今、会いに行くよ
周囲にはビルや住宅、様々な店などが見え、それらが広がっている。その間をたくさんの車が通っている。たくさんの人達が渡り歩いている。
やっと……もう少しで君に会える。
――一年前に私の前から消えたあなたに。
君は私にたくさんの初めてをくれた。
初めて優しい笑顔をくれた。
初めて心の休まる笑顔をくれた。
そして――初めての恋を教えてくれた。
好きだった。あなたの声が。
好きだったの。あなたの笑顔が。
意味の無い私の人生に価値を与えてくれたあなたのことが――本当に好きだった。
そんなあなたが一年前に消えた。
ずっとあなたの声が聞きたかった。
ずっとあなたの笑顔が見たかった。
でも、目の前には君はいない。
だから、これは悪い夢。ずっと続いている悪夢。そう望んだ。
あなたが消えた日。……あれは事故にあった私が見た夢で、それからの世界はずっと眠り続けている私が見ている夢なんだ。
だから私が目覚めたら、あなたは私のすぐそばにいてくれてるんだ。
――あの時の笑顔のままで。
そろそろ私は悪い夢から目覚めなきゃ。
ねえ。
私に初めての恋を教えてくれたこと感謝してるよ。
――本当にありがとう。
あなたに伝えられなかったこの言葉を私はこれから伝えに行く。
だから、待ってて。
今、会いに行くよ。
☆★☆★☆★☆
「すいません。凄い人だかりですが、何かあったんですか?」
「ええ……落ちてきたんです。女子高生が。あの病院の屋上から」
「えっ、どうして!?」
「……自殺らしいです」
「そうですか……そんなことが……」
「しかし――その死体変なんですよ」
「変?」
「自殺なのは間違いないんです。なのにその顔は、まるで――」
「幸せそうに微笑んでいるんですよ」