4話:おっさん
翌日
9時半には神降神社に着いた僕は一番乗りだったようで30段程の階段を上がり神社に置かれているベンチに腰掛けてモン7を起動した
適当に採取クエストを回しているとサクラも来た様だった
サクラはメジャーリーグのロゴが入った赤のベースボールキャップと大きめの黒Tシャツにダメージジーンズにスニーカーと何とも色気の無い格好で来たがサクラはボーイッシュな格好を好むようで私服はいつもこんな感じだ
……似合っているんだけどね
「うぃーっす」
「うぃーおはやーセイだけ?」
手を上げて隣に遠慮なく座ってくるサクラからは良い匂いがする。そして僕のモン7を覗き込んで
「何行ってんの?もう終わるなら私も準備するけど」
「採取だからもう終わる……よ?」
「ん?」
サクラは僕のゲームを除き込むように前傾姿勢を取っている。更にサクラが着ているTシャツはメンズの大きめの物だ。というより僕のTシャツだ。デザインを気に入られ可愛く「ちょーだい?」と言われたから引っ越してきて仲良くなった時にあげた物だ。
何が言いたいかというとTシャツの首元から中が見えている。
サクラは服装はボーイッシュなのに下着は可愛らしい物を好む様だった。純白のシンプルなカップに覆わストラップやベルトはレースがあしらわれており大人びた印象を受ける
といっても中身である。カップの上部からこぼれる胸は僕の予想以上だったと言っておこう。ガン見していると不意に幸せな視界が遮られる
「……流石に流せないよ。見すぎ……すけべ」
顔を上げるとTシャツの首元を抑え顔を真っ赤にしたサクラと目が合った
「ご、ごめんっ!!」
何をしていたか一瞬で思い出し条件反射のように謝るが、思い出すたびに顔が赤くなり、嫌われたらどうしようと白くなる
「セイも男の子だし今回は許してあげる。私も下にキャミでも着てくるべきだったし」
「すみません」
「もういいわよ。でもセイ凄い睨む様に見てたけどそんなに興味あるの?」
「いや、何ていうか……見たの初めてだったから目が離せなくて」
「ふーん。で、どうだった?」
「はい!?どうだったって?」
「見た感想」
「……ドキドキした。今サクラを女の子として凄く意識してます。はい……」
「……ふ、ふーん。じゃ、じゃあこの話は終わり!」
自分から聞いておいて顔を真っ赤にするサクラと変な告白をさせられどうしていいのかわからない僕が残った
それから気を紛らわせるために最上級クエストをひたすら回して11時を過ぎた頃に加藤先生がやって来た
「すまん!学校に呼び出されて遅れた」
「おはようございます。まあいいですよ」
「おはようございます」
「おはよう。でだ、早速で悪いけど紹介したい人がいるこっちへ来てくれ」
加藤先生はそのまま扉を開け神社の中へ入っていった
付いて行くとそこにはひとりのおっさんがいた。おっさんは僕とサクラを見ると先生に話しかける
「萌ちゃんこの子達?」
「萌ちゃんは止めて下さいってなんども言っているでしょう!でも、この子達です」
「……萌ちゃん」
「萌ちゃん先生。ぷーくすくす」
「お前達何か言いたい事があるようなら聞くが?あぁ?」
「「何でもありません」」
そして萌ちゃんこと加藤先生からこのおっさんの説明を受ける
簡単に言えば先生の姉の旦那さんだった
もっと言えば神様だった
ゲームメーカーKAMIORIのモンスタークエストをこの世に生み出した人であり、プレイした事があれば名前なら誰でも知っている有名人でネット上では神と呼ばれている
でもそうじゃない、実際に神様だった
僕が引越して来た島【神降島】の名前の由来は昔に神が降りてきて神託を授け島の滅びの危機を救った事から付けられたらしい。救ったのはこのおっさんじゃなくおっさんの爺さんらしいけど
それで、救った際にお礼として神様はひと目惚れした島の女をひとり嫁に貰ったらしい。そこからは島の神として神社を建てて貰い崇められてそこで生活を始めた
神の嫁は毎年子供を産むが女の子しか産まれず、産まれてくる子供はどの子も美人に育った。そして20人目に産まれた子が男の子でおっさんの父親だ
神様は男の子を後継者として育て成人と同時に嫁を連れて神界へ帰っていった
そして、新しく神になったおっさんの父親は血縁では無い島の綺麗な女性を20人程嫁に貰い子作りに励んだらしい。そんな中で生まれたのがおっさんらしくおっさんが成人を迎えた際に父親は20人の嫁を連れて神界へ帰っていった
それでおっさんの番になった訳だが、おっさんは女性に然程興味を示さなかったらしい。幼馴染の女の子と小さい頃からゲームをして遊ぶのが好きでゲーム会社を立ち上げた。その際に幼馴染の女の子から好きと言われて居心地の良い場所にはこの子が必要と気づかされ結婚したらしいが子供はまだのようだった
要するにこの島に美人が多いのは神の血を引く者が多いからで僕もサクラも神の血を引いているようだった。ここに呼び出されたのは島民でゲーム好きという事からおっさんが同類と興味を示したからと言われた
で、本題だ。昨日、萌ちゃんと書いた改善要項を見ながら
「君達の要望は面白いけど全部は無理かな~
……この際レベルは無くしちゃおう。そんで、スキルは実際に苦労して覚えて貰う事にして、あとは魔物使いと魔法使いか~
ん~、これは難しいね……よし、魔法は身体強化系の薬と回復系の薬と魔法に変えよう。魔物使いは……まあ後で考えるよ」
ひとりでぶつぶつ言いながら納得してるおっさんに声をかける
「あの……」
「ん?何かな?」
「何の話ですか?」
「ああ、君達にはモン7の中で生活してもらおうと思ってね」
「「はい?」」
「大丈夫だよ?死ぬか戻りたくなったらこっちに戻ってこれるようにしてあげるし~。バージョンアップ後のテストプレイみたいな感じだから」
「いや、何を言っているのか分からないんですけど……」
サクラの方を見ると首を傾げていた。可愛い
「まあ、そんな訳で行ってらっしゃ~い」
話を聞き終える前に僕とサクラの意識は途絶えた