表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/63

始まりのその場所で2




「同じ、末路……?」


 うわ言のように、呟かれる言葉。


 それに、反応したかのようにリーティアが叫ぶ。


 ――あの子を……、シアリートをどうしたのっ!


 リーティアのその叫びに、チェイリルは口角を上げてくすりと嗤う。


「まだ、何もしてないわよ? やる事はひとつ。わかっているでしょう?」


 くすくすくす。

 笑い声が、周囲に満ちる。


 ――くっ、この……

 ――ティアちゃん抑えて。まだ、ダメだって


 今にも飛び出して行きそうなリーティアをアイリードが押さえる中、チェイリルの声が響く。


「あの子は、私の手の内にあるんだから。――なら、先に貴方達を葬った方が、後が楽でいいじゃない♪」


「――なるほど」


 チェイリルのその言葉に、納得したように頷くアルド。


「どーりで、こんな悠長にやってるワケだ。あわよくば俺達も――って魂胆か? どーするよ。彼方さんはヤル気だぜぇ?」


 ニヤリとして呟き、後半は傍らにいるシェダ達に向けて話すアルド。


「やはり、話し合いで解決……とはいきませんか」


 その声にひとつ呟いてシェダは腰の剣に手を伸ばし、エレミアも魔法で作り出した細剣を両の手に握り、ぐっと身構える。

 リーティアとアイリードは言うまでもなかったが、カラミスは。


「…………っ!」


 ガクンとその場に膝をついた。

 それに、ニヤリとしたままアルドはちらりと目線を送っただけで、また眼前のチェイリルに視線を戻し。


「カラミスっ!?」


 驚いたエレミアの声に、傍らにいたシェダがカラミスに振り返ろうとした所で、カラミスが静かに言葉を紡ぐ。


「……いいですから。僕に、構わず前……、据えててください。エレミア、君も、気にしてる余裕……、なんてないでしょ」

「カラミス、ですがっ」


 尚も何事か言い募ろうというエレミアに、カラミスは微笑を返し。

 それに虚を突かれ、二の句が告げないエレミア。

 その間に、するりとアルドが口を挟む。


「――お前は、゛感じ″られてんだな。どんな感じだ? 言ってみろよ」


 それに、こんな時に何を悠長な、という視線が投げられるが、アルドは此方を見向きもしない。あくまで、視線はチェイリルを据えたまま。

 それに一つ息を吐いて。


「……なん、なんですか、この場所(ここ)。流石、いわく付きなのも頷けますよ……。色んな(モノ)が、混ざり(めぐ)っていて……はっきり言って、物凄く気持ち悪い、です。それに……さっきのアレのせいで、余計……っ」


 はぁ、と吐息を吐き出し辛そうに、途切れ途切れ告げるカラミスに、アルドは満足気に口角を上げて。


「――そこまで感じられてんなら、やっぱお前で決まり、だな。後は、予定通り頼むわ。あぁ、そうそう。因みに、アレってーのは何かってゆーと、だな」


 さらりとそんな事を決定づけて、先程起こった゛切り替え″を、聞いてもいないのに教えてくれる。


「持ってきやがったんだよ、過去(まえ)から。現在(あと)の筈の今のこの場所に。儀式をやり直す為に、過去(ある)トコから、舞台(ステージ)を引っ張り出しやがったんだ」

「……そんな、……無茶苦茶な……」


 と呟きながらも、カラミスにはそれが、真実(ほんとう)なのだと確信している。


 多種の高魔力密度に加え、なんとも形容し難い、゛不可思議な力″が漂う中。そこに更に、゛異物″をねじ込まれたかのような――気味の悪い、感覚。

 感覚機能をもみくちゃにされただけでは収まらず、尚且つそこに、更なる揺さぶりをかけられたかのような、激しい目眩と嘔吐感。


 ゛魔力酔い″だ。


 多すぎる魔力を感じ取りすぎてしまうが故に起こる、魔力感知器官不全――


 本来なら、皆無意識に選り分けて感じている筈のモノだが、(いささ)か場所が特殊すぎた事と、転移なんて学生の時分ではかなりの大仕事を成し遂げた後で、危機感よろしく、その一つひとつを、敏感に察知し触れてしまったのだろう。


