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EARTH Online  作者: 甘太郎
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第76話 『偶然は偶然じゃない』

【第一幕:商店街・出てこない金色の玉】


四月の夕方、日が暮れるのが少し遅くなってきた。


楽はスーパーで夕食の食材を買い終え、ずっしりと重い買い物袋を提げていた。でも、その気分はとても軽やかだった。レジで店員が教えてくれたからだ。「五千円以上お買い上げで、抽選券を五枚差し上げます。隣の旅行代理店のイベントで、一等賞は沖縄四泊三日のファミリーパックです」


楽の目が輝いた。


沖縄。四人で。ちょうど天神、琪琪、加美を連れて行ける。


五枚の抽選券を握りしめ、彼は旅行代理店の前の抽選会場へ向かった。抽選箱は古びた木箱で、側面には金属のハンドルが付いている。看板にはこう書いてあった。一等賞は金色の玉、二等賞は赤い玉、普通賞は白い玉。


「五回もやれば、一回くらい当たるだろ?」


彼は一枚目の抽選券を老婆に渡し、ハンドルを握った。


ガラガラ、ガラガラ、ガラガラ――


木箱の中から玉が転がる音がする。中が見えないので、ただ待つことしかできない。


最初の玉が出口から転がり出た。


白。普通賞。ティッシュペーパー一包み。


「大丈夫、あと四回ある」


二個目。白。ティッシュ。


三個目。白。ティッシュ。


四個目。白。ティッシュ。


楽は汗ばんできた。手の中の四包みのティッシュを見つめ、それから沈黙した木箱を見つめた。


「最後の一回だ」


深呼吸をし、目を閉じて、大げさなラッキー・ジェスチャーをした――十字を切り、仏様を拝み、観音様まで呼び寄せた。そして、力いっぱいハンドルを回した。


ガラガラガラガラ――


玉が出てきた。


白。


またティッシュだった。


楽は抽選会場の前に立ち、平凡なティッシュ五包みを手に提げていた。木箱の中の金色の玉は、最後まで現れなかった。


「なんでだよ……」彼は小声で言った。その口調には少し悔しさが混じっていた。


彼は欲張りなわけじゃない。ただみんなと一緒に旅行に行きたかっただけだ。


おばあさんはにこにこしながら慰めた。「若い衆、気にしないで。ティッシュは実用的だよ。家で使えるからね」


楽は無理に笑って、五包みのティッシュをエコバッグに詰め、平心湯へと戻った。


彼は不機嫌だったわけではない。ただ、ほんの少し……落ち込んでいただけだ。


---


【第二幕:平心湯・夕食】


夕食の時間、四人はちゃぶ台の周りに座っていた。


加美は楽がいつもより静かで、茶碗の中でご飯をあちこちにかき回しているのを見て、思わず尋ねた。「楽、どうしたの?」


楽は箸を置き、エコバッグから五包みのティッシュを取り出して、テーブルに並べた。


「さっきスーパーで買い物してたら、抽選券を五枚もらったんだ。一等賞は沖縄四泊三日のファミリーパックで……みんなを連れて行けると思って、当てたかったんだけど。五回やったのに、全部ティッシュだった」


加美は一瞬固まった。彼女はその五包みのティッシュを見つめ、それから楽の悔しそうな表情を見つめて、目が少し赤くなった。


「バカ……私たちのためにやってくれたの?」


楽はうなずいた。「うん。加美さんは毎日いろんな問題を処理しなきゃいけなくて、きっと疲れてるし。琪琪も、天神も……みんなでゆっくりリラックスできたらいいなと思って」


