3話
二度目のおはようございます。
親父に寝かしつけられた後、すぐに目を覚まし家族と朝食。
「おにいちゃん、おいしいね!」
超かわいい。おかげで頭痛(物理)が癒される。
いややっぱ痛い。
「うん。お母さんのごは「ごちそうさま!!クライスト!まだ食ってるのか早くしろ!今日も訓練だ!」
うるさいよ。早いよ。一家団らんしようよ。
「ごめ「先に待ってるぞ!早く来い!」あ、はい」
少しは聞いて?
そんなこんなで飯を食い、時間稼ぎに食器を片付け洗おうとし、
「クーちゃんお手伝いしてくれるの?ありがとう。でも、おとうさん待ってるから、おかあさんにまかせてね?」
とのこと。だかここは引けない!
「ぼく、おかあさんのおてつだいしたいの。だめ?」
かわいい息子のお願いは優しい母さんには断れまい。
「うーん。でも、おとうさんに怒られちゃうよ?」
「え?なんで?」
「おかあさんの邪魔しちゃだめだよーって」
マジかよ………………ありえるなぁ
「母さん助けて」
「うーん。ごめんね?」
やっぱだめかー。
「クーちゃん!がんばって!」
それが嫌なんだよなぁ………
「遅いぞ!何をしていた!さっさと始めるぞ!」
いや聞いといて聞く気無いんかい。
「おにいちゃんがんばれー!」
愛する妹よ。おにいちゃんにはできないよ。
というわけで訓練開始。だが体を動かしたりはしない。
その理由が、
「クライスト!さっさと闘気を纏え!」
これだ。
「いやだから闘気ってどうやれば出るんだよ」
「こうだ!まだ分からんのか!」
いやわかんねぇよ。
俺が生まれ変わった世界は、とってもふぁんたじーな世界だった。
この世界には魔法がある。魔術というのもあるらしいが違いがわからん。
そして、バカ親父が言っていた闘気。
あの親父が言うことだから気合かなんかか。なんて思っていたが違った。
この訓練は、俺が5歳になった日から強制的にやらされているのだが、初日に親父に訓練内容について聞いたところ。
「闘気を自在に操り魔物を仕留めるのだ!」
とのこと。闘気ってなに?と聞くと、
「これだ!」といってポーズをとっている。
「どれ?」
「今、体に纏っているものだ!」
「……………どれ?」
嫌々ながら親父に詳しく聞いてみた。これがかなり面倒くさかった。
闘気とは己の内に秘めたる力であり、これを操ればどんな強い敵が現れても、恐れることはない!
とのこと。
アンサーが求めていたものとちょい違う。
「闘気って誰でも使えんの?」
「当たり前だ!そんなことも知らんのか!アホたれめ!」
俺5歳の箱入り息子だよ?知らんでしょ。
「んじゃ闘気って何できんの?」
「敵を倒せる!」
でしょうね。そうじゃねぇよ。
埒があかないから実演してもらった。
「クライスト!よく見てろ!」
といってその辺の木にパンチした。すると、ものすごい音をさせて拳が肘の手前くらいまで突き刺さった。
「ぬ!倒せなかったか!まぁいい!クライスト!わかったか!」
親父に逆らうと死ぬかもしれないことだけはわかった。
その日以降何度となく闘気を出そうとしたがさっぱり出来ない。
親父に聞いても、こうだ!見てわかるだろ!くらいしか言わない。闘気は鍛えれば感じたり、見ることも出来るらしいが全然わからん。
今日も今日とてやらされているが進歩なし。
「クライスト!さっさと闘気を纏え!」
いや急かされても出ないよ。一発芸と一緒。
そもそも原理がわかんねぇからやりようねぇんだよな。
なんて踏ん張って出す振りをしていると、離れたところで見てたエリスが小走りでこっち来た。
マジ天使。
「おにいちゃんおにいちゃん」
かわいい。
「どしたんエリス。おにいちゃんと遊びたいの?」
「ううん。あそびたいけどちがうの。あのね?こうだよ」
ん?こう?
「こうってなにが?」
「とうきってね?こうだよ?」
え?ちょっと待って?出来んの?出来てんの?
