13話
「小僧、飯だ起きろ」
あかん。全然寝れてないんですけど。
つうか爺さんが作ったのな。初めて見るよ。
起きて飯を食いに居間に行くと、マーリンさんが待ってた。お姉さんが作ったんか?テンション上げ上げですな。
「マーリンさんおはよう。今日も綺麗ですね」
「今日しか会ったこと無いでしょ。でもありがとう」
「いいこらとっとと食うぞ。座れ」
どんだけ楽しみにしてんだよ。いい歳してもー。
「いただきまーす」
「いただきます」
「おう、とっとと食えよ」
「…………誰作ったの?」
「俺」
なんなんだよ!テンション下げんなよ!
はい食った。ジジイしては美味かった。
材料は俺を殺しかけたレッドベアーだって。
何だろうね、この気持ち。
「おい小僧、話がある」
「俺には無い。マーリンさん、今日まだいます?俺に魔術のこと教えてくれません?出来ればお互いの事も色々話しましょう」
「いいわね。でも、その前に私もあなたに聞きたい事あるんだけどいいかな?」
お姉様も俺のこと気にしていたのか!チャンスやん!
「君、まだ何か隠してない?」
「ないよ」
「嘘だな」
「ないよ」
「本当に?」
「ないよ」
「嘘だ」
「ないよ」
「実は?」
「ないよ」
「また嘘だ」
なんだよ!しつけぇよ!
「いいから言え。別に悪いようになんかしねぇよ。それとも悪さしてんのか?」
「するわけねぇだろクソジジイ。言ったら余計いじめられっから嫌なんだろが」
「あんたそんな酷い事してるの?やめなさいよ」
いいぞ!マーリンさん!もっと言って!
「してねぇよ。お前が本当に隠してねぇか聞いてるだけだろ。それにそれがどういうもんか知らねぇと後々お前が困るだろ」
「それは確かにそうだね。クライスト君、君のために教えてくれない?」
大人め。グルになって子供をいじめるなんていけないんだぞ!
ていうか俺が隠してる前提かい。
「爺さんが本当にそう思ってるなら教えてもいい。本当ならね!」
「本当本当本当」
「だって」
軽いよ。マーリンさんもそれは指摘して!
「ハイハイ。んじゃ言うけど、実は魔闘気以外にもう2種類新しい闘気を編み出しました」
「何?………お前それ本当か?」
「はい嘘でーす。お話終了寝まーす」
「待った待った。私は信じてるから、続けて?ね?」
美人に言われちゃしょうがねぇなー。まぁ爺さんからは逃げられないだけなんだが。
「爺さんが信じてないから端折るけど、1つは爺さんにも出来て、もう1つは俺しか今んとこ出来ない。って言っても全然実践出来ないんだけど」
「あ?俺にも出来るだと?なんだそりゃ」
「さぁ?あーしてこーすりゃ出来んでね?」
「………おい、悪かったよ。だから話せ」
謝るか威圧するかどっちかにしてね?
「1つは闘気と生命力を合わせるやつ。これなら出来るしょ」
「なんだそれ?どうやんだよ」
「闘気に生命力合わしてみ」
「ん?おう」
爺さんが闘気を作り出した。かなり量多いんですけど。圧がすごいよ。感覚的にね?
「おい、これからどうすんだ」
「いや闘気だけ作ってどうすんだよ。合わせろよ」
「どんだけ使えばいいんだ?」
「少しづつ足しても出来るから。ほら合わせてみ。ってか試した事ないの?」
「そんなのある訳無いだろ。ただの無駄遣いにしか思えないからな」
闘士はどいつもこいつも脳筋かよ。せめて1人はいてくれよ。
少し待ってると出来始めたみたいだ。闘気が変化していく。ていうか量多いよ。バカじゃん。
「出来たでしょ?どうよ」
「……………これはすげぇな」
「へぇ、あんたが凄いってよっぽどだね」
え?そうなの?
「爺さんや、どうすごいか俺にも教えてよ」
「は?お前、これがどういうもんかわかんねぇのか?」
「全くわからん。だって闘気より強い感じあるけど、闘気と性能変わんなくね?」
「確かに、自分自身にはあまり大きく影響してないな。だが、これは闘士にはかなり影響する」
意味不ですけど。これやばいやーつ?
「小僧、闘気で腕を守れ」
「は?何すんの。殺す気?」
「今からお前の腕にこいつを流す」
「バカかよ!マーリンさん!いじめ!いじめだよ!」
「この子の言う通りだよ。口で説明しなよ」
そうだ!流石に横暴だ!ひとでなし!
「いや、こいつにこれがどういうもんか教えるにはこれの方がいい。とっととやれ」
「おいマジかよ…………はぁ、最悪」
どうせやるんだよなー。萎え。明日も休みにしてくんねぇかな。
諦めて腕を闘気で纏う。普通の闘気なら、こうして守れば体に流れてくる事は無い。
「いくぞ。加減は出来てるはずだから死にはしねぇと思う」
「いいから早くやれよ。死んだら呪うからな」
「おう。あと一応、闘気を操作して守れよ」
「は?おう」
相手の闘気がよっぽど多くないと通らないはずなんだが………………ヤバイかも
意を決して待ってると、爺さんから闘気改(仮)が流れてくる感覚があったので、俺も闘気で守る。
ん?ちょい。全然止められないんですけど。
抑えられないんですけど。これ腕にくるんですけど!止めてもくんないんですけど!