琪琪は一包みのティッシュを手に取り、電子眼が優しい青い光を放った。


「確率計算によると、五回で一等賞を当てる確率はほぼゼロに近いです。でも……あなたの気持ちは、私たちみんなに伝わっています」


天神は何も言わなかった。ただお椀を持って、じっと楽を見つめ、口元にほんのりとした微笑みを浮かべているだけだった。


楽はその微笑みの意味を理解できなかった。でも、心の中のほんの少しの落ち込みが、何かにそっと支えられているように感じた。


---


【第三幕:深夜の動画】


風呂上がり、楽はベッドに横たわり、枕を抱えて、何気なくスマホをスクロールしていた。


まだあの五包みのティッシュのことを考えていた。悔しいわけじゃない。でも、うまく言えない感覚があった――何かを逃したような、でもそうでもないような。


いくつかの退屈な笑える動画をスクロールした後、彼の指がある動画で止まった。


タイトルは『幸運ってなに?』


彼は再生ボタンを押した。画面はとてもシンプルで、優しい声が話し始めた。


---


一つ目の物語。


冬、北海道。


若者が最終バスに乗って家に帰ろうとしていた。駅で長く待った後、ようやくバスが到着した。彼は駆け寄り、乗り込もうとした。


バスのステップに足をかけようとしたその瞬間、ポケットから携帯電話が落ちて雪の中へ転がっていった。彼は慌ててかがんで拾った。


その数秒の間に、バスのドアが閉まり、出発してしまった。


彼はとても怒って、雪の上で足を踏み鳴らした。「なんでこんなに運が悪いんだ!数秒差じゃないか!」


彼は別の道を歩いて帰らなければならなかった。それは普段あまり人が通らない山道だった。


途中まで来たとき、突然ゴロゴロという大きな音が聞こえた――雪崩だ。


さっきバスが走っていた主要道路は、大雪で完全に埋まってしまった。


ニュースによると、そのバスは雪に閉じ込められ、乗客は負傷し、道路は数日間封鎖されたそうだ。


若者は山道に立ち、自分の命を救った携帯電話を握りしめ、全身が震えた。


そう、あの時の「乗り遅れ」が、彼の命を救ったのだ。


---


二つ目の物語。


東京、春。


大学を卒業した女性が、ある大企業の面接通知を受け取った。彼女は長い間準備をし、面接の日は新しいスーツを着て、早めに家を出た。


道の半分まで来たとき、彼女は路地の小さなパン屋の前で、おばあさんが転んで、籠の中のパンをあちこちにばらまいているのを見た。通りすがりの人たちはみんな仕事に急いでいて、誰も立ち止まらなかった。


彼女は迷った――手伝ったら遅刻するかもしれない。この仕事を逃すかもしれない。


しかし、彼女はおばあさんの苦しそうな表情を見て、心を決めた。「どうせだ!」


彼女は駆け寄っておばあさんを起こし、パンを拾い集め、家まで送っていった。


結果、彼女は二十分遅刻して、面接の資格を取消された。


彼女はとても悲しくて、自分は良いことをしたのに報われなかったと思った。


しかし、パン屋の主人――実はおばあさんの息子だった――は一部始終を見ていた。彼はとても感動し、彼女に話しかけてみると、彼女がとても思いやりのある人だと分かった。


主人は言った。「うちの店ではちょうどコミュニティのサービスを手伝ってくれる人を探しているんだ。よかったら来てみない?」


彼女はそのパン屋に加わり、その仕事がとても好きだと気づいた。彼女は地域の多くのお年寄りを助け、毎日充実した日々を送った。


数年後、彼女は地域で一番人気のある人になり、最初にあの大企業に入っていたときよりもずっと幸せで、意味のある人生を送っていた。


そう、あの時の「失ったこと」が、彼女を本当に属する場所へ連れて行ったのだ。


---


動画の最後に一行の文字が現れた。


「あなたが与えたものは、あなたのもとに戻ってくる。時には、あなたが不運だと思うことは、もしかすると宇宙があなたを守っているのかもしれない。あるいは、あなたの優しさがより良い場所にいるのに値するということなのかもしれない。」


