5話
闘気を覚えて3年がたった。
相変わらず親父と訓練の毎日だったが、俺はやる気が元々ない為、型を未だにやらされていたのだった。
……………べ、別に才能が無いから出来てないわけじゃ無いんだからねっ。
「クライスト!そんなものは突きでは無い!3年も何をやっていた!」
「訓練」
「違う!お前のはただの踊りだ!エリスを見ろ!」
と言われて最愛の妹を見る。
エリスも俺が訓練し始めた歳と同じ、5歳になった。
そんな妹は最近は村のお姫様みたいな扱いになっているらしい。
俺も訓練しないで遊びたい。
だが、かわいい妹は今でも俺と一緒に訓練してくれている。たまにだけど。
「何、兄さん。集中出来ないからこっち見ないで」
「ごめんね?エリスが可愛くてつい」
「兄さんやめて。気持ち悪い」
あちゃー。エリスちゃんおこだわ。
天才エリスちゃんは最近お兄ちゃんに反抗期らしい。
やっぱり天才は成長するのも早いのかな?
「クライスト!何をぼさっとしている!早く続きをやれ!」
いや見ろって言ったじゃん。お兄ちゃんショック。
そんなこんなでだらだら訓練しては怒られ、エリスを見ては怒られを繰り返した。
つかれたー。
帰っていつも通りに過ごし、習慣化した母さんとの作戦会議…………だったのだが、最近別の習慣が出来た。強制です。
「クライスト行くぞ」
「今日はお腹痛い無理」
「クーちゃん大丈夫?またおまじないしよっか?」
いや母さんの魔術でしょ。そんなあやふやなのは怖いからやめてね?
「嘘だから大丈夫。でもお腹痛いから行かない」
「アイリス、行ってくる。エリスを頼む」
「はい、行ってらっしゃい。クーちゃんも気をつけてね?」
ですよねー。
最近の習慣(強制)とは親父と村の見回りだ。残念。
この見回りというのが想像以上にしんどかった。
その理由が、
「クライスト止まれ」
「3?」
「いや4だ。上で気配を消しているだろ」
魔物だ。親父曰く毎日出てくるらしい。
勝手な想像でテキトーに村の周りを回ってたまに来る魔物をぶっ飛ばしてるだけだと思っていた。
ていうか小声で喋れんならいつもそうしろよ。って言うと怒られた。
「クライストいつも通りだ。行け」
「あいあい。んじゃ行きまっせ」
そう言って闘気を全身に巡らせる。大体生命力の3割ほどを使うと楽に戦える。本当はもっと節約した方が良いんだけど。
親父の言ういつも通り正面から魔物に突っ込む。
今回は狼のような姿をした魔物だ。名前はウルフらしい。まんまだ。
見える距離まで近づいた時、左右からウルフが襲ってきた。右のウルフが飛びかかり、左のウルフがそのまま直進してくる。コンビネーション上手いな。
もちろん食われたく無いので加速して前に出てかわしつつ、正面で待ち構えてるウルフ目掛けて走る。
すると、上で気配を消して待ってたもう1匹が俺目掛けて飛びかかる。
真っ正面から来てくれて助かる。急ブレーキをかけて止まり、右足で飛びかかるウルフの横っ腹に蹴りを叩き込む。
それと同時に正面のウルフが飛びかかって来た。
蹴りの勢いのまま回転しつつ体をかがめる。
ウルフが俺の頭上を通り過ぎる間際に、裏拳でウルフの胸にある魔石を叩き割る。
魔石とは魔物の心臓みたいなもんで、壊すと倒せる。
そのまま立ち上がり後ろを確認する。
「こっちは大丈夫だ。最後の1匹を仕留めてこい」
との事で、蹴り飛ばしたウルフをチェック。
蹴りを入れた腹が凹んで生き絶えていた。任務完了。
ついでに魔石を抜き取る。これが魔術士の研究だか実験だかに使うらしい。つまり売れます。
「父さん、こっちも大丈夫だった」
「クライスト。油断はしていないようだが、魔物が死んでいるのを確認するまで注意を怠るな」
「了解。んで魔石ってどうした?」
「砕いた」
もったいないなー。
こんな感じで最近は親父の手伝いをさせられてる。
毎日夜明けまでが目安になってるらしいが、めっちゃしんどい。
睡眠時間は毎日3時間程度だ。俺まだまだ成長期だよ?もうやめよ?
だが怖いのは、寝て起きるとすっかり元気だ。
闘士は生命力が人より多いから回復も人一倍なんだと。
初めて手伝わされた時は本気で死にかけた。
今ではいつも通りの、俺が前に出て親父がフォローの作戦と言えない作戦を行なったのだが、ウルフに首を噛まれてしまったのだ。
今でもよく生きてたなと自画自賛。
それ以降はかなり真面目に手伝ってます。
「クライスト、夜明けだ。帰るぞ」
「あいあいさー」
やっとこ終わった。今日もちょいちょい魔物に出くわした。
さっきでたウルフ、猿みたいな魔物、熊みたいな魔物だ。
熊はベアー、猿はウッキーという名前だ。バカっぽい。
はい翌朝。
「クライスト!そんなものは蹴りではない!エリスを見ろ!」
昨日は何も言わなかったじゃん。許してよ。
「兄さん見ないで。イライラする」
エリスも昨日と違くない?お兄ちゃん泣いちゃう。
「クライスト!いつまでよそ見をしている!さっさと続けろ!」
俺は親父ほど元気じゃないからね?勘弁して。