授業中
授業中。
俺は、さりげなく自分の頭を指差した。
斜め後ろの七原に向かって、『心の声を聞け』と合図をしているのだ。
そして、頭の中で呟く。
『七原、聞いてるか? 聞いてるなら咳払いしてくれ』
もう何度か、これを繰り返している。
昼休みの一件もあったし、七原とは必要以上に近づかないようにするべきだと思う。
だから、こういう手段で情報伝達しているのだ。
後ろで七原の咳払いが聞こえた。
『確認の為に、もう一度』
再び、七原の咳払い。
どうやら俺の心の声を聞き始めたらしい。
『どこに他人の目があるか分からないから、しばらく部活は無しにしよう。思いついた事があったら、こういう風に伝えるよ。わかったら、もう一度咳払いをしてくれ』
咳払い。
どうやら同意してくれたようだ。
『あと、守川には俺が声を掛けておくから心配しなくていいよ。ちゃんと言いくるめて誤解を解いておくから。それでいいだろ?』
再度、咳払いが聞こえてきた。
…………。
なんか女の子の咳払いの声って少しだけエロいよな。
「どうした、七原」
教師が七原に問いかける。
「顔が赤いぞ。風邪か? 保健室行くか?」
「いえ。大丈夫です」
七原はキッパリと、そう答えた。