楽はその一行を見つめて、心の中で何かがそっと動いたような気がした。


彼はまた別のショート動画をスクロールした。


誰かが質問していた。「もし六百円落としたら、悲しくなりますか?」


多くの人が「はい」と答えた。


動画は言った。「もし八万六千四百円持っていて、六百円落としたら、その六百円のために、残りの八万五千八百円も全部捨ててしまいますか?そんなことないでしょう。」


「実は、一日は八万六千四百秒です。あなたは六百秒の不運のために、残りの八万五千八百秒まで悲しく過ごす価値がありますか?」


楽は「ピン」ときた。


スマホを置いて、天井を見つめた。


夕食の時のみんなの笑い声、目を赤くして「私たちのために」と言った加美の顔、琪琪の電子眼の優しい青い光、天神のほのかな微笑みを思い出した。


彼はふと、心の中の「なんて運が悪いんだ」という石が、少し軽くなったように感じた。


消えたわけじゃない。ただ……前ほど重くなくなったのだ。


---


【第四幕:春の朝】


翌朝、楽はいつもより三十分早く起きた。


カーテンを開けると、陽光が一気に差し込み、畳の上に落ちて、温かかった。窓の外の桜の木はもう新芽を吹き始めていて、若草色のそれが朝の光の中でかすかに輝いていた。


遠くから数羽の小鳥のさえずりが聞こえてきた。澄んだ、短い声で、まるで春が本当に来たのか試しているようだった。数回鳴いた後、さらに多くの鳥たちが加わり、賑やかにさえずり合い、木全体が賑やかになった。


楽は窓の前に立ち、長い間、それを見つめ、そして長い間、耳を澄ませた。


昔の彼はこんなふうに木を見たり、鳥の声を聴いたりしなかった。昔は「木は木、鳥の声は鳥の声」と思っていて、特別な何かを感じることはなかった。


でも今日は違う。彼はふと、あの新芽がとても可愛いと思った。枯れた枝から顔を出し、少しずつ、まるで「僕はここにいるよ、春が来たよ」と教えてくれているようだった。


鳥の声も心地よかった。名曲というわけじゃない、ただの小鳥たちのおしゃべりだけど、なぜか聴いていると心が軽くなった。


服を着替え、庭へ向かった。


琪琪はもう花壇のそばにしゃがみ込み、芽を出したばかりの小さな苗に水をやっていた。彼女の動きはとても優しく、とてもゆっくりで、何か大切なものを世話するように。


「おはよう」楽は近づいて、彼女の隣にしゃがんだ。


「おはよう」琪琪は顔を向けて、電子眼に柔らかな光を宿した。


二人は一緒にその小さな苗を見つめた。小さくて、緑色で、土から顔を出したばかりだった。


「見て」琪琪がそのうちの一株を指さした。「昨日はまだこれがなかったのに、今朝出てきたの」


楽はうなずいた。彼はその小さな苗を見つめながら、心の中にとても不思議な感覚が湧き上がるのを感じた。


興奮でも驚きでもない。ただ……静かで、温かく、何かにそっと包まれているような感覚だった。


そのとき、一陣の温かいそよ風が吹き抜け、彼の頬を優しく撫で、琪琪の額にかかった数筋の髪も揺らした。風には土の香りと、ほのかな草の青い香りが混ざっていた。


楽は一瞬目を閉じて、その風がゆっくりと、ゆっくりと過ぎ去っていくのを感じた。


彼は昔はこんな感覚を持ったことがなかった。


これが何なのか、彼には分からなかった。ただ、今日の陽ざしは特別に良くて、風は特別に優しくて、土の香りさえも特別に心地よいと感じた。


彼は立ち上がり、遠くの山を眺めた。山も緑に染まっていた。


「そうか、春が来ていたんだ」彼はそっと言った。


琪琪は答えず、ただ水をやり続けた。でも楽は彼女も微笑んでいるのを感じた――顔ではなく、もっと深い方法で。


彼は家の中へ戻り、カウンターを通り過ぎるとき、足が自然と遅くなった。


陽光が窓から斜めに差し込み、天神の上に落ちていた。天神は猫バス抱き枕の後ろにうずくまり、スマホでアニメを流している。いつもと全く変わらない。


でも楽はふと、この光景さえも美しく見えると感じた。


光景が変わったからじゃない。彼の見方が変わったからだ。


---


【第五幕:天神のひとこと】


天神は顔を上げて、楽を一瞥した。


そして、彼は笑った。


その笑顔は、まるでずっと頑張っている小さな子が、ようやく何か新しいことを覚えたのを見るような笑顔だった。


「どうやら」と天神はそっと言った。独り言のような、でも楽に向けて話しているような口調で。「どうやら、ある小さな友だちがレベルアップしたみたいだね」


言い終わると、彼はうつむいて、またアニメを続けた。


楽はそこに立って、一瞬固まった。


レベルアップ?


彼は今日自分がしたことを考えた――桜を見た、鳥の声を聴いた、花壇のそばにしゃがんだ、春の風を感じた、陽ざしが良いと思った、風が優しいと思った……


これが「レベルアップ」というものなのだろうか?


