女風呂
やっと合同授業の一週間が終わった。
果てしなく激しい一週間だった。
放課(休み時間)ごとに髪型を変えられるしいろんな人に話しかけられる。
それも代わる代わるに人がやってくる。
落ち着いたのは3日目辺りだろうか。
僕の周りの(本物の)女子も固定されてきた。
その女の子たちを少し紹介したいと思う。
兎谷 満月さん
カワイイものが大好きでファンシーなものやロリータについての雑誌をいつも持ち歩いている。
それに暇さえあればそれを読み込んでいる。
たまに
「ねぇ、ねぇ、これ可愛くない?」
と聞いてくるので困っている。
僕はまだ女の子のカワイイを理解していない。
時々、答えに窮するものを見せてくることがある。
まだ、頭が男である僕には「カワイイ」を理解できない。
千代本 藍美さん
普段は物静かな読書女子。
僕が何を呼んでいるのかを聞いてみたらバリバリのBL小説だった。
男同士の恋愛が好きなのだそう。
メチャクチャ興奮して僕の性転換前の話を聞こうとする気がある。
ただ、僕は普通に女の子が好きだった男の子だと知ると途端に興味が無くなった。
そして僕が性転換女子と付き合っているというとかなり興味を持ってきた。
彼女のフィルターの中では僕たちをBLに結びつけようとしているみたい。
精神的BLとも。
正直、彼女といると疲れるような気が。
尾張 戦季さん。
彼女はいわゆる中二病。
本人曰く「せんきと書いてゆき」、かなり気に入っているようだ。
自称性転換女子。
僕らの学校から来たスパイとも言っていた。
僕にその事を言ってきた時には周りからそんな話は聞いたことが無いと言われていた。
生まれた時から女の子だとも。
そう言われたら彼女は前世は男だったと言い張る。
前世の事なんて誰も分からない。
そんなこと言ったら確率的に半分は(前世は)男になる。
言っていることは無茶苦茶だなと思っている。
野崎 菫恋さん。
この学校に来た初日、僕に告白してきた女性だ。
いわゆる同性愛者。
女の子しか好きになったことがないそう。
初めて僕を見ての一目惚れだそう。
僕に恋人がいると分かるとあっさりと引いてくれた。
正直、拍子抜けだった。
その後、友達になったのだがこのことはいろいろと気が合う。
男同士でしゃべっているみたいだ。
そういえば、こんな感覚メチャクチャ久しぶりだ。
正直、この人が僕らの学校から女子校に来たスパイだと言っても違和感はない。
そのくらい男の子脳だと思う。
さて、合同授業で一番きつかったのはみんなで入る女風呂。
もちろん、生まれて初めての経験だ。
僕は初めは抵抗したがこういうときの女の子の団結力は凄い。
言いくるめられたというか、凄い圧というか、とにかく入らざるを得なくなった。
もちろん、委員長とは一緒に入っていたのだがこの体になって初めての大型浴場。
正直、どうやって入って良いのか分からない。
目のやり場にも困っていた。
でも、3日もすると不思議なものでだんだん慣れてきた。
そして他の女の子の体にも興味が出てきた。(イヤらしい意味ではなく)
何せ僕たちは即席の女の子。
やっぱり、他の女の子と違うのだろうか。
胸や臀部、肌艶や髪質、気がつけばじーっと見ているのだ。
僕の彼女からは
「何、じーっと見ているのよ。
私たちと所詮付いているものは一緒なんだから。
それともやっと女になった実感でも付いた。
これからはこれが私たちの日常なんだからよく噛みしめなさい」
と忠告された。
そしてその様子に興奮している千代本さんがすぐそばにいた。
彼女の中では僕たちは男同士に見えるらしい。
彼女はそんな僕らを見て妄想を巡らすのだ。
そんな彼女の様子にも僕たちは慣れてしまっていた。
それにしても女の子の体は千差万別。
胸が大きい人から小さい人までいろいろだ。
僕はまだ、胸が膨らんでいないいわば幼児体型。
いつ僕の胸が膨らむのかはまだ分からない。
果たして膨らむのだろうか。
膨らんできたらまた一つ現実を突きつけられる。
男に戻れないことを。
僕はそれに耐えられるのだろうか。
そう思いながら気がつけば、女の子に囲まれていた。
お風呂場でしかも裸の女の子たちに。
さすがにそれはきつい。
まだ頭は男の子なのだ。
間近での女性の裸は刺激的すぎる。
僕が赤面していると女の子たちは「カワイイ」と言いさらに寄ってきた。
僕が自分の彼女に目をやると諦めなさいとあきれ顔。
どうやらこれも女子になった時の洗礼のようだ。
一通りの騒ぎが尾張帰ってくると彼女から一言。
「私以外の女の体で興奮するとぶっ殺すからね」
正直、無茶苦茶だなと思った。
この体になる前は女の子の体なんて見たこともない純情な思春期男子だった。
いきなりのこの状況は正直やばい。
僕だって興奮しないようにしているけれどやっぱりこの状況は無理だろう。
そう思いながら彼女の命令に従った。
お風呂から上がったらみんなで教室でお泊まり。
ガールズトークは結構夜深くまで続いた。
そしてその大半は僕と彼女のなれそめに費やされた。
それにしても女の子は恋バナが好きだ。
僕はこの日も疲れていたのかこの日も寝落ちしてしまった。
そして、僕は次の日女の子に囲まれた状態で起きる。
そしてその状況に慌てふためくのだ。
その様子を見て回りに笑われる。
合同授業の一週間はそんなイジラレ1週間。
そのことが僕が女性として周りに認められてきたんだなと思える貴重な体験となった。
でも、この合同授業、2ヶ月に1回なんだよな。
正直、年1でいいくらい疲れた。
次は7月。
もう少し女性として成長していると思う。
今度は対等な立場で会いたいなと思いつつ、内容の濃かった一週間を懐かしく思い、新しく出来た友達ともしばしの別れを告げた。
今の感想はとにかく疲れました。
激動の1週間でした。