玉座と巫女
――王さま。あなたは何を望まれますか。
身震いをする。
玉座から眺める広間はただ広いだけで、冷たい印象を受ける。
後ろに控える女に人の心は期待できないのだから、やはりこの部屋は寒いだけだ。
暗鬱とした気に浸りながら、背もたれに体重を預けて手の甲に顎を乗せる。
民を失い、家族を失い、夢も希望も失った。
諦念と無為が心を占めている。
いつか――そう遠くないうちに――この絶望に取り殺されてしまうことだろう。
――王さま。
だというのに、この女は。
まだ私に求めよと言う。
苛立ちながら振り返る。
巫女の無垢な視線と目が合う。
彼女はどうしてこれほどまでに穢れを知らずにいられるのだろうか。
簡素に白い布を身に纏っただけ肢体は、神の寵愛を受けていることを納得させるだけの美しさがある。
だというのに、私はこの女が恐ろしくてならない。
彼女は慈愛以外の表情を浮かべることはない。
太初は国の豊かさを祈った。
次に繁栄を祈り、家族の幸福を祈った。
だというのに――目の前には誰もいない朽ちた光景が広がっている。
どうしてこうなったのか。何を間違えたのだろう。
昼夜を問わず、国のため人のために数多の祈りを捧げた。
けれど願うほどに望みからは程遠くなっていく。
――もはや、何が望みだったかも思い出せぬ。
既に国土は荒廃し、民はいなくなって久しい。
王家は滅亡し、私の跡を継ぐ者はいなくなってしまった。
慈愛でもって女が囁く。
――王さま。あなたの望みを仰ってください。
もはやこの世界に興味はない。
どこにも望みはない。
「それでさ、あなたは結局何を望むの」
「お前と、お前の望むものを」
「バカね。それじゃ私と一緒じゃないの」
「この世界にふたりがいれば、それでいい」
「しょうのないひと」




