表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第二章 寺内奏子編
42/232

双子からの電話

 そんな話をしていると、机の上に置いてあった七原の携帯が振動を始めた。


「麻里奈ちゃんから電話だ」


 いつの間にか、七原は双子と連絡先を交換していたようだ。


 七原が電話を取ると、甘ったるい声が漏れ聞こえて来た。

 それに七原が応対する。


「うん。うん……わかった。じゃあ今から、スピーカーフォンに変えるね」


 七原が画面を操作すると、「戸山先輩、聞こえてる?」という麻里奈の声が聞こえてきた。


「ああ、聞こえてる。委員長とは会えたか?」

「うん。もちろん」

「で、今どこにいるんだ?」

「カラオケだよ」

「カラオケ?」

「うん」


 麻里奈は学校近くのカラオケ店の名前を挙げた。

 なるほど。カラオケ店なら、誰にも聞かれる事なく能力の話が出来そうだ。


「今の状況は?」

「優奈ちゃんが寺内先輩と二人で話してるところだよ」

「そっか。麻里奈はどこにいるんだ?」

「あたしは隣の部屋」

「そんな近くにいて大丈夫か?」

「大丈夫。注意してるから。寺内先輩が力を使った時の為に消火器を持ってスタンバイしてるの、二本」

「二本……」


 やはり二刀流の一族だ。

 双子は、とにかく武器を沢山用意しないと気が済まない性分らしい。

 二本も消火器を持ち歩くなんて、相当大変だったろうに。


「そこまで連れて来れたって事は委員長に上手く取り入れたって事だな。どうやったんだ?」

「『同じ能力者として話がある』って言ったの」

「思い切った方法だな……」


 だが、リスクはあるけれど正解だったと思う。

 能力者であるという事実を隠して、上級生に近付くのは時間が掛かりすぎる。

 同じ能力者として話しかれれば、会話の主導権も握れるだろう。

 委員長の反応をつぶさに観察して、対応を考える事も出来る。

 先手必勝なのだ。


「やっぱり委員長は能力者だったのか?」

「うん。寺内さんは間違いなく能力者だよ」

「本人がはっきりと認めたから」


 麻里奈の喋った後に優奈の声がした。

 別室にいるって説明だった気がするが……。


「そこに優奈もいるのか?」

「ううん。優奈ちゃんがテレパシーで言ってきた事をそのまま喋ったの」

「でも、優奈の声が……」

「声真似だよ」


 声質も話し方も完全に優奈だった。


「そんな事が出来るんだな」

「双子だから簡単だよ」


 麻里奈が自信満々に言う。

 すると、間髪入れず優奈の声で「あんまり無駄なこと喋らないで。こっちの集中が途切れるから」と聞こえてきた。


 麻里奈……意外と器用だよな。


「ああ、そうだな。じゃあ本題だ。能力の話は進んでるか?」

「あ……ええと……優奈ちゃんは頑張ってるよ。実桜さんの時とは違って気を遣って喋ってるし」

「麻里奈、待って。その言い方は語弊ごへいがある。実桜さんの時とは状況が全く違うでしょ」

「ああ、そういう意味じゃなくって。優奈ちゃんが頑張ってることを伝えたかったんだよ」

「それは分かってたけどさ、余計な一言を付けるから。喋る前は、そんなこと考えてなかったでしょ」

「実桜さんの時と違ってるってのは、そのとき思った事だから」


 麻里奈は一人二役で喋り続ける。

 これを全部麻里奈が一人でやってるのか。

 他の人が見たら、どう思うんだろうと思ってると――。


「あ、はい。ありがとうございます。……はい、一人です。電話してたんで」


 と麻里奈の声がした。

 おそらく、店員がドリンクか何かを持って入ってきたのだろう。

 そして一人の料金で二人入ってるんじゃないかと疑われたようだ。

 ……やはりすごい芸である。


「ごめんごめん。店員さんが来たの」

「ってか、こんな時に注文してんじゃねえよ。緊張感なさすぎだろ」

