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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第六章
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陸浦邸


 駅前通りの西、閑静かんせいな住宅街を奥へ奥へと進む。

 この先には陸浦家の邸宅ていたくがある。

 何故俺がそれを知っているのかというと、陸浦隆一がこの地域を代表する企業の経営者で、その豪邸は通りかかれば必ず目に付くものだからだ。


 では何故陸浦邸に向かっているのか――。


 記憶を無くしてしまった玖墨と一華。

 行方ゆくえの分からない楓と司崎、そして陸浦栄一。

 今回、主要な関係者からは軒並のきなみ情報が得られそうに無い。


 自分から言い出しておいてなんだが、これでどうやって排除しろと言うのだろうという状態だ。

 ここでやはり重要になって来るのが一華の父の隆一、母の百合、兄の秀一である。

 一華が能力者になった最たる要因は栄一の逮捕だとしても、消えたいと思うまでに孤独をつのらせた家庭環境も要因の一つであることは想像にかたくない。


 しかし、正面から隆一達の話を聞けば良いという単純な話でもない。

 能力がからむと、どんな惨事さんじが巻き起こるか分からないからだ。


 それに加え、一つ気になる事もある。


 この街には能力者を金で雇っている人間がいる――それは俺が一人で排除を始めた当初から感じてきた事である。

 実際に『依頼』を受けていたと証言する能力者を排除した事もある。

 その能力者が言うには、『依頼人』とは一度も接触したことが無いが、その人物の指示通りに能力を使って金銭を受け取ったという事があったらしい。


 その人物を突き止めようと楓に提案したこともある。

 その場面を思い返す――。



「能力者を裏で操る人間がいる?」


 楓はその一言でピンと来たのだろう。

 いつもの薄ら笑いを浮かべた。


「ノゾミにはまだ早いよ。銅の剣でラスボスに挑むようなもんだ。止めはしないけど」

「止めろよ。銅の剣なら」

「仕方ないなあ」


 面倒そうに呟いてから、無理に真面目な顔を作る。


「ノゾミは私の期待に十分に応えてくれているよ。確実に成長しているし、自信も付いて来たのが分かる。けど、今はまだ深入りしちゃいけない。相手が悪すぎるんだよ」

「じゃあ、いつならいいって言うんだよ?」

「ちゃんとヒノキの棒を手にしてからだ」

「弱くなってんじゃねえか」

「タイミングさえ間違えなければ、それでも倒せる相手だよ」



 楓がラスボスと称したのは陸浦隆一の事だったのではないだろうか。

 それはまだ勘でしか無いが、裏で能力者達を操るフィクサーとして隆一ほど好条件を持っていた人物はいない。

 隆一には当然資金力があるだろうし、玖墨の諜報力ちょうほうりょくも手にしていた。

 三津家は可能性が低いと言っていたが、隆一自身も強い力を持つ能力者である事も十分に考えられる事だと思う。


 そんな思考にふけっている間に陸浦邸の前へと辿り着いた。

 塀が高く、門も大きい。

 外からでは家屋がチラリとしか見えない。

 やはりこの街には相応ふさわしくない大豪邸だ。


 それを横目に通り過ぎる。

 門の脇にはチャイムが見えた。戻って押してみるか……いや、やめておこう。

 今の段階では判断材料が余りにも乏しい。

 昨夜の玖墨の時ほど切羽詰せっぱつまってる訳でも無い。

 七原がいなくて、多少無謀な事も出来るという理由だけで、今から乗り込むのは違うんじゃないだろうか。


 帰って策を練るべきだな。


 そう思い、適当な交差点で曲がり帰路についたところで、ポケットの携帯が振動を始めた。

 画面を見ると、七原からのメッセージが来ている。


 『ちょっとここまで来て』


 その一言には地図が添えられていた。




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