彼には分からなかった。


しかし、彼はふと思い出した。


昨夜の動画、今朝の新芽、あの鳥の声、あのそよ風、水をやる琪琪の後ろ姿、天神の「何かが変わったね」という笑顔――


それらが全部一つになって、まるで見えない糸のように、彼をずっと気づかなかった場所へと引っ張っているようだった。


彼はかつて、幸運とは金色の玉を引き当てること、沖縄に行くこと、何か素晴らしい賞品を得ることだと思っていた。


でも今、彼はこう考え始めている。幸運はそんなものじゃないかもしれない。


幸運とは……今朝起きたとき、ちょうど陽の光が自分の顔に当たっていたこと。


幸運とは……庭に出たら、ちょうど琪琪が水をやっていたこと。


幸運とは……あのそよ風が、ちょうどいいときに吹いてきたこと。


幸運とは……天神が顔を上げて、自分を見て、そして笑ったこと。


これらのことはずっとそこにあった。ただ彼が今まで気づかなかっただけだ。


そして今、彼は気づき始めている。


楽はそっと微笑んだ。


何も言わず、涙も流さなかった。ただ心の中の「なんて運が悪いんだ」という石が、いつの間にか消えていた。


彼は台所へ行き、あの五包みのティッシュを開け、一巻きずつ戸棚に並べた。


加美が来てそれを見て、笑った。「わあ、ちょうど家のティッシュが切れてたんだ。楽、君はまさに渡りに船だね」


楽は笑って言った。「そうだね、五回やって、五つ揃ったよ」


彼は本当は沖縄を引き当てたかったとは言わなかった。


なぜなら、彼はふと気づいたからだ。この五包みのティッシュにも、それぞれ物語があるのだと。ハンドルを回すたびの期待、開けるたびの失望、最後に動画を見た後の解放感――それらの全ては、彼自身のものなのだ。


そして、彼のスマホにはあの二つの動画がまだ残っている。


暇なときに見返すだろう。自分に言い聞かせるために。


自分が欲しいものを引き当てられなかったと思うかもしれない。

でも実は、あなたはとっくに最高のものを手に入れていた。

ただ、それに気づいていなかっただけだ。


窓の外、春の日差しが差し込み、あの五包みのティッシュの上に落ちて、平凡だけど温かかった。


楽は深く息を吸い込んで、今日の天気は本当にいいなと思った。


---


【天神からのPM|読者の皆さんへ】


親愛なる友よ。


今日、あなたは小さなことで悲しくなったりしませんでしたか?


例えば、チャンスを逃した、バスに乗り遅れた、欲しいものが買えなかった。


不運だ、ついてない、悔しいと思うかもしれません。


でも、この算数の問題を覚えていてください。


一日は八万六千四百秒です。

もしあなたが六百秒(十分間)の不運のために、残りの八万五千八百秒を灰色に過ごすとしたら――それに価値はありますか?


十分間の悲しみのために、一日中の気分を台無しにしないでください。

当たらなかった一等賞のために、身の回りの本物の温かさを見逃さないでください。


あなたが与えたものは、あなたのもとに戻ってきます。


あなたが「欠けている」と思うものは、もしかすると宇宙があなたを守っているのかもしれません。

あるいは、あなたの優しさがより良い場所にいるのに値するということなのかもしれません。


次に悲しくなったときは、立ち止まって、深呼吸をしてください。

窓の外の陽の光を見て、木の上の鳥の声を聴いて、頬を撫でるそよ風を感じてください。

そして自分に言い聞かせてください。「ありがとう。私はまだ八万五千八百秒の素敵な時間を持っている」と。


「絶対に手に入れなければ」という思いを手放したとき、あなたは気づくでしょう。あなたはとっくに全てを手に入れていたのだと。


おやすみなさい。


---


(第76話 完)

ここまで読んでくださった皆さま、本当にありがとうございます。

皆さんの一つひとつのご閲覧が、私にとって最大の励ましです。


今回のお話は「偶然は偶然じゃない」というテーマでした。

一見すると不運に見える出来事も、実は私たちを守り、

あるいは新しい幸せへと導いてくれることがあります。


どうか皆さんも、日常の小さな出来事の中にある温かさを見逃さず、

心を軽くして過ごしてください。

幸運は、すでにあなたの身近にあるのです。


これからも温かい応援をよろしくお願いいたします。

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