「すごいぞエリス!!さすが俺たちの娘だ!!!」
マジかよ。おにいちゃんショック。
この日も闘気習得ならず。というか途中から親父がエリスに夢中になりなぁなぁで終わった。
おにいちゃんさみしい。
帰ってすぐに晩飯を食い、エリスと遊んだり、風呂に一緒に入ったり、昔話をしてあげたりして就寝。ちなみに桃太郎。
…………眠れん。
水でも飲もうと台所に行こうとすると、
「あれ?クーちゃん起きてたの?」
と居間で編み物らしきことをしていた母さんに会った。
「クーちゃんどうかしたの?お腹すいたの?」
年がら年中腹ペコじゃないよ?
「いんや。なんか目が冴えた?のかな」
「もしかして訓練のことで困ってる?」
「困ってるけど違うよ。…………腹減ったかも」
別に図星だから話逸らしたわけじゃないよ?お腹空いただけだよ?
「ふふ、そっか。うーん、すぐ食べられるのはパン位だけどいい?」
「うん。ありがとー」
やっぱ母さん最高。親父には勿体無い。
「はいどーぞー」
と言ってパンとミルクを持って来てくれた。
ありがたやー
「いただきます。って今更だけどいいの?」
「え?クーちゃん悪いことしたの?」
母さんにとっては夜更かしも夜食も大したことでは無かったらしい。さすがだ。
「ところでクーちゃん。訓練で困ったことって何?」
やっぱ気になったか。てか親父に聞いてないのか?
「親父が言ってたと思うけど、俺闘気出せないんだ。そもそも闘気が何かもよくわかんない」
その辺の木をぶち抜ける様になるのはわかった。
「そっかそっか。えっとね。闘気ていうのは、闘うための力なの」
でしょうね。それ親父に一万回くらい聞いた。
「それでね?闘気っていうのは、元々はね、生きるための力、生命力っていうのを変化させてるものなの」
なぬ?初めて聞いたんですけど。
「生命力って何?そこんとこ詳しく」
「えっとね。生命力っていうのは、この世界にいる生き物ぜーんぶが持っているもので」
ふむふむ
「その生き物の体を大きくしたり、丈夫にしたりする力なの」
「つまり成長する為の力?」
「他にもあるよ。いたいのを治してくれたり、お熱が出た時にも元気にする為にがんばってくれるんだよ」
なんか人体の神秘みたいな話に聞こえて来た。
「そうなんだ。ところでどうやってその生命力さんを闘気に変えんの?」
ここ重要。
「えっとね。こう!」
いや結局それかよ!みんなそれじゃん。てか母さんも出来んのかよ。
「全然わからん」
「あれ?………うーん。」
ありゃ。考え込んじゃった。なんかごめんね?
「クーちゃん。生命力はわかる?」
「え?まぁさっきの説明でなんとなく」
「そっかそっか。やっぱりクーちゃんは賢いね。
でもね、そういう意味じゃなくてね。こう………体の中にね、えっと………力がある!……みたいな?」
すげぇふわふわしててよくわからん。
「いや全然」
「そっか。えっとね、あ、動かないでねー」
と言って俺の胸に手を当てて集中してる。お医者さんごっこ?
なんて思ってると、
「クーちゃんいくよー?」
「へ?何?…………うぉ!!何!?」
急に母さんが当てている手から熱いなんかが流れ込んでくる感覚がした。怖いんですけど。
「クーちゃん今のわかった?」
「何をしていたのかがわからん」
母さんもたまに説明無しでやらかす事あるんだよな。親父のマネ、ダメ絶対。
「今ね、クーちゃんに生命力を送ったんだよ。来たのわかった?」
今のが生命力?
え?何?生命力って体の働きとかじゃなくて、別個のものがあんの?
「なんか来たのはわかったよ。これがそうなの?」
「そうそう。そしたら、今のと同じ感じのが体の中にあるのってわかる?」
そう言われて自分の体にあるらしき生命力を探ってみる。
「うぉ!わかった!」
やべ。つい声出ちゃった。恥ずかしい。
「おー!すごいすごい!さすがクーちゃん。賢いねー」
頭の良し悪し関係あんの?
「そしたらね。その生命力を闘うーって思いながら変化させるの」
またすげぇふわふわさせたな。
「闘気も同じように人に流せないの?その方がわかりやすくない?」
「えっとね。出来るには出来るんだけどね、闘気だとねいたいいたいしちゃうんだ」
ちょいちょい子供っぽくしなくていいよ?大丈夫だよ?
