図書館
三題噺もどき―はっぴゃくよんじゅうさん。
静かな館内では、ブーツの音というのがよく響く。
わざと響かせているのかと思うくらいに、よくよく響いている。
「……」
それをうるさいとは思わないし、スニーカーでも多少足音は聞こえてしまうのだから、仕方がないと思う。時折、時計の針の音ですらきこえてくるのだ。人が居るはずなのに。
ここに居て、うるさいと思うのは、人の話声だ。
小さなささやき声ならまだしも、ただの会話をするのにも少し緊張する。
「……」
それだと言うのに、館内に設置された机では、どこかの学生が固まって何かをしていた。
制服を着ている以上、身元の証明をしているようなモノなのに、よくそんなことができる。
コソコソとしていると思えば、突然わっと笑い声をあげたり、話始めたり。
「……」
まぁ、図書館という場所は、確かに勉強には持って来いではあるが。
なんというか、ここはお喋りの場所ではないと言うことを知らないのだろうか。
そもそも、彼らが勉強をしているのかどうかも分からない。
「……」
少し用事があって、図書館に来てみれば、こんな集団と遭遇するとは。
そんなに早い時間でもない、夕方と言えば夕方の時間だ。
今日だって、いつもより下校時間は早いが普通に学校はあった。……普通にと言うか、クラスマッチだったから早い時間に帰っている。正直、ジャージのままで帰りたかったが、それは校則で許されていないので、制服を着ている。
「……」
重たいリュックサックを背負ったまま、本棚の前で探し物をしていた。
たいして広い図書館でもないので、通路を横切るのに申し訳なく思うが、この鞄に財布やらスマホやらが入っているので、置いておくわけにはいかないのだ。
「……」
図書館にきてすぐは、いつも通りの、静かで居心地のいい場所だったのに。
いつから来ていたのか、あの集団が来てからというもの、声がやけに耳に触るし、人の足音でさえ反応してしまう。それくらいどうってことないのに。
「……」
もう少し離れた位置に居ればいいのだけど、何せ探している本がこの辺にあるのだ。
騒がしい集団の真横……うるさくって仕方ない。
探すのにも集中できないし、ここにあるのかもわからなくなってきた。
「……」
実は、ほんの数分前に司書さんらしき人が注意はしていたのだ。
それからすぐは静かにして居たけれど、ああいう人たちはすぐに忘れてしまうのだろう。頭が悪いのかな。
「……」
あぁだめだ。
探すのにも気が散ってどうにも。
明日また来なおそうかな……うるさすぎて話にならない。
明日までクラスマッチですぐ帰れるし、あの子も図書館に行きたいと言っていたから、誘って来てもいいかもしれない。……そうするか。
「……、」
と、踵を返したところに。
足元に何かが転がってきた。
白くて丸い……消しゴムだろうか。
拾い上げると、少し汚れているのが目に付いた。ゴムのぐにぐにとした感触が指先に帰ってくる。消しゴムって不思議だよなぁこれで消せるんだから。
「あ、」
「……」
持ち主は、あの喧しい集団の1人だったらしい。
転がった消しゴムを追いかけて、こちらまで来ていたようだ。
どこか気まずそうに声をあげ、手を伸ばそうとしていた。
「……どうぞ」
「、ぁり………ます」
小さな声で、そういい捨ててそそくさと戻っていった。そこははっきり言ってもいいんじゃないか。
うん、もう少し愛想よくすればよかっただろうか……しかしこちらは色々と邪魔をされている立場なのだ。愛想もくそもないだろう。
そもそも静かにしていれば何も問題はないのに。
「……」
そそくさと戻っていった矢先に、何やらひそひそと話し始めたが。こちらをチラチラとみているようだが、何を……ああいう人たちって何を考えているのかほんとによく分からない。
まぁ、私にはもう関係のないことだ。
もうさっさと帰って、家でゴロゴロするとしよう。
「……」
明日もクラスマッチかぁ。
まぁ、どうせ写真を撮っているだろうし、明日は準決勝と決勝のみだ。
写真を撮ることに集中できるのでありがたいな。
お題:消しゴム・ブーツ・図書館