「おいジジイ!これ止めろよ!ちょ、うぎゃぁぁぁぁぁ!!!!」
「アラド!!」
「もうやめたっつの!小僧!大丈夫か?どうだ?」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!
まずいまずいまずい。腕が動かねぇ。
痛み以外の感覚すらねぇ。痛みだけが腕に残ってる。
腕の内側がなんども抉られてるかのような痛みが続く。全く収まる気がしない。
「クライスト君!大丈夫!?今治すから!」
と言って俺の腕を両手で包んで魔術で治してくれている。でも全然痛みが引かない。
「おい小僧。しっかりしろ」
「ぐぅぅぅぅ。クソ…………ジ………」
ダメだ。全然喋れん。痛みに耐えるので精一杯。
「クライスト君!まだ痛い?大丈夫?」
「痛いぃ……………全然、うぐぅ」
あかん。頭ん中チカチカする。いや、腕に少し流してこれかよ。ガチで危ないじゃん。
2分くらいして、マーリンさんの魔術?が効いたのかやっと痛みが引いてきた。死ぬかと思った。
「クライスト君、大丈夫?」
「今はなんとか。マーリンさんありがとう」
「ううん、ごめんね。魔法も試したんだけど全然効果が出なくて」
「闘気がやっと抜けたみたいだな」
「おい!それマジで言ってんのか?んなもん俺で試したのかよ!」
これあかんですね。ギルティです。
「ここまでとは思ってなかったつうの。お前全身痙攣させて少しも動けてなかったからな」
「本当に死んじゃうんじゃないかと思ったくらいにね」
「俺も死ぬかと思ったよ。だからジジイもいっぺん試してみ。死んだら墓くらいは掘ってやる」
マジでキレた俺は闘気改(仮)を作る。
「おいやめとけ。俺のが量は多いから効かねえぞ。最悪やり返す」
「このクソジジイ!いつか絶対やり返すからな」
この恨みはらさでおくべきか!否!
「ほら、あんまり暴れない。クライスト君、それより腕は大丈夫?」
「全然動かないけど多分大丈夫」
指先まで全く感覚がないけど、闘気でも同じようになるのでこれはわかる。ジジイに何べんもやられたからな!
「おい小僧、とっとと次やれ。あといつまでそれ残したんだ。俺には効かんぞ」
「ハイハイそうですね。あともう1個はこれも使うんだよ」
「もしかしてそれに魔力を合わせるとか?」
「アッタリー。流石マーリンさん、そこの筋肉オバケとは違ってすぐ気づいてくれる。クソジジイも見習えば?」
これ俺の本心だからな?あとその呆れたような顔やめろ!俺マジでおこだからな!いやマジだよ?
「ちなみに今からやるけど、これただ維持する事しか出来ないからね」
「は?なんでだよ」
「これ、爺さんが出来たやつとか魔闘気とは格が違う。生き物にお試しなんかしたら絶対殺しちゃうくらいに危ないからな」
そもそも自分が死にそうになるし。
「そんなに危険か」
「制御が下手だと自滅するよ。あと消耗具合がイかれてる。俺は6つ数える間にこの闘気が無くなる」
「は?無くなるってなんだ」
「どんなに制御しても体外に抜ける。だから無くなる」
どんなに頑張っても6秒しか持たなかった。魔力とか生命力を足しても延びてプラス2秒。
「それ、本当に大丈夫なやつなの?聞く限り自分が危険になるだけのものにしか思えないけど」
「マーリンさんがそう思うのも当たり前なんだけど、性能が違う。多分これを使えば爺さん倒せるんじゃないかな」
「…………つまんねぇ冗談はやめとけ。もういいからとっととやれよ」
爺さん怖いよ。威圧すんなしマジで。
「ほいじゃいきまっせ」
闘気改(仮)に魔力を合わせる。ちなみに魔闘気に生命力を合わせることでも出来る。
これの良くないところは、分量がバカみたいに多くないと、出来上がりが少ない。
魔闘気が闘気の3割まで減るくせに、魔闘気改(仮)はそれがさらに3割まで減る。だいたい元々の量の1割弱ぐらいまで減る。量はね。
「爺さん、いくぞ。見てろよ」
と言って一気に魔力を合わせる。寝てる間に回復した魔力を使い切ったが、成功した。
だが、どんどん抜けてく。全く維持できねぇ。
6秒たった。やっぱり全然維持出来なかった。でもこれがどんなもんか爺さんもわかったろうよ。
「………………」
「アラド?どうしたの?」
「どうだ爺さん。イかれてるだろ」
「あぁ、そいつは狂ってる。お前の言う通りだな。俺じゃ勝てないくらいだ」
でしょ?これ絶対ダメなやつだよね?