「闘気は痛いんだ。なんで?」
「うーん。…………えっとね、闘気はね、えっと……………うーん……………ちょっとわかりにくいかもだけどいい?」
あれ?めずらしい。いつもこんな風に聞いてこないのに。
「どうぞどうぞ」
「はい。えっとね、闘気っていうのは元々魔物やそれ以外の外敵と闘うために考えられたものなんだ」
おー。レアな母さんだ。ふわふわしてない。っと気になることは聞かんとな。
「それ以外の敵って何?」
「いい質問です。その敵とはズバリ!天界の神様や天使、魔界の悪魔や魔神、人界の獣人族や魔族と言われています」
………………………スケールでけぇよ。
「敵多すぎじゃん。闘気ってそんな凄そうなのと闘える力なの?」
「その質問の答えは、残念ながらハズレ。人族は他の種族に比べ、身体能力、精神力、魔力、生命力、全て劣っている種族なのです」
まぁそんな感じするよな。
「なので闘気を使ったからといって、対等に闘えるような人はほんの一握りだけ」
いるんかい。化け物じゃん。
「まぁ、他の種族との戦争はとても昔の話なので、今では魔物から身を守る為の自衛の力として使われるのが一般的です。ここまでは大丈夫?」
「オッケーでーす」
「オッケー?大丈夫ってこと?」
たまに通じないんだよなぁ………ちょっと萎えた。
「そう。大丈夫。続きをお願いします。アイリス先生。」
「先生?うふふ、それではクーちゃんくん。話を戻しますね?」
変なスイッチ入った?あとその呼び方やめてね?
「はい先生」
「はい。それで闘気というのは、闘うため、つまり、相手を攻撃したり、身を守るために編み出されたものなのです」
「ふむふむ」そこはわかる。
「そのため、生命力の本来の働きが変化してしまうことになります。その結果、闘気を作り出した本人以外には攻撃的になり、生命力や魔力と違い、他人に分け与えようとすると相手を傷つけてしまうのです。オッケーですか?」
早速使ってきたよ。母さんすげぇ。色々と。
「オッケーです。…………話はわかったけど結局闘気ってどうやって作るかわかんなくね?」
「うーん、そうだよね。でもクーちゃんなら出来るよ。だって今のお話オッケーって言ってたもの」
それとこれとって一緒なん?
「イメージすれば出来るってこと?」
「イメージ?」
そこかい
「頭の中でこんな感じ、あんな感じって考えること?みたいな」
「多分そう!クーちゃんなら出来るよ!イメージイメージ!」
母さんすぐ変なこと真似すんなぁ。不安だよ。
というわけで早速イメージ。闘う感じってのがイマイチだけど喧嘩とか格闘技をモチーフにして…………………
「どう?出来そう?」
「ちょい待って。集中してるから」
前世を思い出して……………こう……………
「あ、そうだ。いっぱいお話したからちょっとおやすみしよ?お腹空いてない?おかわりいる?」
「いやだからちょっと待って。集中してるからね?」
もうちょい………こんな感じか?…………
「あ、えっと、ごめんね。………それじゃ応援するね?がんばれがんばれクーちゃん。出来るよ出来るよクーちゃん」
もうちょい………もうちょい……………
「クーちゃんがんばれー。クーちゃんならできるよー。クーちゃんオッケー」
いやうるせぇよ!小声とか関係ないし!あとなんでそこでオッケー出んだよ!
「母さん」
「クーちゃん?どうしたの?」
「今日もう疲れちゃったから寝るね?」
もうだめだ。集中出来ん。
「そっか。ごめんね。おかあさんがいっぱいお話しちゃったから………」
「ううん、それは全然。むしろ嬉しかったよ。母さんと沢山話せて」
おかげで闘気が何かは大体わかったし。
「そっかそっか。おかあさんも嬉しかったよ。ありがとう、クーちゃん。それじゃおやすみなさい」
そう言っていつも通りデコにキスをして、食器を片付けにいった。
母さん気ぃ抜けるといつも通りだなぁ。
とりあえず明日に備えて寝る。
んで、出来れば闘気が出せるようにしてぇな。
もう親父にごちゃごちゃ言われたくないかんな。