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楽して生きたい拳闘士  作者: 猫背
第1章
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2話

俺は死んだ?らしい


いつも通り朝起きて学校に行き、いつも通り寝ながら授業を受けて、いつも通り飯食いながら数少ない友達とだらだら喋り、いつも通り学校が終わるとすぐ帰る。


帰ってからもいつも通り。

だらだらテレビを見たり、妹にちょっかいかけたり、親父や兄ちゃん達としょうもない話をしたり、母さんと一緒に家事をする。


いつもと変わらない一日。

明日もまた変わらない一日になると思いつつ、いつも通りの時間に寝た。


目が覚めてまたいつも通り母さんと飯の準備をしようと起き上がろうとし、気がついた。


なんかおかしくね?

そう思って周りを見ようと体を起こそうとした。

………起きれなくね?


どうにか動こうとしていると何とか寝返りすることは出来た。

………ここどこだよ。


とりあえず見える範囲を確認してみた。

………全然見覚えないんですが。


どこをどう見ても自分の家の中には見えん。

まさか誘拐でもされたか?とも考えたがそんなくだらない考えはすぐに消えた。


そもそも体が拘束されてはいないと視界に入る手元を見てそう思った。

………ん?この手誰の手?

見てから気づいた。どう見ても自分の手には見えない小さい手。


似たような手を見たことがある。それは………いとこの産まれたばかりの赤ん坊のような………

赤ん坊のよう………な…………ん?


そんなまさか……もしかして……と思いながらも手を動かして見た。


するとどう見ても自分のではない小さな手がゆっくり動いた。

そして確認するように何度も握ったり開いたりを繰り返し……………………あーれー?


動いてる。自分の動かそうと思った通りに動いてる。なんで?


一旦落ち着こう。考えをまとめよう。これはリアルな夢。それしかない。せや!それやで!


なんて考えているとふと音が聞こえてきた。

これは足音だ。つまり人。人だ!


自分の訳のわからない状況を確認出来るかも知れない。そうも思って呼びかけた。

「あー!あぅー!」…………あ?


声は出た。言葉が出ない。なんで?

混乱していると足音が近づいてきた。


「クーちゃん起きたの?お腹すいたの?お漏らししちゃった?」

………………え?


そこで見たのは家族にも知り合いでもない謎の美人さん。


………どっかで見たな………どこだ?

思い出そうと頭を回転させていると、


「さみしくなっちゃった?ごめんねー。ほーらよしよし」


…………抱っこされてね?俺高校生だよ?


気づいた。というよりそうだと思いたくなかった。


俺は赤ん坊になってた。ショック。

しかも母親だと思われる人物を見ると、どう見ても日本人に見えない。


そもそも何でこうなった?いつも通りの生活をしていただけのはず………

最後はどうした?……………いつも通りの時間に寝た。


その時、ふと気づいた。

夢で見た人だ。

目の前の母親らしき人は夢で見たことに気づいた。


………ダメだ。訳わからん。一旦寝よう。

それに俺をあやそうとしているのか母親らしき人が体をガンガン揺さぶってくる。

いや怖いよ。酔いそう。


とりあえず眠たいアピールをしようと目を閉じた。

「クーちゃんまた寝ちゃうの?」

寝るよ。かまってちゃんかよ。普通赤ちゃんは寝てるっしょ……………多分。


「うーん。そっか。おやすみクーちゃん。遊びたくなったらお母さん近くにいるから呼んでね?すぐ来るからね?お腹すいた時もだよ?おもらししちゃった時もだからね?」

いやうるさいよ。寝かせてよ。というかそんなこと言っても赤ちゃんわからんしょ。


「それじゃおやすみ。クーちゃん」

そう言ってデコにキスしてベビーベッド?に俺を下ろして毛布?みたいな感触のものを掛けてどこかに歩いて行った。

近くにいねぇじゃん。


その後も毎日似たような感じで過ごし状況を自分なりに調べてみた。


俺はクライストという名前らしい。違和感すげぇ。

家族は両親健在で、兄弟はいないようだ。

父親はクラースって名前らしい。


父親はものすごくめんどくさい人だった。

第一にとにかくうるさい。声が常にでかい。動きもうるさい。

第二に話を聞かないみたいだ。いや、聞く気ねぇのか?

第三に……残念ながらバカだ。それもかなり。

何をするにも気合で何とかなると思ってるようだ。


母親は正反対の様な人みたいだ。

名前はアイリスで超べっぴん。

うるさい父親と話している時も、俺を構っている時も常にニコニコしている人だ。


少し残念なのがのんびりしすぎなところだ。

俺が生まれてすぐくらいの頃に、俺を連れて歩かず出かけることが何度かあったらしい。

最初は優しい感じだけど、本当は子供なんかどうでもいいと思ってんのか?なんて考えてた。

実際は違ったが想像よりぶっ飛んでた。


何故なら本人曰く、

「クーちゃんはいい子だから、お留守番もちゃんとしてくれるんですよ〜。」

と近所の人に言って自慢していたらしい。

そんなアホな。


その自慢以降は近所の人がよく俺の事を気にしてくれる様になり、常に母さんか近所の人が側にいてくれる様になった。…………親父はうるさくてすぐ追っ払われた。


俺が3歳になる頃、妹が生まれた。

天使が舞い降りた。そう思った。

ところが、少し困った事になった。


妹は天才らしい。


俺は母さんの妊娠が分かるまでものすごくだらだら過ごしていた。


妹の事が発覚するまで、歩くどころかはいはいもあまりせず、喋る時もだいたいテキトーにあーとか、うーとか、えへへなど会話なんかしようとしなかった。


……………アホの子と思われていたのは悲しい過去だ。


ところが母さんが身重になり、当然のごとく問題が出てきた。

実はそれまで俺はまだ誰かに面倒を見てもらっていた。

アホの子だからね。

そのせいで、周りにたくさん助けてもらう事になった。


周りの助けがあり、おかげさまで無事妹が産まれた。

それからだ。妹はすごかった。


妹、エリスは1歳になる頃には3つ上の兄である俺より賢かった。


喋るのはもちろん、歩くし、読み書きも覚え、なんと魔術まで使ってみせた。

(この時初めて外国ですら無い事に気付いた………)


一方俺は、妹が出来ると知ってから色々がんばった。それはもうがんばった。


ただ産まれる前に出来るようになったのは、歩く事と喋る事だけだった。

読み書きは未だに完璧では無い。

…………少しは出来るよ!


そんなこんなで脱アホの子を目指して、日々をちまちま生きていた。


5歳になる頃………頭をぶん殴られる少し前の頃、俺はやりたくもない努力を強いられる事になった。


バカ親父に。

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