デート
ようやく夏休みになり学校に行かずに済むようになった。
僕はどうやら女の子が苦手らしい。
前々から女の子と話すのが苦手だったからか。
性転換してからはどうしても余計に意識してしまう。
委員長曰く
「女子は今では同性なんだから肩肘張らないでコミュニケーションを取れば良いじゃない。
私も含めて何人か同性の友達もいることだし。
今では男の子が異性なんだから」
とよく諭されています。
確かに僕は何人かの女友達が出来た。
(中身は男子だけど)
僕は間口は狭いが入ってしまえば中身は広い。
その娘たちとは何でも話せる仲だと思う。
それにクラスの人たちとはよく話せていると思う。
ただ、本物の女子とはやっぱり話しづらい。
事情を知っていようがいまいが。
やっぱり心の中では異性と感じてしまうから。
それに最近では男子と話す機会がないせいか男子とも話しづらくなってきているようになってきている。
要するに対人恐怖症気味だ。
担任は
「いろんな娘を見てきたから言えるけどそれは女の子の心に近づいている証拠なの。
だから安心して。
立派な女の子になれるから。
男の子だった時のことは遠い日のようになるから」
と言われた。
僕はその事を聞いて余計怖くなったけど。
さて、今日はデートの日。
僕には恋人がいます。
女の子だけど。
元々男子だったから当たり前のような気もする思想では無いような気もする。
その彼女の名前は二子 妹夕ちゃん。
僕と同じ元男子の性転換女子だ。
まゆちゃんは僕と違い心も女の子だと思う。
元の姿は知らないが今はめっちゃ可愛いからそんなことはどうでもいい。
でも1番はしゃいでいるのは同室の委員長だった。
「ゆきは(僕)は女の子経験が少ないんだから私に任せて。
白いブラウスに青いスカート、青のシュシュでポニーテールなんてどう。
普段、髪をいじらないんだからこういうときこそアレンジしなきゃね。
あ、そうだ。
女の子らしく普段着ない赤いスカートはいてみても良いかしら。
いつも青い服ばかりなんだから。
それに着るのが簡単なワンピばかり。
そうだ、同じワンピでもピンクや黄色、そして花柄も似合うわね。
普段はカワイイの着ないから」
まるで僕が師匠の着せ替え人形みたいになっていた。
女の子っぽい服装は僕は苦手なので僕は一番最初に提示された服装を選んだ。
待ち合わせ場所には僕が一番先に着いた。
僕の彼女であるまゆはその5分後に着た。
計算外だったのは僕たちのデートに委員長まで付いてきたことだ。
委員長は
「あなたたち、見た目が小学生の姉妹にしか見えないから私が付いてきてあげる。
保護者のお姉さんとして。
そしてゆきはがちゃんと女の子が出来るかどうか。
さぁ、2人とも頑張ってね」
デートの気分で来たのに部外者が来るとなんか気分が萎える。
そんな気分をないがしろにして僕たちのデートは始まった。
まずは動植物園だ。
今、話題のニシゴリラをまず見に行った。
テレビで騒がれているイケメンゴリラがいるらしい。
僕たちはそのゴリラの迫力に興奮した。
イケメンかどうかは分からなかったけど。
元来このメンバーの3人の恋愛対象はいずれも女の子だ。
委員長は二次元でなら男子も恋愛対象らしいが現実世界では女の子が好き。
だからイケメンと言われてもお互いにピンとこない。
次は動物園の定番、ゾウだ。
そして次はキリンと動物園のド定番を見て回った。
委員長は
「あなたたち女の子らしい動物を見て回りなさいよ。
さっきから男の子っぽい動物ばかり」
と怒られてしまった。
でも、そこは僕の彼女が
「女の子っぽい動物って何よ。
リスとかウサギとか?
そんなの偏見よ。
何を見たって良いじゃない」
そう反論してくれた。
その後ちゃんと小動物も見たけど。
僕の彼女と委員長がまるで女の子みたいに
「カワイイ」
を連呼。
(実際に見た目女の子だけど)
僕はまだその域には達していない。
そんな2人を冷めた目で見ていた。
その後植物園に行った。
女子って本当に花が好きだよね。
2人はカワイイ花に見入っていた。
僕は花にはあまり興味が無い。
でも興味があるのもあった。
それは食虫植物だ。
ちょうど虫が食われる瞬間に見入っていた。
委員長は
「よくあんなグロいものを見れるわね。
ちっとも女の子らしくない」
と呆れていたが僕の彼女が
「そんなの個人の勝手でしょう。
それに女の子に染まっていないゆきはだから好きなの。
勝手に染めないで」
と反論してくれた。
それが少し嬉しくもあった。
午後は隣接する水族館に行った。
魚たちや深海魚、今流行っているチンアナゴなんかも見た。
僕のメンバーの女子たちがいろんな物を見る度にカワイイを連呼。
正直女子のカワイイが分かりません。
とりあえず同意をしておいたけど。
それにしてもペンギンの行進は可愛かった。
イルカやシャチの芸も凄かったし。
カピバラも可愛かった。
チンアナゴは何処が可愛いのか分からなかったけど。
とにかく今日はとても楽しい1日でした。
小姑みたいな委員長がいなければもっと最高だったけど。
でも一応フォローしておくと今回のお金はみんな委員長持ち。
もちろん僕の服も。
だから委員長には強く言えません。
それに委員長は僕を一人前の女子にしたいみたいだし。
明日からは僕は委員長の着せ替え人形です。
何せこの日のために服を一杯買ったのだとか
僕はあまり女の子っぽい服を買いません。
だからイメチェンと称して僕は委員長の着せ替え人形になります。
委員長には今回のことでよくしてもらったのでしばらく逆らえません。
しばらくは覚悟します。
それも夏休みの補習が始まるまでの辛抱です。
補習と言っても成績が悪い訳ではありません。
僕が女の子になるための補習。
他の生徒たちと経験に開きがあるため。
個人レッスンだそうです。
とにかく僕に心に安らぎが訪れる時がしばらくなさそうです。




