事件[1]
街の東にある山を越えて、長い木の橋を渡ったところに小さな村があった。そこには百人ほどの村人たちが暮らしていて、学校も教会もある小さいながらも活気のある魅力的な村だった。
日曜の朝、今は教会にみんな集まっていて、神父の話す聖書の話が終わり子供達が賛美歌を歌っているところ。村中の人たちが心安らかな気持ちで過ごしているそんな中、教会の扉が開き息を切らした少年が現れた。少年は最前列に座る村長のもとまで走って行き、外の方を指差して何やら熱心に話し出した。子供達は賛美歌を歌い続けていたが村人の中にはそちらが気になってあまりきいてない人もいた。少年は話し終えると、胸元で十字を切って後列の席に下がっていった。
賛美歌が終わると、村長は神父に用件を伝え、前で話す機会をもらった。村人たちはヒソヒソ話し合いながら、村長が何を話し出すかを待っていた。村長は壇上に上ると、まずマイクにスイッチを入れて一呼吸置いた後話し始めた。
「お気付きの人もいるじゃろうが、さっき来た少年が私にとんでもない知らせを持ってきおった。信ぴょう性のない話で不安にさせたくないと思っていたが、どうやら今まで他のものから聞いた事実を踏まえると筋が通っておるので皆に伝えようと思う。突拍子もない話に思えるかもしれんがのう」
村長はそこで言い淀み、村人の様子を伺った。皆熱心に村長の方を見つめていて、村長の次の言葉を待っていた。しかし、あまりにも長い間話し出さないので耐えきれず村人のひとり、大工のレスターが立ち上がった。
「長老様、俺らはあんたの言葉ならどんなことだって信じる。あんたは私たちにいつも正直だ。どうか続きをお話しくだせえ。」
彼の意見に村人は拍手し、賛同を示した。それでようやく村長は決心し口を開いた。その後村長の発した言葉はあまりに衝撃的で村人たちはしばらくぽかんとしていた。