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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第三章 小深山章次編
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教室


 部室を出て、教室に戻った俺は小深山の席へと真っ直ぐ歩いて行く。

 まさか、俺が小深山に話しかけると誰も思わなかったのだろう。クラスメート達は小深山の前に立った俺を不思議そうな顔で見ていた。

 小深山も周囲と同じような表情をしていて、それ以外の感情は読み取れない。


「小深山、ちょっといいか?」


 冷静に見えるように出来るだけ低い声で言った。

 そして答えが返ってくる前に、用意していた『質問』をする。


「昨日の夜、10時過ぎ、早足で歩いてる小深山を見かけたんだけど、どこに行ってたんだ?」


 その質問は、朝に小深山が言っていた事と矛盾する。

 小深山の嘘を指摘したのだ。

 それに驚き、周囲のクラスメート達は俺と小深山の顔を見比べる。

 クラスメート達は固唾かたずを呑んで、小深山の言葉を待った。

 俺が小深山に話しかけた違和感より、好奇心が勝ったという感じだろう。


「ああ、そうなのか……見られたのか」


 小深山はいつもと変わらない調子で答える。


「……実は彼女がさ、泣きながら電話してきて、呼び出されたんだよ。駅の南の公園に」


 その公園は繁華街の近くである。


 ……そうか……そう来たか。

 そんなはずは無いと否定してくると思ったが、見事に誤魔化されてしまった。

 これは朝の話の流れと矛盾しない見事な嘘である。

 これでは、本当に彼女と揉めただけかもしれないという線が消えない……いや、本当にそれだけなのかもしれない。

 限りなく黒に近いが、白の可能性もないわけじゃない……といったところか。


 そんな事を考えていると、塚元が「おい、何だよ。詳しく聞かせろよ」と、興味津々で話に加わってくる。


「いや、こんな事、詳しく話すもんじゃねえだろ」

「やっぱり別れ話だったんだな」

「違う違う。確かに、ちょっと色々あったけどな……」


 その言葉にクラスの女子生徒達がソワソワし始める。

 男子生徒達も気になっている様子だ。

 塚元や篠原が詳細を聞き出そうと、矢継ぎ早に質問を投げかける。


 俺は一気に蚊帳の外に押し出されてしまった形だ。

 もう誰も、最初に話しかけたのが俺だと覚えてないようだ。


 これ以上話を聞く事に意味はないだろう。


 この場を離れようと歩き出した。

 すると、ただ一人藤堂がこちらを見てニヤリとした。

 藤堂は、俺が小深山をおとしめようとしたと思ったのだろう。そして俺の無様さを笑ったのだ。


 しかし、俺は満足している。


 小深山の言った事が嘘か真実かは分からないが、小深山は記憶喪失ではないと分かった。

 それだけで良しとするべきだ。


 俺は七原に目配せをする。

 『廊下に出てくれ』と。


 新たに相談が必要になったのである。


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