「アラド………それ本当?」
「あぁ、はっきり言ってこれを使いこなせるやつがいたら世界で最も強いと断言出来る」
「でしょ?だから教えたくなかったんだよね。怖いじゃん」
「確かに危険だ。絶対口外するなよ。例えお前しか出来ないとしてもだ」
俺がするわけ無いだろ。絶対何か面倒ごと引っ張るもんな。
「クライスト君、君はそれどうやって思いついたの?」
「え?これは魔物討伐中にレッドベアーに遭遇して、魔闘気使ってたけど、敵わなくて、闘気を増やそうとしたけど生命力を突っ込んじゃって、なんか出来ちゃった」
「…………いや、お前殺されかけただろ」
「さっきも言ったじゃん。維持してないと保たないんだよ。歩いたら3倍早く抜けるよ?」
これで殴ろうとしたら構えた瞬間無くなったもんね。
「たまたまなんだ。でも、もう1つのもすごいね。アラドとかが気づいてもおかしく無いんだけどね」
「うるせぇ」
「俺は魔闘気出来るからね。おんなじ要領でやったら出来たって感じだよ」
「小僧。お前さっきのやつ超集中でも使ったか?」
「やったよ。結果は一緒。これ元々の闘気とか魔力を増やさないと今のとこ戦闘じゃ使えないって感じ」
不便だけど危ないから結果オーライ。なんか違うな。
「それってどれくらい危ないの?強さだと、どれくらいとかわかる?」
「俺の感じだと、俺の全力の100倍以上に感じたな」
「俺はよくわからないかな。爺さんでも余裕で倒せるかな、くらいの感じ」
「……………….それ本当に危ないやつだね」
でしょ?だけどその引きつった顔やめてね?俺なんか傷ついたよ?
「それじゃ、名前つけましょっか。呼び名が無いと面倒よね」
「んじゃビックとマックスで」
「何かわかんねぇだろ」
いいじゃん。ビッグな名前でしょ。
「魔力と合わせたのは魔闘気でしょ?それに似た感じで呼びましょ」
マーリンさんなんかノリノリじゃね?話逸らしたいの?確かに危ないもんね。
「俺でも出来るのは闘王気、最後のが闘神気だ」
「おー、ちなみになんで?」
「闘王気は俺が使うことが出来るからってのと、お前は俺の弟子だから覚えさせたっていう話が出来るだろ。これでオモテでも堂々もお前も使える」
この爺さん結構考えてんな。調子こいて自分から取ってつけたと思ったよ。
「んでもう1つは?」
「闘神の逸話から取った。闘神はいかなる敵も必ず倒し、いかなる攻撃も効かないとてつもない力を持っていたそうだ。闘神気も似た感じがした」
「確かに。俺も同じ感想だよ。あれは使えれば闘神って人と同じこと出来そうだ」
「あんたにしてはいいね。それじゃ決定だね。というわけでこの話はおしまい」
マーリンさんマジでもう聞きたくないのな。俺的には魔法とかの方がよっぽど怖いんだけど。
「クライスト君、もう1つ聞きたいことあるんだけどいいかな?」
「はい、なんですか?もう隠し事はないよ?」
「うん。それとは違うんだけど、あなたシエルのことどう思った?」
え?なんか変くない?なんか怖い。
「小僧が殺気チラつかせてたことだろ?」
「え?マジ?」
「そう、そのことなんだけど、あの子はあんな感じなんだけど本当はいい子なんだ。だからこれからもよろしくしてほしいんだけど、いい?」
「それは全然問題無いんですけど。なんでちょっと離れてるの?俺なんもしないよ?」
マーリンさん闘神気にビビりすぎじゃない?俺もう出せないからね?
「それじゃまた今度遊びに来るね」
「もう来んな。あのガキもだ」
「俺はまたマーリンさんに会いたいからね。また来てください。出来ればシエルちゃんも一緒に」
俺への質問責めが終わったようで、話が無くなるとそそくさとマーリンさんは帰って行った。さみしいですな。
「おい小僧」
「何」
「明日からやる事変えるぞ」
「断る!」
「聞け。お前は明日から、俺に魔術を教えろ。魔力についてでもいい。お前は闘王気をもっと上手く扱えるようにしろ」
え?めっちゃまともな事言いだした?熱でもおんのか?
「なんでだよ」
「俺は強くなる。お前も必要だからそれをやれ。それだけだ」
「全然わからないから教えましぇーん」
「クソガキ、お前が闘神気を維持出来ないのは闘気と生命力の制御が甘いからだ。さっき闘王気を防ごうとした時、全く出来てなかったからな」
ちょい。俺制御には自信あったよ?マジでか?
「なんで魔闘気はやらねぇんだよ」
「闘王気より安定してたろ。あれぐらい出来ればやらせなかったぞ」
よく見てんなクソジジイ。なんかイラっとした。
「なんでマーリンさんに聞かねぇんだよ。あの人のが教えるの上手いだろ」
「ムカつくからな」
ダメだなこの爺さん。面倒だー。
結局折れるしかないので明日の俺に任せる事にした。頑張れ!俺!




