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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第二章 寺内奏子編
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方針転換

「それで、これからどうするつもりなんだ?」


 遠田が俺に問い掛けた。


「そうだなあ。実を言えば、俺達にはこれといってする事が無いんだよ」

「は? 何だよ、それ」


 遠田は呆れたように言った。


「いや、動けばリスクがあるから……」

「下手なことをしたら、委員長の能力で優奈ちゃんに危険が及ぶかもしれないの」


 七原が補足してくれた。


「なるほど……」


 遠田は渋い顔で少し考え込んでから口を開く。


「でも納得できないな」

「何がだよ」

「戸山らしくないんだよ。戸山だったら、こういう状況なら反対をされても自ら危険に飛び込んでいく。安全な場所で成り行きを見守るなんて、出来るはずがない」

「買い被られても困るよ。今までは、ぼっちだから自分で何とかするしかなかったってだけの事だ」

「そっか……まあ、それはいい。とにかく、わたし達も何かした方がいいだろ? こんなところに座って、ああでもない、こうでもないって言ってても何も解決しない。何かちょっとした事でも出来ることを見つけて、やるべきだ。そうしないと後悔する事になる」

「そうだな。じゃあ、遠田は何をすればいいと思う?」

「え……わたしに聞くのか? わたしにそんな事を言われてもな」

「この停滞感を打ち砕くような画期的なアイデアを頼む。俺達は色々考えて結果がでなかった。もう遠田に掛かってるんだ」

「……いや。そこまで丸投げされても」

「もっとサクサク話を進めてくれ」

「わたしに無茶を言いすぎだろ!」

颯爽(さっそう)と現れて事件を解決して、名前も名乗らず姿を消す。遠田はそんなヒーローみたいな存在じゃないのか?」

「いや、戸山こそ、わたしのキャラを決めつけないでくれ。ってか、名前を名乗らないのは既に戸山がわたしの名前を知っているからだ……七原さん、何とかしてくれよ。戸山は会えば、こんな無茶な事ばかり言ってくるんだ」

「そうなの?」

「久しぶりに電話を掛けてきたなと思ったら、紗耶を裏で操れだの、守川に告白させろだの。昼休み中に七原さんとの噂を広めてくれだの。紗耶の目を盗んで携帯の写真を消せだの。本当に無理難題ばっかりだよ」

「ああ。ごめん。それ全部、私の所為だ」


 七原が(うつむ)くと、「いや、そうじゃなくて!」と遠田は慌てた様子で言った。


「七原さんが悪いんじゃなくて。戸山がわたしに頼りすぎるのが問題なのであって……」


 そんなことを言う遠田に、俺は心の叫びをぶつける。


「何とかしてくれよ。今まで何でもやってきてくれたじゃん! もう、なんかダルいんだよ!」

「ああ、もうっ! 二人目の弟が出来た気分だ。しかも一人目の百倍はタチが悪いんだが」

「弟が百人出来たと思ってくれ」


 遠田は心底嫌そうな顔をする。


「とにかく! わたしは戸山みたいな悪知恵は思い浮かばない。そこは戸山と七原さんで考えてくれ。わたしは何でもするから」

「そうだなあ……確かに今まで慎重すぎたかもしれない。このまま情勢を見守っていたところで、優奈が委員長から話を引き出すのが上手くいくとも限らない。会話の時間が長くなると、それだけで危険だし、このまま何も出来ずに夜を迎えてしまうかもしれない。それらの事を踏まえれば、そろそろ動き出すタイミングかもしれない……もちろん、優奈に話を通してからだが」

