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叛抗姫の人形  作者: 聖 聖冬
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Answer Song

再び宮殿で始まったライブを続けさせる為、外から押し寄せる陸軍を阻み続ける。


姫輝が日本に飛んでから、少しだけ体のキレが無くなってきた。


半ば張り付くねばねばな物体の上で動いている様な、例えにくく分かりにくい感覚になる。


連戦による倦怠感を唯一支えているのは、宮殿の中から大音量で溢れ出すPhantom Princessの歌声。


Sacred Songが終わると、次に入った曲は今まで聞いた事が無い曲だった。


しかも友希那がギターボーカルになって、妃奈子だけが戦場に出て来る。


「妃奈子は中に居て、ここで倒れたらこの場だけでなく、世界中のテロリストがもたない」


「それでも戦場で歌いながら戦えます、vocalは友希那ですけど、この歌は私も気に入っています」


「Answer Song!」


「Answer Song!」


友希那が叫ぶと同時に妃奈子も叫び、ピアノから曲に入る。


「言っても聞かないなら、勝手に守らせてもらうから」


妃奈子を包む様にディストーションを張り、見えない鎧を身に付けさせる。


弾の切れた銃を投げ捨てて、Arsenalから新しい銃を飛ばす。


走りながらそれを受け取って撃ち、すり抜けようとする軍人を阻む。


「この歌は、ティエオラさんと友希那が作った歌なんですよ。ウラノスの歌であるAlice In Unreadableに答える歌、つまりAnswer Songなんです」


「だからこんなに物語みたいな歌なの?」


「はい、唯綴るだけ歌ではなく。喜びも悲しみも全てを歌った歌なんです、これが本物の愛でしょうか」


その話を聞いて、友希那の歌声により耳を澄ませる。


「今も聞こえるその歌声は、忘れじの夢のついまで響いて……」


そこまで聞いて歌声を聞くのを辞めて、目に溜まった涙を拭う。


これが終わったらウラノスクイーンと暫く過ごそうと決めて、気合が入った体は熱を帯びながら、全ての迷いの鎖を断ち切るように鋭く動く。


全身が一振りの日本刀になった感覚に包まれて、姫輝に止められた時とは違う高揚感が込み上げてくる。


「私に触れると怪我しますよ」


曲調はバラードっぽくないが、曲の内容はしっかりとバラードをしていて、素直になれないふたりの作曲者をよく著している。


勝手に最適な動きで人を殺し続ける体は、ふらふらと立ち寄った場所で聞いた歌に乗って、渇いて飢えた踊り子の様にステップを踏む。


「踊ってる場合じゃない、あんまり動かれるとジャマ」


途端に援護射撃がぱったりと止んだトーリが、不服そうに立っている軍人を探しているが、私の周りには既に立っていられる者は居なかった。


Answer Songを最後まで踊り切ると、空が急激に真っ黒に変化する。


「まさか……そんな……事って、空が割れて。友希那」


真っ黒な空を見上げた妃奈子は宮殿の中に駆け込んで行き、吸い込まれる様に見入る軍人は、全員が攻撃の手を止めたかと思うと、ふらふらとした足取りで撤退して行く。


「どうなってるんだ天使。アメリカの海軍が撤退して行くぞ、中国を半日で制圧した途端空が黒くなって、周りの軍人が変なんだ」


「そちらもですか姫輝さん」


「アンジュ、今日本に居るJBさんから通信が入ったけど、九条邸に一瞬で花でいっぱいの丘が出来たって。その直前に空が真っ黒になって」


「グラーフさん、日本ではそんな現象が……空が割れて花が咲いて、この世界はどうなってしまうのでしょうか」


全ての通信が強制的に切断されて、Arsenalや特殊武装が使えなくなる。


「これを機に制府本部を制圧する、セキュリティも今なら作動していない」


「分かったウラノスクイーン。直ぐに向かう」


守る必要が無くなった宮殿から離れて、制府本部の施設に入る。


少し進んだ所で待っていたウラノスクイーンと合流して、銃だけしか武器の無くなった警備を片付ける。


エレベーターを使って最上階に上がり、腐敗の象徴の前に辿り着く。


「ウラノスクイーン、エージェントM029。お前たちは勘違いをしていないか?」


「黙れ、命乞いならもっと早くしておくべきだった。違うか」


「βios!」


声と共に壁を突き破って入って来たのは、より人間の形をしたβiosだった。


そんなものに構わずザラドに向けて引き金を引くが、βiosの腕に阻まれる。


「こいつ……知能が有る」


ウラノスクイーンと同じタイミングで左右に散開して、私がβiosを引き受ける。


「こっちだ気持ち悪いの!」


部屋の中にあった本を投げて気を引き、太股からナイフを抜いて飛び掛る。


手の平でナイフを受け止めたβiosは、口を開いて自分の腕ごと口の中に入れる。


咄嗟に腕を引いてβiosの体を蹴って飛び退くと、腕ごと噛みちぎって丸呑みにする。


その光景を見た直後に体が別の方向に引っ張られて、硝子を突き破って落ちる。


ディストーションと思ったが、つい先程から使えない為、このまま地面に叩き付けられるまで待つしかない。


飛び込んで助けに来ても無駄な事を判断出来るウラノスクイーンは、必ず飛び降りては来ないと確信出来る。


それなら信頼してあの場を任せてくれたウラノスクイーンを、娘である私が裏切る訳にはいかない。


「ウラノスの加護があるから、本当の自由の意味を」


左眼から噴き出した紫色の炎が、翼になって体を大空に駆け上がらせる。


残り火の加護が消える前に最上階に戻って、ウラノスクイーンに飛び掛りそうなβiosを蹴り飛ばす。


「これが私の答え、気に食わない奴らには全員死んでもらう。私含めてね」


触れた途端灰になったβiosだった物を踏んで、拘束されたザラドの肩に手を置く。


「言い残した事とかは聞いてあげない、唯一聞けるのは貴方の汚い断末魔だけ」


ザラドを灰に還した瞬間に炎が消えて、倦怠感が全身に乗り込んでくる。


ウラノスクイーンの膝の上に乗せられて、そのまま瞼を閉じて少しだけ力を抜くと、何時も寝る時は警戒していたが、今回は不思議と深い眠りに落ちる。

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