでいると彼女は
「もう男子の裸を間近で見ることが出来ないと思うと寂しくてね。
俺は筋肉フェチだから筋肉隆々の男の子の体が大好きなんだ。
あの体で抱かれたらどうなるだろうって。
言っておくけど俺は女子にはなんの興味も無い。
生まれてこの方男の子が好きなんだ」
僕は突然の告白に驚いた。
でも恋愛対象が男性か女性かは些細なこと。
しかし彼女はそれが恥ずかしいのだ。
僕は彼女の純な姿に笑みがこぼれた。