学者モーリス[2]
それは、彼の知る限り3つの村が滅んでいてそこの文献を読むと必ず狼という言葉が出てくることであった。教師の残した日記、修道女の残したメモ、様々なところに狼について書かれていて、そのどれもが狼を恐れているようであった。
遠吠えが聞こえるだとか、次に狙われるのは自分だとか書いてあることはまちまちであったが中には理解しがたいものもあった。彼が見つけたある村の教師の日記の一部をここに紹介する。
三月七日土曜日
とうとう村の人口が半分になってしまった。奴らは遠吠えで私たちにわからないよう連絡を取っている。明日が来るのが恐ろしい、きっとまた朝になれば死体が見つかるしその死体が自分や娘じゃない保証はないのだから。
今朝になって気づいたことがある、それはある人間が嘘を言っていることだ。なんであの人はあんな嘘をついたのだろうか?一体なんのために?
そういえば、一ついい知らせがあった。ルークが何か手掛かりをつかんだらしい。あいつは信用できるからきっとみんなで話し合えばいい策が見つかるに違いない。
間違いない、あいつだけは狼じゃない
モーリスはこの日記の最後の文がどうにも理解できなかった。あいつだけは狼じゃない?ルークとは何者かわからないが、人間ではないのだろうか。彼は最終的にこんな結論を出した。狼が何を指すのかはわからないが、彼らが口にしているのは少なくとも自分の知っている意味の狼ではない。そして、きっとその狼が3つの村を滅ぼしたのだろうということだった。