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叛抗姫の人形  作者: 聖 聖冬
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落ち着く御呪い

佐世保まで来たM029は、日本海軍の軽巡洋艦、川内に乗せられていた。


ヘリコプターで着いた瞬間、違法操業をしている中国船が、日本の海域に現れたと言う理由だった。


日本はイギリスと友好関係があるらしく、「ウチの若いのが行くから、好きに使ってやってくれ」だそうだ。


MI6のトップと、日本の誰かが親しい仲なのだろう。


船内から甲板に出ると、姫輝が手摺に体を預けて、海を眺めていた。


「南シナに中国が戦闘機を配備し始めた時、日本はこの佐世保の軍港を強化した。イージス艦を配備して、戦艦と空母も作り出した」


「その情報は知っています。噂で聞いたのですが、第二次世界大戦の遺産を隠し持っていると。事実でしょうか」


大和型戦艦の後期型。


翔鶴型航空母艦と、ドイツが持っていた筈の、Graf Zeppelin級航空母艦の後期型。


高雄型重巡洋艦と、最上型重巡洋艦の後期型。


阿賀野型軽装甲巡洋艦と、香取型軽装甲巡洋艦の後期型。


神風型駆逐艦の後期型。


陽炎型駆逐艦の後期型。


秋月型駆逐艦の後期型。


暁型駆逐艦の後期型。


ELIZAが開いた情報はここで終わる。


それを全て読み上げると、姫輝は興味が無さそうに笑う。


「知らないよ。そんなものがあったのなら、日本は世界大戦に負けていなかっただろう。私が聞いた噂では、当時にはもう放射性廃棄物で動かせたとか」


「ならば、燃料を絶たれていたのは、それ程問題では無かったと」


当時は零戦など、戦争兵器を動かすには石油が主流だった。


それを考慮しても、日本に眠る軍艦があれば、十分過ぎる程戦えそうだった。


「いや、日本は渋ったんだよ出すのを。未来の為かもしれないし、ただ戦争に疲れただけなのかは分からない。上の考えは何時でも分からないもんだろ」


「成程。ならば、それが見つかれば日本は無敵艦隊ですね。尽きる事の無い燃料、そしてもう一つの技術があれば」


姫輝はM029の横腹を擽る。


感じた事の無い感覚に襲われたM029は、両手で体を隠す。


大人しく引き下がった姫輝は、笑いながら煙草に火を点ける。


「お前はそんなに難しい事を考えなくて良いんだよ。そんなもの見つからない、もしあったらとっくに出してるだろ」


「煙草……いつの間に。渡して下さい、ライターも」


手を出すと、姫輝は自分の手を乗せる。


左目を閉じて微笑んだ姫輝は、手をM029の頭に移動させる。


「何のつもりですか。頭は即死させる事の出来る箇所です、あまり触られるのは……」


「可愛いくない事を言うなよ、何となく落ち着かないか?」


暫く撫でられ続けると、何となくぽわぽわしてくる。


心地良さに包まれて、瞼をゆっくりと閉じる。


「成程。確かに悪くは無いです」


「だろ、落ち着く御呪おまじないだ。何時でもしてやるよ」


暫く撫で続けられていると、大きな波で船が上下に揺れる。


「姉弟水入らずで悪いが、アレが違法操業の中国船だ」


海上保安官の男が船内から出て来て、遠くで密漁をしている船を指差す。


「姉弟ではな……」


「姫輝さん準備」


船内の共有部屋に入って、銃を準備する。


ケースからMP-433を取り出して、マガジンを五本ポケットに入れる。


「待て、武力行使は最終手段だ」


「そうなのですか。俺たちは最初から殲滅目的ですが」


テロリストが動いたら駆け付けて根絶やしにする、それの繰り返しだったイギリスでは、武力行使以外に考えが付かない。


「テロリストじゃないんだから、最初から潰す必要は無い。ただ辞めさせて拘束するだけだ」


「拘束なら俺に……」


「銃は出すなよ。刺激してしまう」


再び甲板に出ると、船から超小型撮影機が飛び立ち、軽巡洋艦の上にピッタリと付く。


中国船はこちらを認めると、スピードを上げて逃走を図る。


川内も速度を上げて追う。


逃げ切れないと考えたのか、中国船は川内の艦首に体当たりをする。


「敵対しているとはっきりした。拘束する、傷は付けない」


接舷された状態となった甲板から、中国船の甲板に飛び移る。


船内から出て来た中国船が何かを叫んでいるが、他人の庭に踏み入って、注意されて逆ギレしている、ヤバイ奴にしか見えない。


生憎中国語が分からないので、何も反応する事が出来ない。


「ELIZA翻訳」


「翻訳します。来るな、出て行け。その他罵詈雑言を発しています」


ELIZAが意味も無く暴れ回っている視界が少し暗くなり、何かが横から覆い被さる。


後から飛び移ってきた姫輝に、お尻を軽く叩かれる。


「命令違反だぞ。今上から実力行使の命令が出たから良いが、命令が出るまで動くな」


「最初から実力行使の命令が出ているのではないのか? で無ければ危険、命令が出てからしか動けないなんて」


船内からもうひとり、包丁を持って出て来る。


ずっと叫んでいる男の横に並んで、包丁を振り上げて叫び、威嚇してくる。


「どちらも貰って良いですか」


「お前に叫んでるだけの方をやるよ」


「なら、包丁の方に行かせてもらいます」


「ならじゃんけんだ」


姫輝と向き合い、拳を出して、最初の構えをする。


「じゃんけ……」


じゃんけんの途中で走り出した姫輝は、包丁を持った男を素早く畳む。


出遅れたM029は、不本意ながらも、叫んでいただけの男を取り押さえる。


「狡いですね。譲ってあげたのですから、後で甘いものでも奢って下さい」


「ディストーション展開、数はひとり。武器はアサルトライフルです」


目の前に展開された透明の壁が、ふたりに襲い掛かろうとしていた弾丸を止める。


スーツの中のMP-433を抜いたM029は、アサルトライフルに向けて三発発砲する。


「あぁぁ!」


船内に居た男は悲鳴を上げて、端っこで縮こまる。


縛った手首のロープを船の窓のフレームに繋ぎ、姫輝が船内の男を甲板に引き摺り出す。


「さっきのが特殊兵装か? MI6でも五人にしか実装されていない」


「そうなります。ディストーションは五人の中でも俺だけですが。それぞれ違う特殊兵装が積まれています」


海上保安官が後から乗り込んで来て、船内を捜索し始める。


捜索は保安官に任せて、川内の自室に戻る。


共有部屋の相手は姫輝で、二人にしてはあまり大きくない部屋だった。


日本に着いたのがそう早くなかった為、陽が傾き始める。


水平線に半分まで沈み、綺麗に海を紅く染める。


窓から見える太陽は、もう海に飲み込まれていた。


「疲れたか? こっちに来いよ」


上のベッドに座っていた姫輝は、M029を呼ぶ。


少し疲労が蓄積した体を持ち上げて、二段ベッドの上に上がる。


向かい合って座ると、姫輝は少し空いていた距離を詰める。


「まあ、少しは頑張ったんじゃないか。命令違反もあったが、褒美だ」


「甘いものは奢ってもらいますよ。あと……頭……撫でて……くれませんか」


紙袋を受け取って、頭を前に出して目を瞑る。


「そんなに照れて言うこと……か。まあ、これくらいは何時でもしてやるよ」


「有難う御座います。とても落ち着きます」


暫く身を任せて、わしわしと揺らされる。


脚を組んで座っていた姫輝の膝の上に倒れ込み、小さく丸まって寝る。





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