2話
放課後
僕とサクラはサクラの家でモン7をやっていた。何故サクラの家かと言うと学校から近く部屋が広い。その上、家がお菓子屋で適当におやつが出るからである
正直、何度来ても僕は慣れない。サクラの部屋は完全に女の子の部屋でピンクをベースにシンプルな感じだけど、薄っすらと甘いいい匂いはするし、サクラはスカートのまま平気でベッドに寝転んでプレイするし僕はいつもドキドキしっぱなしだった
そんな中で約束の天龍に行く
天龍はソロ前提の村クエストを全て攻略する。次に協力プレイ前提の街クエストを全てクリアする事で満を持して登場する謂わば隠しモンスターだ。体力も多く武器も最大まで強化した上に同一モンスターで全身の装備を作る事で発動するスキルの鋭利(切れ味強化)と剛斬(防御無視)を発動させる必要がある。天龍のブレス攻撃は喰らえばどんな装備でも一撃死と言う鬼畜仕様だ。そんなモンスターを狩り続け5回目の途中でサクラが不意に聞いてきた
「ねぇ?私の事好き?」
「は?」
セイとサクラは力尽きクエストを失敗した
サクラが体を起こしもう1度僕の目を見て質問する
「だから、セイは私の事好き?」
恥ずかしさを隠すように顔を真っ赤にしながら上目遣いかつ指をモジモジさせながら若干強い言葉で聞いてくる
僕は自分の心臓の音が耳に聞こえる位にドキドキしていた。そして
「……えっと、う……」
「さくらーご飯よー降りてらっしゃい。セイ君もいるなら食べてきなさいねー」
答えようとした時に下から邪魔が入る
「もぉーお母さんめ!ぐぬぬー……まあいいよ!今度聞かせてくれる?」
「う、うん」
「じゃ、じゃあ下に行きましょー!夕飯食べてける?」
「今日は母さん隣島で仕事で最終便で帰ってくるからよければお呼ばれします」
「なら良かったー。行こうか」
下に行くとテーブルに僕の分まで夕飯が用意されておりサクラのお母さんとお父さんが待っていてくれていた
「揃ったわね。じゃあ頂きましょう」
「「「「頂きます」」」」
ここは島ということもあり魚介類が食卓に並ぶ事が多い。今日も朝獲れた魚が焼き魚になり並んでいた。そんな食事の最中にサクラのお父さんに話しかけられる
「セイ君は桜に振り回されて疲れないか?」
「いえ、サクラにはこの島に来てからずっと気にかけてもらって本当に感謝してます。おじさんとおばさんにもこうやってよく夕飯をご馳走になったりして本当に感謝しています」
「そんな事はない。食事は皆で取った方がいい。会話が食事を一段階上の美味しさにしてくれるからな」
「そうよセイ君。この人の言う通り。それにおじさん、おばさんじゃなくてお義父さん、お義母さんでいいのよ?」
とんでもない事を言い出すサクラの母に僕は顔を真っ赤にして横を見ると、同じく顔を真っ赤にしたサクラが母親に抗議していた
「ちょっと!お母さん!わたしたちはまだ(・・)付き合ってないのよ!」
「そうなのセイ君?」
「ええ。サクラと付き合ってはいないです」
「ふぅーん。それにしてもまだ(・・)ね。早くくっついちゃえばいいのに。ねぇあなた」
「うむ。好き同士なら時間を大切にした方が俺もいいと思うがな。それにこの島は子供が出来たら島民皆が協力してくれるからな何も心配はいらん」
これが高校生の娘を持つ親の言う事なのか?前と価値観が違いすぎてパニックだった。僕はなんて返していいのかわからずにあたふたしながら食事は終わった。美味しかったのに今日は殆ど味を覚えていない。非常に残念だった
サクラのご両親にお礼を言い家に帰るもまだ母は帰ってきていなかった。今日は隣島で仕事があり夜遅くなると言われていたから得に気にはしない。風呂に入り適当に課題を終わらせ眠りについた
翌朝は寝ている母を起こさないように軽く朝食を摂り家を出る
僕はいつも学校前に海に行くのが日課だった。堤防の上に胡座をかいて座り暫くぼーっとしているのは何故か落ち着く。そんな時に後ろから声を掛けられる
「セーイっ!おはよ」
「サクラ?おはよう。早いね、何でここに?」
「セイいるかなって思ってね。上げて」
両手を万歳して上げてと頼むサクラの破壊力は天龍でも敵わないと思う。両手をしっかりと掴み引き上げる
「風が気持ちいいねー」
「そうだね」
サクラを見ると目を閉じて風を感じていた。同じ様に目を閉じて見ると不意に頬にチュっと柔らかい感触が来る
「えっ!?」
っと目を開けてみると隣には誰もおらず堤防を降りたサクラが顔を赤くしながら
「そろそろ行くよー」
と手を振っていた
そのまま2人で登校し昼休みは何を狩りに行くか話していると加藤先生が入ってきてホームルームが始まる
いつも通りの連絡事項を終えて最後に
「サクラとセイは昼休みに職員室に来る様に」
と言われた。何かしたっけ?
昼飯を食べて2人で職員室に行く
「「失礼します」」
と入ると加藤先生がこっちだ。と手を挙げた
「昼休みに悪いな。それでお前達が仲良くやっているゲームはこれか?」
先生はモン7を見せてくる。僕は
「ええ。先生もやってたんですね」
「まあな。私の姉が開発に携わっているんだ。それでこのゲームで改善してほしい点はあるか?」
「モン7の改善点ですか?そんなの掲示板に凄く書かれてると思いますけど……」
「まあ売れてる本数が本数だからな。どうせならこの島でプレイしているお前達の意見を聞きたい」
「そういう事なら……そうですね……レベルに対するステータスの恩恵がもう少し欲しいのと、装備でのスキル修得ではなくジョブ毎のレベルによるスキル修得へ仕様の変更。魔法使いと魔物使いの新ジョブをプレイをしたいって事位ですかね?実装されるって言ってもう3年ですし。サクラは?」
「うーん。確かにレベルのステータス恩恵は欲しいかも。斬撃速度を早くするとか回避後の硬直を軽減するとか嬉しいね。ソラの言う通りジョブ毎にレベルあってスキル覚えるシステムだと長く遊べるかも!でもバランス保つためにスキルポイントみたいにして欲しいかなー。絶対回避と剛斬に鋭利それから無音なんて付いたらつまらなくなっちゃうし!」
「成る程な。レベルにおけるステータスの上昇に新ジョブの実装、それにプラスしてジョブにレベルを与えてレベルでのスキル修得。スキルはスキルポイント内で装備可能って事だな。お前達の要望は分かった。明日は土曜で学校も休みだから10時に神降神社に来れるか?」
「ええ。僕は行けますけど……」
「私も特に用事はないので大丈夫ですけど……」
「理由は明日来ればわかるから楽しみにしておけ」
そうして放課後は図書室でモン7をプレイしてサクラを家まで送り別れた