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嫌われ者と能力者  作者: あめさか
第六章
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楓の噂


 そして車が動き始める。


 ……安心した。

 霧林の運転は楓と違って安全運転のようである。


「そうだ。三津家にもう一つ聞いておく事があったよ」

「何ですか?」

「楓が今何してるか知らないか? 携帯を鳴らしても出ないんだ」

「ああ。その件は、むしろこちらが聞こうとしていたことです。戸山さんとも連絡を絶ってるのですか?」

「三津家達ともなのか?」

「はい。司崎さんを別の施設に送ると言って連れ出してから、連絡が付かない状態です。しかも、本部に確認したところ、そんな命令は出ていないようなので、理由不明で……」

「司崎さんか……何故だろう。司崎さんはもう能力者でも何でも無いのに」

「私も分かりませんよ」

「連絡が取れないのはいつから?」

「午前中は連絡が取れたらしいんですけど」

「そっか……」


 それが何故なのかを考えてみる。

 思い当たるのは、司崎が早瀬と繋がりを持っていたから、下手なことを吐いてしまわないように……というあたりか。

 しかし、連絡を絶つまでする必要はあるのだろうか……。


 いや、あるな。


 三津家がこの街に来た以上、早瀬の能力云々うんぬんがバレてしまう日が来るのは必然だ。

 俺が知る以外にも早瀬が複数回排除されているならば、いつ能力が再発症してしまうか分からない。その能力がパイロキネシスとなれば不安にもなるだろう。楓が早瀬のそばに付いていたい思うなら、共に身を隠すしか無いのである。

 そうだとすれば、司崎を道連れに選んだ事にも理解が出来た。

 司崎を連れて行けば、口封じが出来るだけでなく、早瀬のボディーガード兼見張り役としても役立つだろう。


 しかし、楓は岩淵と繋がりを持っていて、三津家が呼び寄せられた事にも一枚噛んでいるはずだ。

 わざわざ何故そんな事をしたのかと疑問に思う。

 だが、それも無理矢理だが説明を付ける事が出来た。


 楓はいつもタイミングが大事だと言っている。

 好機も待ち過ぎればいっしてしまう。少しでも良い流れになったら早めに手を打つのが一番良い手だ、と。

 ここでかけに出たという事なのだ。

 三津家を投入することで、一気に話が進むように目論もくろんだのである。


 それを考えると、俺達があの写真を目にする事も楓の意図だったのかもしれない。

 あの写真の持つ意味は非常に重い。

 能力者化を防ぐ養護施設。

 早瀬姉妹、そして陸浦栄一。


 どちらにせよ、楓の描くシナリオもいよいよ終盤戦というところなのだろう。


「まあ、楓さんと突然連絡が取れなくなるってのは、今日に始まった事では無いという話らしいですけど、昨日言った通り色々と悪い噂もある人ですしね」


 と、三津家。


「その悪い噂ってのは?」

「そうですね。分かりました。こちらも腹を割ってお話ししましょう。彼女は有力な能力者と繋がっていて、弱い能力者を差し出させて排除してるんじゃないかって話があるんです」

「それがバレるのを恐れて身を隠したって言うのか?」

「まあ、普通に考えればそうなんでしょうけど、私はそうは思えません。楓さんは頭のキレる人です。何かの意味があるはずです。それに岩淵先生はどうも楓さんの意志通りに動いている節がある。私がここに送り込まれたのも楓さんの意志が働いているんじゃないでしょうか」


 三津家も俺と同じ事に気が付いているようである。

 しかし、同意する訳にもいかない。


「そうなれば話が更にややこしくなるな」


 と、とぼけた。


「戸山さんも楓さんに利用されてるはずですよ」

「ああ、それなら分かってるよ。楓がそういう奴だって事くらいは。それでもいいんだ。俺は自分の正しいと思った事をやるだけだからな」

「そうですね。それが一番です。ですが、楓さんの目論見もくろみってのもやはり重要ですよ。楓さんはああ見えてとても重いものを背負っている気がするんです」

「そっか……分かったよ。頭に入れておくから」


 俺はそう言って頷いた。

 三津家の言葉に正面から応えることは出来ないのである。






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