「そうだよ。そうするべきだよ」


 七原も同意する。


 そして遠田は「で、何をする?」と俺に問いかけた。


「そうだな。情報収集かな――委員長の友人や知人に聞き込みをするんだ」

「わたしも出来る限りのことはやるよ」

「そうか。やっぱり遠田を呼んで良かったな」


 俺がそう言うと、遠田は満足げに頷く。


「何でも言ってくれ」

「じゃあ、遠田に全部任せる事にする。七原も手伝ってやってくれ」

「全部任せる?」

「手伝う?」


 遠田と七原が、それぞれ疑問の声を上げる。


「やむにやまれぬ事情で、俺には聞き込みなんて出来ないんだよ」

「その事情ってのは?」


 遠田が俺に問いかける。


「まず、第一に俺の人間性の問題だ。俺が委員長の事を嗅ぎ回れば、『戸山が寺内さんのことをストーキングしてるよ』みたいな感じで、すぐに委員長の耳に入ると思う。しかも、相手には警戒心を持たれるだけで、何の答えも引き出せないだろう。だけど、遠田と七原が相手なら話は違う。両方とも俺みたいな悪いイメージは一切ないし、すんなりと話が聞ける」

「なるほど。そうだな」

「そうね」


 二人はうんうんと頷く。

 そこまで強く納得されても……と思うが、仕方ない。

 それが俺の実情なのだ。


「あと、俺は五時半にブチに呼び出されてるんだ」


 七原は頷き、遠田は「何で?」と問いかけてきた。


「朝の件でだよ。出頭しないと、俺が犯人だって事にされるかもしれない」

「そんな話になってたの?」


 それには七原も驚いたようだ。


「いや、事情を聞くだの何だのって話だが、つまりは俺が疑われてるって事なんだと思う。まあ、俺の普段の行いが悪い所為だな」

「そんな風に堂々と言われたら、『そうですか』としか言えないけど……大丈夫なの?」

「ああ。それは大丈夫だ。ちゃんと冷静に無罪を主張してくるよ」

「わかった。まあ、戸山君なら心配いらないね」

「で、聞き込みって具体的には何をすればいいの?」

「そうだな。まず、委員長の友人のリストを作ろう。その中で優先度を決めていくんだ。委員長と繋がりが深い奴、それから付き合いが古い奴の優先度は高い。あと、早瀬がクラスで委員長と仲のいい奴には声を掛けたって言ってたから、普段繋がりが見えていないような人物に話を聞きたい」

「なるほどね」


 そう言いながら、七原は鞄から紙と筆記用具を取り出す。

 『リストを作る』と言ったからだろう。

 七原のこの何も言わなくてもやってくれる感じは、すごくやりやすい。

 俺は話を続ける。


「それから、パイロキネシスの能力者は内側にストレスをため込む人間が多い。彼らには、け口というものが無い分、一旦爆発すると手が付けられないと聞く。能力を得る以前に、そんな問題行動を起こさなかったか、その兆候は見られなかったか調べる必要がある――って所から、過去の担任とかにも話を聞いておきたいな」

「なるほど」

「特に小学校中学校での人間関係、親子関係については詳しく調べてくれ。過去の事例から見ると、このパイロキネシスという能力は、思春期と言うよりも、それより以前の深いトラウマが引き起こしている事が多い。だから、そこら辺を重点的に調べるべきだ。あと、過去何年かに、この街で不審火がなかったかも調べておいてくれ」

「色々考えてたのね」

「そりゃあ俺だってボケッとしてたわけじゃない。待機した分の結果は出さないとな」

「でも、これ全部、私達が調べるの?」

「いや俺も出来る限り手伝うよ。顔見知り以外なら、俺だって話を聞ける。俺は呼び出された時間に学校にいればいいってだけの事だから」

「責任をなすりつけられてる気がするんだけど」


 遠田が不満げに言う。


たくしてるんだよ。遠田を信頼しているから」

「……そうなのか。わかった。託されるよ」


 遠田は、こんな風に、さらりと面倒事を請け負ってしまう。

 やはり遠田彩音は男前なのである。


「くれぐれも委員長本人の耳には入らないようにしてくれよ。俺達の失敗は、直接的に優奈の身の危険に繋がるから」


 そんなことを言っていると、再び七原の携帯が音を立て始めた。


「双子か?」


 俺が訊ねると、七原は「うん」と首を縦に振り、携帯の画面にタッチした。


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