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儀式

 この学校にもようやく慣れてきた。

女子の中にいる自分が普通に思えてきた。

この女の子の体も慣れてきたと言うことだろうか。


 授業は担任の沖村先生の独壇場。

あらゆる教科を受け持ち、しかも分かりやすい授業をしてくれる。

また、この学校特有の女性科という教科は僕たちが女子としてどういう風に振る舞うべきかと言うところから女性の体の不思議までありとあらゆる女子の不思議を解決してくれる教科だ。

この教科も沖村先生がざっくばらんに授業してくれる。

とても普通の男子には話が出来ないような内容も。

もう既に男子の時に知り得なかった女子の秘密を大分知ることが出来た。


 しかし、体育だけは沖村先生の授業ではない。

沖村先生はかなりの運動音痴らしい。

だから体育の授業は副担任の石橋先生が担当している。

女の先生だけどかなりのイケメンでかなり女性にもてるそうなのだ。

授業の前はうちのクラスの一部の女子たちが浮き足立っている。


 学校の授業はこんなもん、問題は放課後だ。

僕はこの放課後のある時間が未だに慣れないのだ。


 その前に改めて説明しなければならない。

まず、僕らは寮生活であること。

そしてその寮の部屋は基本的に1人1部屋だと言うこと。

そして僕だけ女子になって日が浅いと言うことでルームメイトがいること。


 問題はその僕のルームメイトだ。

ルームメイトの名前は井瀬木いせぎ 花梨かりんさん。

僕のクラスの委員長だ。

みんなは文字通り委員長と呼んでいるが、ルームメイトである僕はかりんちゃんと呼んでいる。

いや、呼ばされているのだ。


 最初は彼女は優しかった。

女の子のイロハも分からない僕に手取り足取り教えてくれる頼もしい(性転換の)先輩だった。

それは一週間が過ぎた時の突然の出来事だった。

いつものように寮に帰宅すると部屋一杯にあるものが埋め尽くされていたのだ。

僕は唖然とし、周りを見渡した。

よく見るとどれも女児用の玩具だった。

僕は委員長に

「なぜこんな所にしかも大量におもちゃがあるの」

と聞いた。

委員長は

「あなたは真の女の子を知らない。

女の子の気持ちを理解するには女の子のおもちゃで遊ぶしかないの」

と訳の分からないロジックを切り出した。

僕が唖然としていると

「このおもちゃは全部あなたのために買ったものなの。

だから、これから帰宅してからのの1時間はこれで遊んでもらいます。

これは強制です」

と委員長は僕を説得した。

僕は委員長のあまりの気迫に納得せざるを得なかった。


 それからというもの大変である。

僕が学校から帰ると女児用玩具で遊ばなければならないという儀式が始まる。

僕はそれがとても苦痛だ。

とにかく女言葉を使わなければならない。

普段は男言葉でも委員長は怒らないがおもちゃで遊んでいる時は男言葉禁止なのだ。

少しでも男言葉が出ると委員長はものすごく怒ってくる。


 おもちゃも多種多様で人形からぬいぐるみ、おままごとセットから魔法少女の衣装やメイクセットのおもちゃまで。

1人で遊ぶには限界があるから委員長も一生懸命に付き合ってくれる。

僕たちは女の子の経験が圧倒的に少ない。

委員長曰くこの遊びを通じて女の子の素養を身につけるのだとか。


 ちなみに委員長はおもちゃ会社の社長のご令嬢?らしくおもちゃは腐るほど有るらしい。

だからお金については心配が無いらしい。


 今日も寮に帰ったら1時間女児用玩具で遊ばなければならない。

非常に憂鬱だ。

部屋に戻ったら委員長が赤ちゃんの人形を持って待っていた。

委員長は

「性転換したとはいえ私たちは子供を産める体です。

あなたもいずれ子供を産む時期がやってくるでしょう。

まぁ、来ないかも知れませんが。

その時になって赤ちゃんに愛情を向けるかどうか。

今日はその訓練だと思ってこの赤ちゃん(のおもちゃ)を世話しなさい。

もちろん親になったつもりで。

あぁ、間違ってもパパですよとは言わないこと。

あなたはこの赤ちゃん(のおもちゃ)のママなんですから」


 そこからが地獄の時間だ。

僕が女らしくないことをするとすぐに怒る。

彼女はスパルタなのだ。

しかし、女言葉というやつはしっくりこない。

でも少しでも手を抜くと彼女はすぐに怒る。

僕は女の子になったつもりで(体は既になっているのだが)必死に女の子を演じた。

そして1時間が過ぎるといつもの優しい委員長に戻っていた。


 委員長は

「あなたはまだ女の子になりきれていない。

まぁ、時間がそうさせてくれるだろうけど。

服だってまだ女装しているという感じでしょう。

日本語の「女装」は男性が女性の格好をすることだけど中国語の「女装」は文字通り女の装い、つまり女性の姿そのものなの。

早く「女装」が日本語から中国語に変わると良いわね」

と僕を励ましてくれた。


 ちなみに彼女は怒っても手を出さない主義。

つまり彼女は口で怒ってくる。

僕はそれがとても怖い。


 まだ、僕は女子として歩み始めたばかりだ。

僕はまだまだ女子のことを知らない。

僕のクラスでは僕が一番の女子の初心者。

委員長は僕のことを思ってスパルタになっているのだと思う。

事実、僕はこの3年で立派な女子にならなければならない。

もちろん自分から願ったことではないけど出来れば今すぐに男に戻りたいけれどそれは叶わない。

だったら今の現状を受け入れ立派な女子になってやろうと思う。



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