意地がある
戦況は全体的に見てもあまりよろしくない、ウラノスクイーンの戦闘機は度重なる戦闘のダメージで煙を上げ、疲弊し切った混合隊は戦線を維持出来ず、ウェストミンスター寺院前まで後退する。
唯でさえ過半数があちらに回った為、援軍は期待出来ない。
殺しても殺しても向かってくる姿に、既に混合隊は士気が下がり始めている。
「申し訳ないアンジュ、ベイルアウトする」
「了解、降下中は援護する」
操縦席からベイルアウトしたウラノスクイーンにディストーションを張り、Arsenalまで走って弾丸を補充する。
「セレナ、ライブは後何曲?」
「次で最後だけど、キツそう?」
「セレナ、最後の曲はピアノとボーカルだけ。私たちも加勢出来る」
「分かった、そう言う訳だから」
通信に入った友希那の提案を、セレナは即座に承認する。
寺院から出て来た友希那とベルが戦場に飛び出し、チェリーが負傷者の傷を見ていく。
姫輝の補充とバトンタッチして前線に出ると、ウラノスクイーンが地面に着地していた。
パラシュートを外す時間を作る為に加勢しようとするが、待ち構えていた軍人に囲まれる。
「どーん!」
一発受ける覚悟をして引き金を引くと、凄い勢いで目の前の軍人が吹き飛ばされる。
長い髪を左に纏めたグラーフが、オリジナルのツヴァイを脇に抱えて立っていた。
ぐったりとしたツヴァイを立たせて、私の頭を二回優しく叩く。
「久し振りだな、逃げた事は評価しないが、帰って来た事は評価してやる」
「逃げた覚えはありませんし、戻った訳でもないです」
「どちらにしろ良かったって話だ。それと日本が攻撃を受けたらしい、反撃を実行しているが、立ち上がりは引き分けらしい」
姫輝に伝えるべきか迷ったが、通信が繋がっている為全て筒抜けになっている。
「日本に戻る。すまん」
来ると予想していた言葉がそのまま来て、この戦線もここまでと見切りを付ける。
「退却しながら戦うから、セレナたちも歌が終わり次第撤収」
「もう終わった、今から撤退を開始する。愛奈、撤退命令を全隊に」
「了解、撤退命令承認。出しました」
「でも、逃げるって言っても何処に?」
「取り敢えず王宮に逃げ込むから、殿はMI6トップの三人に任せる。数百を三人で頑張りなさい」
「面白いテロリストのリーダーじゃないか、私を仲間外れにするとは。勿論この私も殿を……」
攻撃を緩めずに笑うウラノスクイーンがそう言うが、セレナの命令で動くのはテロリストだけで、MI6はウラノスクイーンの命令しか聞かない。
ここで壊滅するのは殆ど敗北に落ちるという事で、また戦闘機が来たらそれはより堅実的になる。
「全員に撤退命令を出してウラノスクイーン、指揮官である貴女も引くべき」
「撤退命令は今出したが、娘を置いて……私だけ逃げれるか」
「あー、もう。変な意地を張るところは貴女に似たかも」
「それは大変だ、楽しくなってきたな」
「ならないから集中して、ちらちらこっち見ない」
「怒られてしまったぞグラーフ、ツヴァイ」
ゴッドアイと多数の小型機を展開しているツヴァイは、ウラノスクイーンの言葉に反応せず、黙々と敵を一撃必殺する。
その様子を見ていたグラーフが渋々口を開き、ウラノスクイーンの言葉に応える。
「はいはい。仲が良いようで良かったです」
「愛娘は何処に入れても痛くないぞ」
「その煩い口にぶち込んでやろうか」
「どっちも煩い」
そう短く言葉を発したツヴァイに反論出来ず、それを誤魔化すように敵の中に深く潜る。
「これは殿、敵の中にあまり突っ込まない」
「分かった分かった、私たちが悪かった。そう正論ばかり言うなツヴァイ」
「ウラノスクイーンは煩いけど、私は煩いないだろ。なぁアンジュ」
「ふたりともそう言う子どもっぽいところが煩い」
後方が遠くまで行った事を確認して、Arsenalからホーミングを放って離脱する。




