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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第三章 小深山章次編
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廊下

 廊下に出ると、七原は口を開いた。


「小深山君の話を聞いておかなくていいの?」

「小深山が覆面だとしたらボロは出さないだろう。出したところで覆面だという事実が分かるだけだし」

「獣化してないのなら、それでいいってことね。……でも、これからどうする?」

「小深山の身辺を調べる」

「どうやって?」

「小深山に詳しい奴を探すしかない……でも俺に心当たりは無いんだよ。七原は誰か知らないか?」

「柿本さんとかは……無理だよね?」

「そうだな。藤堂の子分だから、協力なんてしてくれない。そうじゃなくても、柿本は小深山のことを好きすぎるからな」

「そうね。好きな人の不利になるような事を話してくれないよね」

「だから、小深山君に肩入れしそうにない人を探さないといけない」


 七原はしばらく思案した後、ふっと息をついて「難しいね」と呟いた。


「ここは遠田に頼って……CSFCに候補者を出して貰うしかないかな」

「でも、CSFCの中にだって、小深山君に好意を持っている人がいても不思議じゃないよ」

「うーん、そうだな……どうするべきかってところだな……」

「とりあえず委員長に聞いてみない? 彼女なら顔も広いし」

「ああ、確かにそうだな。委員長なら事情も分かってるし」

「じゃあ、委員長を連れてくるね」


 そう言って、七原は教室に戻った。


 しかし、七原は中々出てこない。


 ……どうしたのだろうか。


 様子を見に行こうとすると、七原がゆっくりと出て来た。


 やっと出てきたか。


 しかし、七原はすぐにその場で立ち止まった。

 そして教室側に向き直り、何かを引っ張るような体勢になる。

 そうすると、何者かの手がニュルリと出て来た。


 何してんだ、あいつ。


 腕が見え、肩が見え、徐々に顔が見えてきた。


 委員長だ。


 いつもの愛らしい顔を不満げに歪めている。

 七原は委員長を半ば引きずるようにして、こちらへ歩いてきた。


 委員長、警戒心が剥き出しだなあ。


 まあ、無理も無いのである。

 俺は事情を説明することなく、いきなり彼女にケツバットをしたのだ。


「この前は悪かったよ。しっかり反省はしてるんだ。もう警戒するのはやめてくれ」

「無理」

「無理って」

「戸山君が無理だから」

「何でだよ?」

「わたしは事前に説明してくれたら協力するよ。あの時だって、事前に説明してくれたら喜んで応じていたから。そうしようと思うだけの分別ふんべつあったから。でも、戸山君は他人を信用しなかった。そして、戸山君は目的の為に他人の気持ちをないがしろにした。嫌われてもいいと思った。そういう所、直さないといけないと思う」


 横で七原もうんうんと頷いている。


「そうか。わかった。次からはそうするよ」

「わかってくれるの? ……そう。それならいいよ。まあ、戸山君にはいくら感謝してもしきれないのは本当だし……本当にありがとう……能力がなくなったお陰で、お父さんと話が出来るようになって……能力を使ってしまう事を恐れなくて良くなったのは物凄く大きいの。希望が少しずつ見えてきたかもしれない。お父さんは、私がお父さんを嫌ってると思ってたみたいで、その誤解も解けたし。それも感謝だよ。これからは、お母さんとちゃんと話をしようと思う。どれだけ嫌がられてもね。それで、うまくやっていける落とし所を見つけられたらいいなと思ってる。それが夢じゃなくなってきた。もしかしたら全部が無事解決できる日が来るかもしれない」

「そうか。良かったな」

「……あのさ、戸山君。もしさ……全てが終わったら……その時は戸山君も誘って良いかな? キャンプに」

「何でテント生活が気に入ってんだよ!」

「今度は四人用のテントを買うから」

「俺はどんな顔して、そのテントに入ればいいんだよ!」


 ――そこへ予鈴が鳴り始めた。

 午後の授業まで、あと五分だ。


「もう授業か。時間が無いな。七原から話は聞いたか?」

「うん。私に頼みたい事があるんでしょ? 事前に言ってくれれば何でもするよ」


 そして委員長はクルッと後ろを向いた。


「いつでもいいよ」

「いや、ケツバットなんてしねえから! 俺を何だと思ってんだよ!」


 確かに、そういう誤解をしていたのなら、あんなに警戒していたのも納得がいく。


「七原、何で伝えてないんだよ」

「教室で、小深山君に詳しい人を探してるなんて話をする訳にもいかないでしょ」

「言われてみればそうだな」


 俺は委員長の方に向き直った。


「委員長、俺達は今、小深山に詳しい奴を探してるんだ。心当たりは無いか? 小深山に伝わること無く、詳しい話が聞き出せるような奴が良いんだけど……」

「そうね……心当たりがないこともないよ」

「そいつを紹介して欲しい。出来れば、今日の放課後に話を聞きたいんだけど」

「わかった。戸山君には恩もあるし。そういう場をセッティングする」

「そうか。ありがとう……で、その心当たりって誰だ?」

「大丈夫。私を信用してくれてればいい。ちゃんと戸山君が話を聞けるようにするから」


 更に食い下がって聞き出そうかとも思ったが、すでに予鈴も鳴って時間がない。

 それに、さっきも他人を信用しろと言われたばかりだ。

 ここは委員長に任せておく事にしよう。


「わかった。ありがとう。じゃあ教室に戻ろう」


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