空白スペース
ここは、まさに世界の空白と言えるだろう。
何もないのだ。
上も下も、右も左も分からない。
どうにか浮かんでいるというあやふやな感覚はある。
目の前は白だったり黒だったり、赤、青、黄色。なんでもありだ。
形も固まることなく漂っている。
油の膜のような感じすらある。
「世は広くとも、このような場所は経験ないだろ?」
誰かの声が聞こえる。
「誰だ」
俺の声は、遠くへ響いたかと思うと、突然消えた。
「私は私だ。全てであり、一つである。君であり、私である」
まるで禅問答のようだ。
答えが分からない。
「答えがないのが答えだ。そう思わないかね」
目の前である像ができ始める。
俺自身だ。
「君の記憶、知識、歴史は全て見せてもらったよ。合格だ。君のような人材を求めていた」
突然、真っ白になり、それから黒、最後に赤色になってから、他の色が復活した。
「おめでとう、君はここで生まれ変わるのだ」
そこは、綿菓子のような、見た目フワフワな雲の上だった。
しかし、地面のように固い。
「ようこそ、神前騎士団へ。君の加入を歓迎するよ」
はぁ、とため息のような声が、俺はやっとだった。