3 四季王国の女王様
「オジサン、国王様って怖いんでしょ?」
縮こまる様に座っている赤目のメリィが、ウサギの様に震えながら
上目遣いで尋ねる。
オジサンは、首をゆっくり横に振り
「国王様は実はね…」
そう言いながら微笑み、本のページを捲った。
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『一方その頃、夏の女王と秋の女王の行動を知らない国王は
何も言わず玉座に座り、ただ季節が春に変わるのを待っていた。』
厳しいそうな強面な顔で、ただ座り続ける国王様。
しかし、心の中では色んな事を考えていた。
(あぁ…冬湖は風邪をひいていないだろうか。
大丈夫だろうか…。なんで儂も入れてくれないんじゃろうか?
ああぁあぁぁ…元気でいてくれ…。)
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「…なんてね、心の中では、娘の事を考えていたんだよ。」
「へぇ~そうだったんだ~。」
メリィや他の子達が感心して頷く中
オジサンのは、気持ち良さそうに話を続けた。
「国王様って冷たく見えていたけど、心の中は凄く優しいんだ。
表情が硬いから、何時も誤解受けてんだよね~。
ほら、《冬の女王を春の女王と交替させた者には
好きな褒美ほうびを取らせよう。 》って書いてあっただろう?
あれはね、食糧危機で一番最初に困るのは民のものだから…だったんだ。
次に《ただし、冬の女王が次に廻まわって来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない。》って書いてあっただろう?
あれは、大事な娘達が傷付けられない様に。との事だったんだ。」
口の動きが止まらなくなったオジサンにドン引きしながら
子供達は、優しいので相槌を打つ。
「へ…へぇ…。そういう事だったんだ…。」
それで更に拍車が掛かったオジサンは
薀蓄を続けようと、目を輝かせて子供達を見た。
すると冷めた目で、子供達がオジサンを見ている事に気付き
「…ごめんなさい。」
ちゃんと反省して、オジサンは凹みながら本読みを再開するのであった。
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『隣に座る女王様も、何も言わず春を待っておられました。
何時も通り、余りにも静かなもので
召使共の話し声が聞こえてきた。
「まだ現れぬのか春の女王様は。」
「このままじゃ、この王国も御仕舞だわ。」
「季節が変わらなくとも、女王様の力が届かない所に行けば助かるわ。」
「この国を捨てるのか!!」
「このままじゃ全滅しちゃうじゃない!!」
など、皆の不安はどんどん増して、いつ反乱を起こしても
おかしくない状況に、四季王国は陥っていたのでした。』