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忍び寄る影6


「よーシェダ。終わったか?」


 ふわり、周囲に風を纏ってその場所に戻ってきたアルドは、まるで挨拶でもするかのように軽く問いかけた。


「……随分、遅いお帰りでしたね、アルド。その分だと、あちらは上手くいったんですね」


 と、こちらも世間話でもするかのように、淹れたての紅茶を優雅に頂きながら答えるシェダ。


 まるで先程の戦闘などなかったかのように。


 実際、秘密基地である地下一階のシェダの私室は、壊された物もなければ、細かい刺繍の施された絨毯には、シミひとつとして残されてはいなかった。


「――まぁな。上手いこと迎えが来ててな。こっちは楽なモンだったぜ」


 椅子を引いて向かいに腰を下ろし、空いているカップに紅茶を注ぎつつ告げるアルド。


 香りを楽しんでから一口含み、


「ちょっくら面倒臭ぇことになりそうだが、想定内のことだし、気にすることでもねぇよ。それより、そっちはどうなんだ?」


 一気に告げて皿に並べられているクッキーをひとつつまみ、かじる。


「――来たのは五体。全て影で小物でしたが、秘密基地(ここ)に入って来られたことを考えると、裏で力ある者が手引きしている可能性がありますね」


 水精の鏡写しの術を展開し、先程の戦闘で入手した映像を投影しながら続けるシェダ。


「まぁ、影を通して精神的に付加をかけさせて頂きましたので、この五人は使い捨てられたと見ていいでしょうね」


 にっこり、黒く微笑んで事もなげに告げる。


「――……。あ、そ。まーそんじゃソレは、取り合えず放っとくかぁ」


 ずずーっと紅茶をすすりながらさらりと告げて、シェダの展開した術を手をひらひらと振って無効化し、


「――今の本題はこっち、だな」


 懐から取り出した゛金の腕輪″(リング)をテーブルに置きながら告げるアルド。


「…………………」


 それを驚いた顔で見やって、しばし固まり。こめかみを押さえて深々とため息を吐くシェダ。


「――よくもまぁ、堂々とくすねてきましたね」


「そうでもないぜ?――こいつは一度、シアの手を離れてるからな」


 リングをくるくると回して弄びながら、アルドがさらりと言い。


「…………計算済みだったんですか……」


 アルドのその言葉に、遠い目をしてシェダが告げ。


「代わりを付けさせてるから、たぶん暫くは気付かねーだろ。その間にちゃっちゃと調べちまえばいーんだよ」


 全く悪びれる事なくアルドが続ける。


「大体、これはお前の為を思ってやってんだぜ?出所不明なモノを所持してんのがバレたら、何言われるかわかんねぇだろが」


「――私の為というならそもそもこんなもの、無断で借りて来ないでくださいよ……」


 それに更にため息なシェダ。頭が痛いことこの上ない。


「まー、過ぎたことは気にすんなって。お前だって気になってるだろ?あいつ(シア)、まだなんか隠してやがる」


 皿上のクッキーを空にしながら、面白くないという顔をするアルド。


「……アルド、まさか……彼女(シア)のこと、調べあげるつもりなんですか?」


 アルドのその言葉に、少なからず怒気を含んでシェダがアルドを睨み付け。


「そんな怖い顔するなって。ちょーっとだけだって」


 シェダの態度に苦笑して告げるアルドだが、視線の鋭さは変わらず、やれやれとため息を吐いて続ける。


「……ある程度は解ってるつもりだが、確信してるわけじゃねぇ。もしもの時、対処出来なかったらマズイだろが」


「――随分気にかけているんですね、彼女(シア)のこと。ですが、隠しておきたいことのひとつふたつ、あるでしょう?アルドだって。それは、私には話してくれてませんしね?」


 今更、止められるとは思ってないが、言っておかなければならないことは言わなければ、とシェダは続ける。


「……出来る所までしかやりませんよ。それに、それでアルドがシアに嫌われたとしても、私は知りませんから。――それから」


 ひとつ、息を吐き。

 すっと緑翠の目を細めてアルドを見やり。


「……結果としてそれが(彼女に対して)良くないことだったとしたら。私は、アルド(あなた)との゛縁″を、切ります」


 静かに言葉が告げられた直後。

 一瞬だけ緑翠と黒の瞳がぶつかり合い。

 そっと緑翠の瞳が伏せられる。


「――おぉっとぉ。一気に゛この国唯一の大魔導師様″存亡の危機かよ。ま、それも当然といや当然か。仕方ねぇ。けどな、シェダ?」


 おどけて告げて肩を竦めて見せてから、アルドはニヤリと言った。


「お前の予想通りにゃいかねーよ?あいつ(シア)は勝手に調べたことには怒るかも知れねぇが、俺を、……俺達を、嫌ったりなんかしねぇよ」


「…………(はぁ)。……本当に、どこから来るんですか、その自信は」


 アルドのアルドらしい言い種に、呆れてため息を吐くシェダ。


「――あいつ(シア)はもう、本当に長いこと、それこそずっとずーっと、手を延ばし続けてんだから」


 その言葉の意味はシェダにはわからなかったが、なにやら物思いにふけっているらしいアルドの皿とカップに、無言で菓子と紅茶を追加してやった。





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