横柄だが、許可します‥
不思議な空間でした。うまく伝わればいいのですが‥
1月中旬、土曜日の夕刻6時、所用にて三宮の神戸市役所を左に見ながら南下した。
冬の6時は既に暗く、人影も極端に少ない。
震災メモリアルを幾日後かに控えたせいかどうかは知らないが、頭上を一機のヘリが飛ぶ。
その辺りの通りを歩く時、僕は決して晴れやかな気分にはなれない。
まだ僕がボーナスを貰うことができた時分、その辺りの会社に勤務していたり、その会社で嫌な目にあったことを思い出したり、直後の阪神・淡路大震災の爪跡、その後のデフレ時代突入など、とにかく塞ぎ込むことばかりを思い出すからである。
で、右手のビルに急に華やかなシーンが拡がり、驚くやら、目を疑うやら‥‥
煌々とした灯りの下、一番目の窓には、純白のウェディングドレスの乙女が立っていた。
乙女は自らの全身を鏡に映し、ほとんどホームレス姿の僕は、黒服のブライダルプランナーとあれこれ相談する、鏡に映った乙女を見ることになった。
通りは極端に寒いが、向こうの室内は標準以上に暖かく設定されているのだろう、新婦の露出さた肩は眩しく輝き、セクシーだった。
二番目の窓には、その新婦を待っているのだろう、豪華なソファーで脚を組む新郎がいた。
新婦が完璧となり、黒服プランナーからOKサインを聞かされると、新婦に近寄り、「綺麗だねぇ‥‥見違えるよ」
などと言うんだろう。
三番目の窓にはまた別の新婦が鏡の前にに立ち、四番目には、見ただけで横柄な様子の新郎が退屈げに座っていた。
五番目にも、さらにセクシーな乙女が立ち、六番目は、新婦姿の完成を待ち侘びていた。
七番目の窓からは、黒服が2、3人あれやこれや緊急の業務連絡をしている姿が見てとれた。彼女たちも、相当に美人だった。
別に、新婦の見える窓で立ち止まりはしなかった。
新婦の目からは、鏡に映るであろう、通りに立つ、ホームレス風の中年男は邪魔な存在であろうと理解もできるし、僕も特に新婦を眺めて喜ぶ趣味もない。
だが通り過ぎた後も、横柄な新郎のふんぞり返る姿は気になった。
もちろん、照れ臭さを「横柄」で紛らす気分も解らないではない。
マガジンラックにどんな種類の雑誌が置いてあるのか想像もつかないが、僕が新郎であれば、まったく興味のないゴルフ雑誌のページをめくり、ゴルフコースの写真でも眺めるんではなかろうか‥‥
新婦は3人が3人とも相当に美しかったし、新郎、もしくは新郎側の社会的立場もかなり上流であろうことは想像がつく。
繰り返しになるが、こちらはホームレスすれすれ、カウント2.5くらいの、危うい、自称「作家」である。
言いたいことは山ほどあるが、もう何も言うまい。
新郎殿、美しい新婦さんではないですか!!はやく子供を三人以上産んで、国民年金を安心できるシステムに戻してくださいね。
お願いします。
所用は9時には終わり、三宮のバーなどの雑居ビルの立ち並ぶエリアを久しぶりに散策した。
歯抜けとなり、青空のコイン駐車場となってしまった箇所が散見され、東欧諸国からの金髪美女がセミヌードで踊ってくれる老舗のクラブでさえ、ステーキハウスになっていた。
不健全な遊び場が撤退するようであれば、これで果たして都市と言えるのか、と言ってみたくもなる。
対比の妙を判っていただければ幸いです。