全てが始まった場所へ
日本が朝鮮と中国を降伏させてからもアメリカとの戦争は続き、核が両国の間の空で放射線を撒き続け、遂に日本が最後の手段を使う事を踏み切った。
次世代型化学兵器プロメテウス、構造などは全てウラノスしか分からず、データは七千兆桁のパスワードで守られていて、更にそれと同時に鍵でコンピュータのロックを人の手で解除しなければいけない。
そんな厳重なセキュリティを人間が作り出したAIが突破出来る訳も無く、当然人間など足下にも及ばない。
それだけのセキュリティを何故ウラノスが組み上げる事が出来たのか、それを知っているのは僕含めて数人しか存在しない。
九条家の椅子に座りながら、窓の外に見えるバラバラの種類の花で埋め尽くされた丘を見る。
「あれがウラノス。あの丘は僕と彼が始まった場所、だから始まりの丘と呼んでる」
肘掛に腰を下ろしたティエオラは、入ったプライベート通信に応答しながら部屋を辞する。
言葉を掛けそびれた僕は、綺麗に咲く丘を見詰めて劣化を止めた鈴蘭を顔の前に出す。
複数ある花弁をひとつ口に含んで無心のまま咀嚼していると、背後から忍び寄って来た誰かに鈴蘭を取り上げられる。
「こーら何やってんだ久し振りに帰って来たと思ったら、花は食いもんじゃないっていつも言ってるだろウラノ……聖冬!?」
口を開けて固まっている鈴蘭に噛み千切った鈴蘭を口移しすると、
「何だよ馬鹿、花は要らないって旦那も居るんだからそんな行動は……」
と言いながらも確りと鈴蘭を飲み込んで体の一部にして、私の頬や体をぺたぺたと触る。
そろそろ悪ノリしてベッドに連れて行かれそうなので、いつも通り拳をお腹に入れる。
「聖冬、やっぱり聖冬か。やっぱりウラノスの連絡通りこの日に日本に戻って来たのか、まずは親友の私に一報入れろよな」
「だって直ぐに迎えに来そうだから面倒」
「行くに決まってるだろ、死んだかと思って自棄酒しちまったじゃねぇか。お陰でウラノスが片付けるまで足の踏み場が無かったぞ」
「相変わらず一人暮らしの癖が抜けないのね、旦那は何をしているのかしら」
「そりゃあ仕事で今はアメリカに居る、SARSだから大変なんだよ。だからウラノスの出番って訳なんだよ」
返すのも面倒になってきた頃、タイミング良く部屋のドアを開けて覗き込むティエオラに呼ばれる。
私は鈴鹿から鈴蘭を取り返して、代わりに煙草を渡しておく。
「どうしたの」
「僕たち三人に天皇陛下が会いたいって言っているみたいで、大至急東京に向かってほしいだって」
「行く必要ある?」
「元軍人の妻だから仕方無く行くよ僕は、それに返してもらわないといけないし。ウラノスを」
「面白そう。私も行くわ」




