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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第二章 寺内奏子編
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委員長の印象

「でも、夏木君にしてもだけどさ。委員長の事、よく覚えてるよね」

「委員長の行動は、それだけ強い印象を与えるものだったんだよ」


 俺も、あの日の事は忘れられない。



 委員長と出会った日、委員長の質問攻めに耐えきれなくなった俺は逃走を試みた。

 だが、委員長は毎回毎回必ず俺を見つけ出したのだ。


 委員長は息も上がってないし、汗もかいていなかった。

 ゆっくり歩いて追いかけてきていた。

 それでも、俺は追いつかれてしまうのだ。


 それは俺に恐怖という感情を植え付けた。



 ……そう言えばと、その時の会話を思い出す。

 何度目だっただろうか――委員長に追いつかれた時の話だ。



「発信機でも付けてるのかよ」


 俺は言った。

 そう疑いたくもなる。

 どこに逃げようと追いつかれるのだ。


「どうやって俺を見つけ出してるんだ?」

「どうやってと言われてもね……刑事の勘?」

「何で、お前に刑事の勘があるんだよ」

「まあ、わたしが教えた道だしね」


 補導でもされたら面倒くさい。

 何かあっても隠れやすい道を選ぶのはお互い様だ。


「そっか。それもそうだな」

「あとは頭の中で効率的に探す道順を作って、そこをひたすら歩き続ける。それで見つけてるんだよ」

「暇だな」

「戸山君だって同じでしょ」



 俺は悔しくなり、それから再び委員長をこうとした。

 しかし、結局は探し出されてしまった。

 それはさながら恐怖映画のようだった。

 逃げても逃げても、暗闇から三つ編みが浮かび上がってくるのである。

 頭の中には今でもその映像が鮮烈に残ってる。


 ん?


 たしか、あの交差点で見つけられたとか、あの路地裏で見つけられたとか、そういう事がはっきりと思い出される。

 頭の中には委員長の通り道の地図がある。

 俺は携帯を取りだし地図アプリを立ち上げた。

 それと頭の中の地図を照合しながら、委員長に追いつかれた場所をマークしていく。

 さらに委員長と歩いた記憶のある場所にもマークを付けていった。


「それ何?」


 七原が問いかけてくる。


「夏木を探している時、委員長と歩いた記憶のある場所だよ。こうやって委員長がいた場所をマークしていくと委員長の避けていた場所がわかるんじゃないかと思って」


 委員長の避けている場所は、つまり委員長の父親の行動範囲だと考えられる。


「遠田は、夏木を探してる時に委員長に会ったか?」

「ああ。よく会ったよ。でも、誰かを探しているような様子じゃなかった。ただ目的のない散歩って感じだった」

「それでもいいよ。見かけた場所にマークしてくれ。七原はどうだ?」

「え? 私は夏木君探しには参加してないよ。その時、知り合ってもないでしょ?」

「その時じゃなくてもいいよ。一年前から今までに委員長を見かけた場所をマークしてくれ。委員長は制服でウロついてることも多いし、目立ってるだろ」

「わかった」


 七原と遠田がマークをしていく。

 まばらにマークの付けられた地図。


「こうやって見ると、駅前通りから西側には一つもマークが無いな。つまり、委員長はこっちに行くのを避けているって事だな」

「戸山はやっぱりすごいよ。まだ聞き込みもしていなのに、記憶だけで、ここまで割り出せるんだな」

「まあ言っても、これだけのことだ。これが役に立つとは思えないけどな。データ不足だし」

「もったいない」


 遠田は呟く。


「折角、ひらめいたんだ。ちゃんと形にしよう」

「まあ、これを突き詰めても委員長の父親が、どこら辺に潜伏しているかが分かるだけだよ。それだけでしかない」

「戸山は父親に話を聞くべきだって言ってただろ」

「場所が分かっただけでは見つけようがないだろ。自分で始めといて何だが、こんな事を考える暇があったら、一人でも多くの人に話を聞いた方がいい」

「そうだな。聞き込みはするよ。でも、それに並行して、この調査も続けよう」

「どうやって?」

「SNSだよ。この質問をグループチャットで流せば、データを大量に集めることが出来るだろ」


 七原も遠田もSNSは結構使っているのだろう。

 確かに、それで情報は集められるかもしれない。


「それは駄目だと思う。SNSで調べたら、委員長の耳に入ってしまうかもしれないだろ」

「そうだね。いくら秘密厳守って言っても、中々難しいよね」


 七原は『仕方ないよ』といった感じで、俺に同意した。


 いつだって平然としている遠田の顔に悔しさが見え隠れする。

 そんなに悔しがるような事でも無いだろうに。


「……あ」


 遠田は何かを閃いたような声を出す。


「あるよ。わたしは秘密を絶対に守ってくれるグループを一つだけ知ってる」

「本当に?」

「ああ、間違いない」

「本当に言い切れるのか?」

「ああ、言い切れるよ。そのグループのメンバーは、自分がそのグループに参加している事さえも秘密にしてるからな」

「何だよ。その怪しげなグループは」

「『CSFC』という名前のグループだ」


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