 元々この場所にあった不可思議な力と、現在(いま)、この場所に漂っている魔力(モノ)と、過去から引っ張り出された、ある筈の無い過ぎ去った筈の魔力(モノ)を。


 どちらかと言えば文系のカラミスに、他の者達程のタフさはない。

 そんな、ある意味異質な魔力密度が荒れ狂っているこんな場所で、一人膝を折ることになったとしても、それは仕方のない事だった。


 (うずくま)るカラミスに、リーティアとアイリードが心配そうに寄り添う中、シェダがアルドに囁く。


「゛持ってきた″……って、言葉通りの意味、ですか」

「あぁ、そーだよ。さっきティアが言ってたろ? 世界を傷付けちまったから、代償を支払わなきゃならねぇってさ。それは、四季のガキ(アイツら)も同じなんだよ」


 そこで一端言葉を切って、続ける。


「何が起こっていようと、世界は変わらずに巡り、廻る。今この時も同様にだ。そしてそれは、あのガキ共にも言えんだよ。現在(いま)も゛喰われ続けて″んのを回避する為に――、゛世界を傷付ける前″の、過去を引っ張り出してきやがったんだ。一時的にでも、力の流出を防ぐために、な」


「と、言う事は……彼女達の代償は、その魔力、だという事ですね」


 呟くシェダに頷くアルド。

 一度やり合った時の感覚を伝える。


「あぁ。シアもそうだが、みょ〜に安定してなかったからな。まぁでも、アイツら゛上手い事″してるよ。今となっちゃ、もう元に戻ってるだろうが」


 だかそれも――、と続けようとした所で、


「……そろそろ、心の準備は出来たかしらぁ? ま、待っててあげてもいいんだけどね〜。長引けば長引く程、不利になるのはアンタ達なのよ?」


 待っているのもそろそろ飽きた、といった感じでチェイリルが口を挟む。

 その傍らには、いつの間にかシアを抱いたナシグが、ひっそりと寄り添っていた。


「――いよぅ。やっとお出ましかよ。随分な重役出勤だなぁ?」


 それを特に気にするでもなく、軽口を叩くアルド。

 しかし、当のナシグはそれに答えるでもなく、パチリ、指を弾いて出現させた豪奢な赤布張りの椅子に、目を閉じたままのシアを座らせる。


 ちらちら揺らめく周りの業火と、同色の髪がさらり、風に流れる。

 着ているドレスのような服も、地は白なのだろう、火の色を照り返して緋色に煌めく。


 その光景と真逆のソレに――、アルドやリーティア達以外の者達が息を飲む。


 先程は唐突だったせいか特に注視していなかったのだが、ソレは、あまりにも異質だった。


 周りの炎など、まるで存在していないかのように――、白。

 ゛あか″の世界にあっても尚、その白は、全てを拒絶するかのように、汚れる事無き白磁だった。


 まるでこの場所そのものかのように――、その白は常軌を逸していた。


「……あ、れが……四季の……」

「……色、無し……」


 喉から絞り出された言葉は、掠れて風にさらわれていく。


 無理もない。

 四季の者が表舞台から退いて久しく、彩髪を目にする事すら稀だという時代に、それより更に稀少な、゛色無し″を見る機会などある筈もない。

 彩髪や白色の者達がいる、と知識として知っていたとしても、実際に目にするのとではワケが違う。


 その印象、存在、纏う空気は、刻み付けられたかのように、強烈だった。


 目の前のモノから――、目が離せなくなる。


 半ば呆然と、眼前のナシグを見やるシェダ、カラミス、エレミア。


 それはただの驚きか、はたまた異様、異質な存在(モノ)に対する、防衛としての恐怖(本能)か。


 面々が判断を付けかねている中、すぅ、とナシグが此方を向き直ったのを合図とでもするように。


「さぁ――、はじめましょうか?」


 一声の元、戦線の火蓋は切って落とされた――





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