「ここは学生料金で入る時、一杯はドリンクオーダーしないといけないから。ぼっちは知らないでしょうけど」

「たしかに知らない。カラオケなんて話に聞いたことあるだけだし」

「優奈ちゃん、今のは戸山先輩が可哀想だよ!」

「あのな、麻里奈。思いっきり可哀想って言われるのも辛いもんなんだぞ」


 そこで、七原が咳払いした。


「……あのさ、そろそろ本題に戻らない?」


 七原の鶴の一声に、ふっと我に返る。

 確かに無駄な事ばかり喋っていた。

 優奈も集中が乱れるとかなんとか言ってた癖に、思いっきり関係ない話に乗ってきていた。


 ということは……そういうことなのだろう。


「優奈、話が全然進展してないのか?」

「そうね。まあ、つまりはそういう事――だから電話したの。寺内さんが黙り込んだままで話にならないから」

「まあ、他の能力者に話しかけられたら、普通は警戒するよね」


 隣で経験者の七原が呟いた。


「学校で寺内さんに話しかけた時も、能力者である事を中々認めなかった」

「それでどうしたんだよ?」

「『嘘をつくなら、どうなってもしらないから』って言った。そうして、やっとのことで連れて来たの」


 かなり強引なやり方だ……それで気を遣ってると言うのか。

 やはり優奈は優奈である。


「そりゃあ、どんな奴でも、そんな事を言われたら警戒するだろ」

「仕方ないでしょ。能力を持つことが他人に言えない秘密であるのは、わたし達にとっても同じなの。なんとか早急に密室に連れ込まないといけなかった」

「そりゃあ分かるけどさ。で、その結果、寺内さんが黙り込んだまま、いっさい話をしてくれない。この警戒心を解くのはどうしたらいいって事か?」

「……そういう事」


 優奈は自分が『仕切る』と見得みえを切った。

 それでも、こうやって俺達に電話をして助けを求めないといけなかったという事は、相当に手を焼いているのだろう。


 俺と七原は目を合わせる。

 委員長の警戒を解く方法。

 俺達には思い当たることがあった。

 そうだな。俺もそれが良いと思う。

 さっきのアレを使えばいい。

 諸刃の剣かも知れないが、委員長を西園寺梨々花にすればいいのだ。


「リスクがある。これを言えば更に警戒されるかもしれない。それを承知の上で、やって欲しいことがある」

「何?」

「委員長に『もしかして寺内さんって西園寺梨々花さんなんですか?』と聞いてみてくれ」

「それで?」

「優奈も委員長の作品の感想を言ってただろ? あれをあのまま言ってやれ。単純だけど、創作をしている奴には、それが一番効果的だ。逆に警戒心が薄れすぎて、話が止まらないなんて事になるかもな」


 優奈は少し考えた後、「わかった」と言った。


 そして優奈は沈黙する。


「いま、優奈ちゃんが寺内先輩に言ってるよ」


 と麻里奈が状況説明した。

 下手なことを言えば、発火能力を使われてしまうかもしれない。

 嫌でも緊張感が高まっていった。


「あっ」


 麻里奈の声がする。


「どうした?」

「うん。寺内先輩の表情が変わったよ。『何で最初から言ってくれなかったの?』とか『何でも聞いて。何でも答えるから』とか『ほら、握手。西園寺先生の握手だよ。感動した?』とか」

「簡単だったな」

「そうだね」


 七原はホッとした笑顔を浮かべている。

 そして携帯からは咳払いの声が聞こえた。


「じゃあ、ここからはわたしの仕切りに戻るから。また電話する」


 その声からは優奈の少しバツの悪そうな表情まで頭に浮かんでくる。 

 そこまで再現するなんて、麻里奈……本当に芸が細かいな。

 きっと無駄な才能だけど。


「じゃあ、優奈ちゃんが会話に集中したいみたいだから、後で電話するね」


 そう言って、麻里奈は電話を切った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